夕食を食べ終わった後。
二人はすでにベッドの上にいた。
「ごめんなさい」
フレイは先ほどからしきりと、ケーキをダメにしてしまったことを気にしていた。
本当だったらケーキで華々しくお祝いをするはずだったのに。
楽しみにしていたぶんだけ、失敗したときの落胆も大きいのだ。
「せっかくの記念日だったのに……」
「気にしないでよ、フレイ」
キラはフレイを責める気はまったく無かった。
その失敗のおかげで、キラだって結構いいめを見たのだし。
だがフレイはどうしても納得できないらしい。
「ううん、ダメ。だって……キラに喜んで欲しかったの」
「僕なら全然平気だよ？」
その心遣いが何よりうれしい。
それにお風呂場で、十分喜びましたから。とは心の声である。
「でもそれじゃ私の気がすまないもの」
フレイもなかなか頑固なたちで、こうなったらてこでも動かないことをキラは良く知っていた。
いったい次は何を言い出すのだろう。
キラはその一言を固唾を呑んで見守る。
「決めた。私、ひとつだけキラの言うことを聞くわ」
フレイははっきりと、そう声に出した。
「え……」
「何かないの？　なんでもいいから」
ベッドの上で身を乗り出すようにして、フレイはキラにずずいっと迫ってきた。
「なんでも……？」
キラの脳裏に、先ほどの生クリームまみれなフレイの顔が浮かんだ。
男なら一度は夢見る(かもしんない)瞬間。
見たい……。
思わずキラは、その欲望に忠実な台詞をしゃべっていた。
「じゃあ……口で、してもらいたい、かなー、なんて……」
言った後、しまったと思った。
慌てて口を押さえ、どうごまかそうか考えたキラに、フレイの視線がぴたりと据えられた。
「キラ……」
「うわごめん、その、調子に乗りました！　ちょっと言ってみただけです、ほんとすいません！」
キラは手で顔をかばって、怯えつつ後ずさった。
だがしかし、フレイの口から飛び出したのは予想外の一言だった。
「……いいわよ」
「え？」
これは夢か幻聴か、面食らったキラにフレイは畳み掛けるように言った。
「ただし、飲むのは無理。だから出すときはちゃんと言ってね」
「う、うん」
キラはまだ現状を把握できていない。
ついついまた確認をしてしまう。
「……ほんとにいいの？」
「くどいわ」
すでにフレイはキラの腰周りをくつろげはじめている。
素早い。
「やって欲しくないのならやめるけど」
「え、そ、そういうわけじゃ……なくて」
キラの語尾は小さく消えた。
それはもうものすごくやって欲しい、だけどフレイがこうも簡単に了承してくれるとは思ってもいなかったから……。
だから、ちょっと後ろめたいような申し訳ないような気がしてしまうのだ。
フレイはキラの身体の中心に舌先をつけた。
キラ以外との経験の無いフレイは、箱入りのお嬢様育ちだったせいもあり、もちろんたいした知識があるわけでもなく、その動きはとても稚拙なものだったが、
キラにとっては重要なのは技術の有無ではなく、相手がフレイであるかどうかなのだった。
だからフレイが一生懸命に自分に奉仕している姿を見て、キラはますます昂ぶっていく。
フレイはキラを丁寧に舐めた。
キラの分身は硬さと量を増し勃ちあがる。
おもむろにそれを口に含むとフレイはもごもごと動かした。
生暖かい粘膜に包まれたキラは快感に微かな声を漏らす。
フレイはその声をキャッチして目を細めた。
自分が優位に立っているようで、フレイにはちょっと嬉しかったのだ。
そして、つい頑張ってしまったフレイはキラをどんどんと追いつめていった。
キラはフレイのくれる快感に夢中になって我を忘れ始めていた。
普段フレイがここまでしてくれることはあまりなかったので、めったに無い機会に、キラは純粋に楽しみを求めた。
それが――――失敗だった。
うっかりとキラは、フレイに言われたことを忘れて達してしまった。
「！」
気づいたときにはもうどうしようもなく、キラはフレイの口に中に放出してしまっていた。
驚いたフレイが途中でキラから口を離したので、その欲望の残りはあろうことか、フレイの顔にかかった。
「んっ……！」
キラとしては、先ほどの妄想が目の前に！　と喜ばしいシチュエーションではあるのだが。
いかんせん喜んでばかりもいられない。
フレイはキラをきっ、とにらみつけた。
キラの裸の背を、汗の玉が流れ落ちた。
「あの、その……ご」
ごめん、と言おうとした口は塞がれた。
フレイの舌を伝って、キラの口の中に、ついさっき放ったものが流し込まれた。
「！？」
キスが終わったあと、フレイは口の周りを拭って、言った。
「飲みなさい」
キラは黙って従った。
とても飲みにくかったけれど、ごくりと飲み込んだ。
「気持ち悪くない？」
フレイはまだキラをにらんでいる。
確かに、精液を飲むなど気持ちのいい行為とは言い切れない。
キラは頷き、そしてフレイの力説は続く。
「だっておいしくないのよ！」
「うん……」
「キラもそう思ったでしょ？」
「そう……だね」
「だから、ちゃんと教えてっていったじゃない！」
「ご、ごめん……！」
先ほどと二人の立場が逆転している。
キラはベッドから立ち上がってティッシュケースを取りにいき、フレイの顔についた自分の精液を丁寧に拭き取った。
「反省してる。ごめん」
「……よし、許してあげる」
フレイのOKが出たので、キラは彼女の服を脱がしにかかった。
夜はもう少し続きそうだ。

　

モドル