「私今日疲れてるの」
そう言ってフレイはさっさと背を向けて横になってしまった。
この間は「生理だから」と断られた。
そろそろ終わっただろうと見計らって訊けば冒頭の台詞。
つまりもう一週間は彼女とそういうことをしていない。
欲望膨らむお年頃の男子にはきつい。
なによりその対象が目の前にいるのに手を出せないつらさは筆舌尽くしがたいものがある。
ていうか一週間耐えた自分を誉めたいくらいだというのに。
あと。
単純に寂しい。
「……」
キラはベッドの上を眺めてその横に立ち尽くしていた。
彼女の女の子らしい曲線をそのままに盛り上がった白いシーツ、なんて魅力的なんだろう。
これ以上疲れることはしたくないときっぱり断られてしまった以上、諦めるしかないのだが。
触りたい。触りたい触りたい触りたい触りたい触りたい。
べたべたしたい。ぎゅってしたい。掴んだり揉んだり撫でたり噛んだり舐めたりしたい。
青少年の欲望は果てしなく、頭に浮かぶ大量の願いと反比例してキラの気持ちは落ち込んでいく。
捨てられた子犬のような目でフレイを見ていたその後ろに、効果音を付け加えるなら「きゅーん」だろう。
その目にうっかり流されないようにとフレイは背を向けて寝るようになったのだが、キラは知らなかった。
しばらく眺めていると(葛藤と戦っていると言い換えも可)、すぅすぅと可愛い寝息が聞こえてきた。
もしかして、本当に疲れていたのかもしれない。
……でもやっぱり触りたい。
起きない程度に触るならいいかも、と悪魔の声が囁く。抵抗もせずに忠実に従った。
シーツの上からそっと細心の注意を払って触ってみる。当たり前だが、布の手触りしかわからない。
形を確かめるように手を滑らせてみる。肩からなだらかに下りて、ウエストのくびれ、ヒップにかけての盛り上がりのラインはわかった。
そんなんじゃ満足できない。
フレイが目覚める気配が無いのをいいことに、シーツの中に手をもぐりこませた。
いい感じにあったまってぽかぽかする。柔らかさと体温は感じられるが、でもまだ服が邪魔だ。
自分も横にごそごそともぐりこむ。ぴったり身体をくっつけるとよく知るいいにおいがした。
抱きしめるだけなら許してもらえるかな、とまた悪魔の声が囁く。天使はすでに縛り上げて蹴り倒し済みだ。
片腕で抱き寄せると、みじろぎしたものの目が覚めるまではいかなかったようだ。
まだ平気かも。
服をはだけさせて直接触れると、ううん、と声が聞こえた。
そろそろやばいかなあ。
とは思うのに、指は止まらなかった。
だって一週間ずっと我慢してきて、今日こそ出来ると思っていたのだ。
背中にキスをする。前に回った手はふかふかの胸を楽しんでいた。
行為はどんどん大胆になっていく。
このころになると流石にフレイも目を覚ましてしまった。というか、しないほうがおかしい。
気づけばあられもない格好にさせられている。寝ぼけ眼が瞬時にはっきり覚醒した。
「キラ、何やってるの?」
そしてこのころになるとキラのほうもすっかり開き直っている。
天使は簀巻きになってどこぞの海に浮いているだろう。
「だって……」
「だって何よ」
しょぼん、とキラは顔を俯かせた。
「寂しかったんだ」
この本音は効いた。
だっ、だからって許すと思ってるのっ、とは言うものの、フレイは明らかに押されていた。
キラのこの表情には弱いのだ。
「フレイに……好きな子に触りたいって思うの、そんなにいけないこと?」
「……っ、し、しおらしくしてもムダよムダ!」
陥落まで、あと少し。




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