※02続き
頭で考えた所で仕方が無い。
帰ろう、と立ち上がりかけたところで、下から誰かがのぼってくるのが見えた。
赤がまじる茶の髪。
それは天然パーマで、くるくるとはねていて。
微かに俯き階段をのぼる姿。
覗くことの出来ない瞳は、何色をしている?
思わず立ち上がって、その姿を凝視する。
だって、そんな、そんなはずない。
有り得ない。
あいつは死んだ。何十年も前に。
光也が生まれる前に。
こんなところにいるはずがない。
それなのに。
残りを見定めるように上げた顔と、視線が合って。
その瞳が驚愕に開かれるのを、見て。
確信してしまった。
また、亜伊子のひ孫が来たのではないかというその考えは完全否定された。
あれは。
あいつ、は。
「なん……」
有り得ないだろう、そんなこと、あるはずないだろう。
「なんで……」
映画や漫画、テレビの中でしかみたことのない服を着て。
薄汚れた顔を、していて。
けれど変わらない緑色。
ここに絶対にいないはずの人間。
どうして。
「――仁」