寒い日だった。
温かい国だったけれど、たまにはこういう日もある。
朝からずっと曇っていた空。一面灰色の。
結局夜になっても、太陽は一度も顔を覗かせなかった。
キラは冷えた指先をこすり合わせた。
早く温まって寝てしまおう。
そうするに限る。
手に息を吹きかけながら、ベッドへと向かった。
そこにある毛布の盛り上がりを見て頬がほころぶ。
きっとあの中は温かいに違いないとそう思った。
フレイはキラより先に毛布にもぐりこんでいた。
彼女も寒がりで――というより寒さに慣れていないのだろう。
なるべく温かいようにと、中で丸くなっているのが毛布の上からもわかる。
ときおりもぞもぞしているので、横になってはいるもののまだ眠ってはいないようだ。
フレイは身体は温かいのに、末端は冷え性らしい。女性には多いとか。
普段なら男であるキラにはわからないが、自分だってこんな日には指先ぐらい冷たくはなる。
キラはフレイの横に身体を滑り込ませた。
フレイがん、とかなんとか言ったのが聞こえた。
思ったとおり布団の中はフレイの体温が移って温かく心地がいい。
いい夢が見れそうだ。
いつものように彼女の身体を抱き寄せようと腕を伸ばし、手が彼女に触れた途端。
フレイの肩がびくりと反応した。
まさか感じたのかとキラの頭の中にいけない欲望が芽生え、もう一度彼女に触れ、加えて足のほうでも探ってみる。
はっきりと彼女は背を震わせた。
そういう方法であったまるのもありだよね、とキラが唇の端をゆるめようとしたところへ、思いがけずきたのは彼女の拒絶の手だった。
ぱしん。
「冷たいじゃないのっキラのバカあっ!!」
勢いよくはねのけられ、驚いたキラが見たものは怒りに燃えるフレイの目。
「せっかく温かくなってきてたのに、氷みたいな手で触らないでよ!」
ああなるほど。感じたわけじゃなくて、手が冷たかったから反応したわけね。
キラはたちまちしょぼんとし、フレイはさっさとキラに背を向けた。
それからキラは、手が温まるまでこすったり息をかけたり毛布に突っ込んだりする羽目になった。
……温かい手なら、触ってもいいよね?




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