最近、光也は上になりたがる。
 彼が積極的なのは仁にとっては喜ばしいことだし、いい傾向だとは思うが、どうも彼は関係の逆転を図っているようで、それだけは仁も譲れない。
 光源はランプひとつだけという部屋の中、光也はしげしげと仁を眺めてくる。
 “そこ”に突き刺さる視線に、さすがに決まりが悪くなって足が動いた。
 凝視して楽しいものでもないだろうに。どちらかというと気色の悪い部類に入ると思う。
 たまりかねて、仁は光也に抗議した。
「あんまりじろじろ見るなよ」
「いーだろ別に、オレばっか見られたら不公平だろ」
 僕だってそこまで――――思いかけて、いや、見たかと撤回する。そうだな、見たな。
「つうか男同士なんだし、一緒に風呂とか入ったら普通に目にするものだよな」
「一緒に入ってくれるのか?」
「例えだ例え、言葉の綾っ!」
 若干の期待をこめて尋ねてみれば、そんな期待なんかすっぱり一刀両断される。
 大人げなくも少し腹が立ったので、
「まさか、誰か他の男と入ったことがあるんじゃないだろうな」
「え、あ」
 追求に、修学旅行がどうとか、林間学校がどうのと、よくわからない言葉が返ってきた。
 修学旅行なら泊まりではなかっただろうに。徒歩で汗だくにはなったが、風呂など入らなかった。
 仁は言ったが、光也は何故か「意外だ」という顔をした。
「日光とか京都とかじゃねぇんだな」
「京都まで徒歩? いくらなんでも無謀だろう」
「や、……まあいーや」
 うん、と頷いて、光也はなにやら一人で納得している。それが仁には面白くない。大いに不満だ。
 光也が再び視線を戻す。
「だから、あまり見るな」
「へー、一応お前にもそういう羞恥心ってあるんだ」
 さっきよりも意外な顔をされて、仁の眉間にしわがよった。
 だいたい、一応ってなんだ。人を何だと。
「お前は僕を色情狂かなにかと勘違いしてないか」
「そう思われたくなきゃ、勘違いされるような行動を自粛すれば」
 光也は背を丸め、顔を近づける。
 そしてあろうことか、仁の目の前でそれをぱくりと口に含んだ。
 ……これには、流石の仁もぎょっとした。
「っ!」
 光也はすぐさま口を離し、歪んだ顔で言う。
「うぇ、まずっ」
 おそらくは好奇心からでた行動だったのだろう。
 だが、今の仁を焚きつけるには十分すぎるほどだった。
「――――光也」
「ん、ん。なに?」
 顔を上げた光也の顎を強引に取る。
 彼がいまさら気づいてぎくりと身を強張らせたところでもう遅い。
 寝ていた王様をわざわざ揺り起こしたのは光也だ。
 自粛が必要なのは誰か、一晩かけて教えてやることにする。


何書いてるんだ自分…言うまでもないですがバカすぎる。
光也がアグレッシブすぎて別人です。
(06.03.09)