その人は、ステラの声が好きだって言ったの。
「もっと話して、君のこと。なんでもいいから」
わたしはその人に笑ってもらえることがなぜかとても嬉しくて、喜んでもらいたいからいっしょうけんめい色んなことを話した。
「君の声、好きだな」
そう言ってその人は笑う。
「僕の名前を……呼んでくれないか」
そしてわたしはそのとおりにする。
でも、その人は、ステラが名前を呼ぶとき、いっつも目をつぶってステラの声を聞いてるの。どうして、かな。
何回も何回も、目を開けてくれますようにってお祈りしながら名前、呼ぶのに。
わたしは、その隠れてる目が、赤いような気がする。
不思議だね、だってその人の目は全然違う色なのに。
ねえ、ステラの声が好き?
……ステラのことは好き?
「僕が君を守るよ。守るから……今度こそ」
いつだったか前にも、誰かがステラを守るって言ってくれたような気がする。
だとしたら、それはきっとあなたなんだと思う。思うのに。
頭の中に、私と同じ赤い目をした誰かが浮かんで消えた。
わたしたちはふたりとも、たぶん、互いに相手を求めているのに、本当は違う誰かを見ている。
本物だったらいいのに。
あなたが本当に好きなのがわたしで、わたしが本当に好きなのがあなただったらいいのに。
わたしにはその名前を繰り返し呼ぶことしかできない。
「キラ……キラ、キラ」
「絶対に、守る」
手を伸ばして抱きしめあう。まるですがりつくみたいに。
閉じた目じりから、涙がこぼれた。



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