圧迫感。
物理的な重さよりも、精神的なそれのほうが大きくて、フレイは息苦しくてたまらなかった。
このまま窒息死しても嫌だし、重いし、早くどいてくれないかしら――――頭の片隅で、そんな風に冷めた自分が、今上に圧し掛かっている少年と同じようにフレイを見下ろしている気がした。
心は諦めきっていて、そのくせ身体は勝手に声を上げ、体液を滴らせる。
「ん、ふぅ」
電気の消された部屋の中、キラの姿はぼんやりとぼやけて見える。
人間ではなくて、何か得体の知れない大きな化け物の影が、フレイを貪っている。
そんな妄想が浮かぶ。
キラの舌とともに、恐怖感が足を這い登ってくる。
『それ』が心臓に到達したら、きっとフレイは死んでしまう。
この舌の持ち主は本当にキラだろうか? 本物のキラだろうか? 人間だろうか?
ああ、でも、本当のキラだとしても、コーディネイターはそれだけでフレイにとっては化け物だ。
快楽のためだけではなく、フレイはぶるりと震えた。
ここはフレイのよく知るキラの部屋だったし、よく知るキラのベッドだったし、目の前の相手はキラだった。
そのはずなのに、まったく知らない場所に思えた。
フレイは全てを失った気分でいたし、実際ほとんどそうだった。
何もかもを、キラに奪われ、また自ら捧げたのだ。
そうしてフレイは一人ぼっちだった。心を許せる相手が誰もいなかった。
肌は交わせても、心はすれ違うばかりだった。嘘で塗り固めた表面で触れることはあったが。
キラはフレイのことなど思いやってくれなかったし、フレイのことを思うふりをしていつも自分のことを考えていた。
今だってそうだ。
涙に濡れた紫の瞳。この子はこうして、自分を哀れんで泣いているのだ。
なんてかわいそうなモンスター。
「一緒にいようね、フレイ。僕が守るから、僕のそばにいて」
ええそうね、キラ、あなたがコーディネイターを殺し続ける限り、私はあなたのそばにいて、それを見ているわ。
「僕は君に拒絶されたら、本当に一人になっちゃうよ」
一人なのは、孤独なのはフレイのほうだった。
キラがいなくなったら――――……怖いことは考えたくなかった。
フレイはただ微笑み、涙の流れる頬にキスをした。



大いなるマンネリ感
(06.10.18)

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