ごめんなさい出来心だったんです、私が悪かったです反省してますだから神様。
この酔っ払いを今すぐ寝かしつけてください。




フレイは困り果てた顔で、自分の膝に甘えてくるキラをどうしたものかと考えていた。
ちょっとイタズラゴコロがはたらいただけなのだ、悪気なんてこれっぽちもなかったのだ。
……アルコール入りのシャンパンを飲ませてみた。ちょっと酔うかな、程度の気持ちで。
それが、一体全体何がどうしてどうなってこんなことになったのか。
腰に巻きついてくる腕をもてあましつつ、フレイは茶色い髪を眺めやった。
完璧な酔っ払いと化したキラは無邪気に笑いながらフレイの身体に擦り寄ってくる。
――――甘え上戸。
さっき無理に引き剥がそうとしたら、目が潤んで今にも涙がこぼれそうだった。
――――泣き上戸。
普通こういうシチュエーションって逆じゃないの?とフレイは理不尽なものを感じていた。
酒を飲んで可愛らしく絡んでいいのは女のほうだと、相場は決まっているだろうに。
「ねえキラ。離してくれないと動けないわ」
「やだ、だめ」
物分りの良くない子どものようになったアルコール漬のキラは、ますますフレイに抱きついてくる。
「キラ、いい子だから。ね?」
フレイのほうも、まるで子どもを諭すような口調になってしまっている。
キラはまったく離す気配がない。
こうしているととても年上だとは思えなかった。
なかなかに母性本能をそそられるのだが、それがしゃくでもある。
キラのくせに。
ちょっと可愛いとか思っちゃったじゃないのよ。むかつくわね。
ぺしりと頭でも叩いてやろうかと思ったが、泣き出されたら困るのでやめておいた。
その代わりに茶色の髪を撫でると、気持ちいいのかおとなしくされるままになっている。
「キラー、私、着替えたいんだけど……」
「んー……?」
ダメだ聞いてない。くすくす笑うだけで、膝の上の男の子はどいてくれなかった。
はっきり邪魔だと言えたらいいのに、けれどそれをすると間違いなくキラは拗ねるだろう。
酔っ払いとはえてしてわがまま勝手なものだから。
仕方なしにフレイは言葉を捜す。遠まわしに、遠まわしに。まったく、なんで私がこんなこと。
「だから服をね、ね? ええっと」
キラは顔を上げて言った。
「脱ぎたいの?」
「そう!」
やっとわかってくれたかとこくこく頷いた。
けれど喜んだのもつかの間、そううまくはいかないもので。
するりと手が服の間から入り込んでくるのにぎょっとした。
「ちょっとキラ!」
「脱ぎたいんでしょ?」
ならば脱がしてあげようとそういうことらしい。実にわかりやすい思考だ。
冗談じゃない。
「やめなさいこら、ダメだってば、ど、どこ触って! キラっ!」


暗転。


実は酔ってないんだよなあ、コーディネイターはアルコールにも強いみたいだ。ばれたら殺されるかな。
なんてベッドの中でキラが考えてることをフレイは知らず、夜は更けていくのだった。




BACK