初めてフレイを抱いたときのことは、正直あまり覚えていない。
わけがわからなくて、自分を保てなくて、そして頑是無い子供のようにただ泣いた。
自分を全部ぶつけた。ぶつけられる相手のことなど露ほども考えずに。
二度目のときは、ああそうだったと思った。
あのときも、こんなふうに温かかったと。
組み敷いたフレイ。
キラは覆いかぶさって、その温かさをもっともっと感じようと、身体の隙間を無くしたくて、でもその方法がよくわからなかった。
下から伸びてきた二本の白い腕。
その腕がキラの頬に触れ、涙をぬぐうような仕草をし、それから頭のてっぺんへと移動し、
茶色い柔らかな髪に指を差しこみ、しばらく遊んでいた。
フレイの目の中に自分が映っているのを見た瞬間、フレイの唇が軽く動いた。
そんな顔しないで。
そしておもむろに、フレイは腕をキラの頭ごと引き寄せた。
裸の胸と胸がぴたりとくっつき、心臓の部分からお互いの血が混じりあっていきそうだった。
こめかみがどくどくと脈打った。
キラの顔は、フレイの顔の横にあった。
正面を向くと白い味気ないシーツ。
右を向けば目をうっすらと開けたフレイ。
フレイはあやすように、回した手でキラの背中をぽんぽんと優しく叩いた。
キラの目にまた少し、じんわりとした液体がにじむ。
キラが気持ちいいほどには、フレイはきっと気持ちよくないだろう。
そういえばあのとき、フレイはどんな顔をしていただろう。
確か、血も出ていなかったか。それはシーツに付着しなかったか。その後は。
自分が出て行った後、フレイはシーツをどうしたのだろう。
フレイの呼吸が、浅く速くなっていた。
自分の体重が重いのか。苦しいのか。
キラはそう思い、のせていた身体をそっとずらした。
離れた部分にどっと空気が流れ込んできて、二人を決定的に別った。
そのことに、キラはまた傷ついた。
フレイがサイを思っているのは知っていた。
自分に同情しているだけなのも、知っていた。
欲しかったのは前者の感情で、与えられたのは後者の感情。
内臓を内側から食い破られるような痛みが、キラをさいなむ。
それでもキラは夢を見る。
いつか同情が愛情に変わって、フレイがきちんとキラを見てくれる、そんな夢だ。
腹の中の異物感は消えない。
魔物を飼いならすために、キラは必死になってフレイを欲した。
頭から爪先まで、呑みこみたくなるほどの衝動。抑えられない。
自分は本当に化け物なのではないだろうか。
おとぎ話の中の化け物は、化け物でなくならない限り、愛するものの心を手にはできないのだ。
キラは死に物狂いで探した。
フレイを繋ぎとめておける鎖を。
守るから、僕が守るから、そばにいて。
キラは闇から伸びる白い手に、また、鎖を巻きつけた。