自分は存在理由が欲しかったんだとキラは悟った。
キラは手のひらをじっと見つめ、握り締めた。
キラはただ泣くだけの子供ではいられなかった。
キラには力があった。
だがそれは、決して傷つかないことと同じ意味ではなかった。
いくらキラの持つ力が強くとも、内に受けた傷の痛みは消えなかった。
その痛みを和らげる鎮痛剤になろうと申し出てくれたのがフレイだった。
ヘリオポリスにいたころから憧れていた少女。
キラのストライクは星を背に、彼女の乗るアークエンジェルを守る。
キラは自分では何のために戦うのかというその答えを見出せなかった。
だから、現状大義名分にも近かったが――守るために戦うのだ、という考え方を提示されて、安心に似た感情を抱いた。
自分で考えてもわからなかった答え。
なら今は、与えられたそれを答えと思おう。
やっと手に入れたたったひとつのぬくもりを失うことが、キラには恐ろしかった。
守り守られて寄り添い慰めあう。
キラの腕はフレイを求めた。
この場所へ戻ってくるために戦っている。
たったひとりで戦っている。
どこまでも広い宇宙の中、星のちりばめられた闇に取り囲まれて。
胸を切り裂かれるような痛みは消えない。
けれど忘れていられた、一時でも。
フレイのくれる言葉を、心に滲みこませている間は。
フレイのくれる身体を、胸に受け止めている間は。
ただ追い求め貪る、フレイにとってはつらかったであろうその行為を、それでも彼女は許してくれた。
それで十分だった。
フレイがいてくれれば、それでいい。
アークエンジェルはまた戦いに赴き、キラはそのたびに人を殺すだろう。
ためらえば隙をつかれる。
殺さなければこちらが殺される。
「ねえ、フレイ……僕は、間違ってはいないよね?」
不安を否定するように問う。
それを聞くフレイが、いつも悲しそうな顔をすることを知っていてなお。
進むべき道を示してもらわなければ足が止まってしまう。
僕達はどこへ行くんだろう。
その先が、もう――――見えない。
照らして欲しい。この闇を。
自分が何故泣くのか、その理由すら忘れるほどまぶしく、まぶしく……。



フレイはまるで猫のように身体を丸めてシーツにくるまっている。
「泣かないで……あなたはちっとも、悪くなんてないんだから……」
向かう先がどこでも、君がいてくれてよかった。
キラがそう言うと、フレイは目をつぶった。
この白い身体だけが、キラを導く明かりだ。
消えてしまわないように守ろう。
僕がフレイを守らなければ。




胸のうちの温かく灯った火が、揺らめいた気がした。

 

モドル