なんだか寒くて腕をさする。
「……くしゅん!」
フレイが小さなくしゃみをすると、聞こえたらしいキラがこちらに顔を向けてきた。
「あれ、フレイ風邪?」
「そうかも。ちょっと寒い」
そう言ってフレイはわずかに肩を震わせた。
キラは腕を伸ばして手のひらを彼女の額にあて、温度を確かめて眉をひそめた。
「少し高いような気もする……でもわかりづらい」
今度はその手を自分の額に当ててから首をひねる。
「僕の手が冷たいだけなのかな……フレイ、ちょっといい?」
キラはフレイの頭を自分の側に引き寄せ、額と額を直接触れさせた。
真面目くさった顔をして何をするのだこの男は、とはちらりと思ったが、まあ別に抵抗するほどのことでもないし、照れるほどのことでもないし、フレイは大人しくしてキラの好きなようにさせていた。
キラは集中するためか目を閉じている。
その睫毛の生え際を眺めながらフレイはぼんやりとまだかしら、と考える。
こうして触れていると、キラの額のほうがこころもちひんやりとしているように思えた。
ということは相手には自分の額のほうが熱く感じられているのだろうと思ったとき、キラが目を開けた。
じっと見つめていたフレイは目をそらす間もなく、そのまま互いの視線は絡む。
彼の目のほうがよほど熱っぽい、とフレイが言葉を発するその前に、彼は言った。
「おでこもよくわからないから、舌ではかってもいい……?」
返事を待たずに、わずかに開いた唇の隙間から、するりと舌が入ってくる。
噛んで追い出すことも出来るし、腕をつねり上げればやめてくれるだろうが、フレイは彼を許して受け入れた。
これで伝染ったって自業自得だ。
彼は丈夫なコーディネイターだから、その可能性はだいぶ低いけれども。
相手の熱と自分の熱が混じりあい、呼気と温度とが、ただ熱いとしか思えない。
その息継ぎの間、フレイはキスが終わった後にキラに言うべきセリフを考えている。
私が風邪を引いているのだとしたら、それはあなたのせいなんだから、と。
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