フレイの肌の匂いを嗅ぐと、ボディソープとシャンプーの花の香りと、お湯の温かい香りが感じられた。
こうなることを見越して先にお湯を使ったのかと、フレイが食事の前に入浴を済ませようと言い、それに自分も従ったことを思い出す。
はっ、はっ、と短い呼吸音が耳に触れてくすぐったい。
フレイがもどかしげに腰をくねらせるが、キラは薄く笑って、半ば挿入していた指を入り口付近まで引き戻した。
指先にまとわりついた体液が、彼女の状態を良く表していた。
彼女としては今日初めからその気だったのだろうから、身体が快感を得ることに貪欲になっているのも不思議ではない、とキラは頭の隅10%で冷静に分析した。
勿論残りの90%は、目の前の彼女のあられも無い姿態に興奮しているのだけれど。
「やっ……ん」
舌を覗かせてキラをあおり、自分の望むとおりの快楽を欲しがるフレイに、今日のキラは少し強気だ。
なんたって彼女から堂々と求めてきたのだ。
恋愛は嵌らせた者勝ちだというが、なら今日の主導権を握っているのはキラのほうだろう。
「嫌なの……?」
「ちが……そうじゃ、なくてっ、あ!」
爪で傷をつけないように指先で引っかくように動かすと、彼女の唇が閉じ、のどがごくりと鳴った。
その唇にでものどにでも、どちらでもいいからすぐさまむしゃぶりつきたいのを我慢して、キラはわざともったいぶって指を動かす。
「違うんだ、じゃあ、どう、違うの?」
「っやじゃない、やじゃないけど……っ」
フレイの顔が今にも泣きそうに見えるほど歪んでいるのは、この行為に酔っているからか。
キラは差し込んだ二本の指――人差し指と中指――を体液の粘りを確かめるように使い、それは間違いなくフレイをじりじりと押し上げていく。
先ほどから繊細な指の動きに翻弄され、少女も苦しいのだろう。
けれど、もうちょっとこの状態を観賞していたい、という自分の欲望が勝ってキラは、フレイに指だけしか与えない。
なにせひとたび彼女と身体を繋げたときには、乱れる彼女をゆっくり堪能する余裕などありはしないので。
「嫌じゃないけど?」
「あっ、い、いじわるしないでっ……」
回らない舌でそれでも何とか言い切ると、今度こそフレイは涙をこぼし始めた。
本気で泣くとは思っていなかったので、流石にキラもぎょっとして、水の線を引きそうになった彼女の目の下に慌てて口付ける。
「ご、ごめん!」
ちょっと意地悪しすぎた、となんとか彼女を落ち着かせようとすると、
「ばかぁ……」
「うん、バカだった。反省してる」
「欲しいって、言ったじゃない。くれる、って、言ったじゃない……」
(私があなたを)欲しいって言ったじゃない。(あなたは私に)くれるって言ったじゃない。
脳内で抜けた単語を補完して、キラは顔を赤くした。ああもう! 可愛すぎるんだよ!
顔だけじゃなく下のほうも正直に反応してしまい、そんな自分に苦笑する。
勃ちあがった先のぬめりをなすりつけるように、数度フレイの入り口に触れさせる。
自分の固さを伴った肉の一部が、相手のとても柔らかな肉を探る。
ぴくんと反応したフレイはまた焦らされると思ったのか、涙の乾ききらない目でキラを見つめた。
そんな心配が杞憂である証に、キラは己に片手を添えると、ゆっくり挿入を開始した。
彼女の何かに耐えるようにぎゅ、とつぶられた目と、寄せられた美しい形の眉を見ながら、キラはペニスを胎内に埋没させていく。
ぬるりと濡れたフレイの中が、受け入れる悦びで満ち溢れた。
「ふっ……う!」
フレイは自分の足をキラの腰に絡ませ、もっとと引き寄せた。
「重く、ない? 平気……?」
一応サイドについた腕で自分の体重をそこにかけて支えるようにしてはいるが、彼女の上に覆いかぶさるような姿勢である以上、少なからず負担になっているだろう。
そう思ってのキラの発言だったが、フレイは熱い息とともに小さく否定の言葉を吐き出した。
舌で唇を湿らせる仕草を見せた彼女を手伝って、キラは尖らせた舌で彼女の上唇をなぞっていく。
腰を落としながら、舌同士が触れた瞬間、それを自分の口内に引きずり込んだ。
フレイの鼻から軽く息が漏れたのを感じたが、彼女は特に抵抗もせず自分から生温かい舌を伸ばし、キラが吸うのを手助けした。
「ん……むぅ……んんっ……」
キスの最中も結合部はじりじりと擦れ合い、互いの性感を煽っていく。苦しい。
フレイは時々浮かせた足先をきゅ、と丸めたりしていたが、キラの目には届かなかった。
もう二人とも夢中で、はしたなく水音の立つのも気にしない。
唾液にまみれた唇を離し、キラは腰を動かしてフレイの最奥へと辿り着こうとした。
もっと気持ち良くなりたい。
いきなり責め立てる様な急な動きに、フレイの喉から声が上がる。
「あっ、あ、キッ……、ひぁ!」
男の余裕などかなぐり捨てたキラは、さらに自分を感じさせようとフレイを引き寄せた。
息が荒くなり、額が滲んだ汗で湿った。
多少乱暴とも思えるほど揺さぶり、自らも突くと、直接脳に叩き込まれるような快感がキラを襲う。
フレイも切なげな喘ぎをひっきりなしに漏らしているところを見ると、同じように感じているに違いない。
「っううん、だ、め……ぇぇ……っ! そ、んなっ」
わずかに腰を浮かせ、キラを手伝っていることにもおそらく気づいていないだろうが。
忙しく閉じたり開いたりする目、上下に動くその長い睫毛の下の目は、キラの切羽詰った顔を映している。
「くっ……」
キラは呻いて、それを聞き逃さなかったフレイは揺れる腕を伸ばしてキラの胸の突起を悪戯のようにかり、と引っ掻いた。
「!」
びくりと反応してしまい、たまらず促された射精感に押し流された。
「――――……っ」
まぶたの裏がちかちかする。まるで星が瞬いているみたいだ、とキラは目を閉じたままそっと笑った。




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お誕生日創作のその後のお話でした。