気づいてしまった。
そうだ、私はキラが好きなのだ。
……サイはひどい、意地悪だ。
はっきり気づかせて、それでどうしたかったんだろう。
私を拒絶したのは、私への意趣返しだったのだろうか。
それでも、その仕打ちは私が彼に対してしたことに比べればかわいいものだとは思うけど。
一番ひどいのは私。
違う、違わない、違う、違わない。
そう、いまさら気づいても遅かった。
だってキラは、もういないから。
馬鹿みたいだ。
死んでしまった人間に執着してもどうにもならないのに。
それはパパのことでわかっていたはずなのに。
キラの部屋は、キラが最後に出て行ったときのまま、何も変わらずにここにある。
“さいご”に最期という字をあてるのは嫌だった。
もっともっと優しくしてあげればよかった。
もっといろんなことを言ってあげればよかった。
後悔したって、もう二度と出来ない。
それが死ぬということで、生者と死者の間の境界なのだ。
どんなに焦がれても手の届かない場所。
キラの茶色い髪の毛や、軍服の上からではあまりわからないが案外筋肉質な身体、
フレイにいつも負い目を感じているようで一歩引いたところから見ていた瞳、
気弱に笑いかける顔、優しい声。
その全部が、遠いところへ行ってしまった。
フレイの目から涙はこぼれなかった。
かわりに、かすれた声が喉の奥から溢れた。
「……キラ……約束、守りなさいよ……! 言ったじゃない、みんなを、私を守るって……!」
フレイの手に、キラの服を掴んだときの感触がよみがえる。
キラ、私。
「嘘つき……死んじゃったら、終わりじゃない。帰ってからって、言ったのに……どうして帰ってこないのよ!」
いつのまにかこんなに好きになっていた。
馬鹿みたい。本当に、馬鹿みたいだ。
「今度は私が、おかえりって言うから。帰ってきてよ……」
好きになんて、ならなければ良かったんだ。