男って本当に最低だ、とフレイは思った。パパ以外、と付け足す。
『男なんてね、ヤったら終わりなのよ。みんな狼なんだから、食い荒らした後は満腹になってすぐ寝ちゃう。こっちの都合なんかどうでもよくなるの』
友達の言ったことは本当だった。
フレイはうんざりしながら、隣で惰眠を貪る少年の背中を見た。
恋愛映画のように優しい言葉をかけるわけでもなく、事後の甘い雰囲気を楽しむ時間もなく、キラはいっそ清清しいほどすこーんと眠りに落ちてしまった。
そりゃあ男はすっきりするでしょうよ、でも私なんかまだ入ってる気がしてじんじんして気持ち悪くて不快なのに!
不公平だわ、と身を起こし、フレイはベッドから立ち上がった。
立ち上がりついでに、キラの肩にかかっていた毛布を剥いでやった。
――――シャワー浴びてこよう。
シャワールームの鏡に映った自分の胸の辺りに、うっすらと噛み痕を見つけた。
自慢の胸なのに。降り注ぐシャワーの飛沫の中、フレイは何度もそこを擦った。
戻ってくると、キラは幸せそうな顔でさっき剥いだはずの毛布を抱きしめて寝ていた。
まるで子どものように、シャツがまくれて腹が見えている。
ほどよく筋肉がついていて意外と逞しく、その逞しさをフレイはつい先ほど身をもって知ったばかりだ。
ああもう。
フレイは再び毛布を引っぺがそうとし、ふとその手を止めて、すやすや眠るキラの腹に唇を寄せた。
強く吸い付くと、キラが何かを呟いたが、明瞭でないので何と言ったかまではわからない。
「ぅぅん」
起きるかしらと思ったのに起きないキラに、鈍いのか、それともよっぽど疲れているのかとフレイはもう一箇所吸い付いてやる。
腹に二つの間抜けな痕を残してやり、フレイは今度こそ毛布を奪いにかかった。
「……ん……フレイ……?」
目が合った。
なんで今起きるのよタイミング読めないわねこの馬鹿、とフレイは心の中でキラを罵ったが、口に出したのは優しい大嘘だった。
「キラったら、毛布蹴っちゃうんだもの。風邪引くといけないから、かけてあげようと思って」
「そっか、ありがとう」
男って最低でほんと馬鹿だ。
せいぜい後でお腹のキスマークに気づいて困るといいわ、とほくそ笑みながら、フレイはキラの隣に潜り込んだ。
狼さんが赤ずきんちゃんに気をつけてね、ってことです……。
(06.10.09)
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