背中を掠める草の感触が酷く不快で鳥肌が立った。剥き出しの肌にぞわぞわと直接触れる、生い茂るたくさんの細い茎と葉、青臭くたちこめる草いきれ、土の匂い。
 一糸まとわぬ姿で清正は、地面の上に無様に転がされていた。
 強い武士になるため、秀吉の役に立てるだけの強さを得ようと、山野を稽古場に定め、剣をふるっていたところ、賊に襲われるとはなんと情けないのだろう。近頃何かと兄貴風を吹かせる三成に先んじたくて、同行を断って一人で出たのが仇になった。
 大人への過程にある少年特有のまだ出来上がっていない未成熟な身体には、羽化したばかりの透き通った蝶のような、触れてみたくなる危うさがある。
 巷では男色など珍しいことではなく、清正もまた、男たちの格好の性の対象となった。
 世は戦国、人心は荒れ、卑しい野犬のようなこういった輩も蔓延る。
 彼らは花を手折るというより踏み躙ると言ったほうが相応しい荒々しさで清正を捕らえた。
 一人の屈強な男がその両腕を頭の上で抑えつけ、また別の一人が足首を掴み、あるいは太ももの裏を押し上げて大きく足を開かせる。
 口は塞がれてはいなかったが、その理由が「声が聞こえたほうが楽しめるから」というのでは喜べようはずもなかった。
「や、やめろっ! ……はなせ、っ!」
 なんとか身体を捻ろうとする清正を見下ろす男たちの目には、清正を怯えさせるほどの異様な輝きがあった。
 ギラギラと獣じみた雄の目だ。理性を失い、本能に身を任せた野蛮な目だ。
 およそ人ではない――――いや違う、むしろ人だからこそ、このような悪意に満ちた行いができるのだ。
 腕を振り上げることも、足を蹴りあげることもかなわず、清正は組み敷かれる屈辱に歯噛みした。
 鍛えたしなやかな肢体に、男たちが舌なめずる勢いで触れてくる。
 もし賊が一人であったならば、清正だって遅れを取ったりはしなかっただろう。叩きのめして終わりだ。
 だが五人に囲まれてしまえば多勢に無勢だった。しかも捕まるまで下手に抵抗したせいで、かえって男たちの加虐心を煽ってしまったのはまずかった。
 血に酔った男たちの目は獲物を甚振る愉悦に興奮しきっている。非道な行為も躊躇いなくやってのけるに違いない。
「ああ面倒くせえな、縛っちまえよ」
「そうだな、そうするか」
「な、っ……ふ、ふざけるな! やめろ、馬鹿、やめろっ! やめろ!」
 なんとか拘束を跳ねのけようと暴れたが、上から抑え込まれてしまっては容易ではなかった。
 男の一人が持っていた縄で清正の手首を乱暴に縛りあげる。粗い繊維がちくちくと肌を刺し、外そうとする腕に食いこんで清正を傷つけた。これはちょっとやそっとでは解けない。
 清正の自由を奪うと、男たちは唇を歪めて笑い、あるいは下卑た笑い声をあげた。
「よーしよし、すぐに具合よくしてやっからな」
 屈辱にうち震える清正の腰を抱え上げ、男たちは清正の秘部をじっくりと観察する。
「おいおい、随分慎ましいな。使ったことあるのかねぇ」
「なに、すぐに大口開けて咥えこむようになるさ」
 品のない笑い声が草むらに響く。余りの羞恥に頬が燃え、目には涙が滲んだ。
 下半身を高く掲げられたせいで、眼前に己の萎えた性器が迫る。肌の表面をまさぐる手は不快でしかなく、嫌悪感だけが募っていく。
「うっ……」
 吐き気がした。男の舌ははあはあとだらしのない犬を思わせ、吹きかけられる息は生臭い。
「ひ、」
 無遠慮に晒された窄まりに油が塗りたくられ、清正は息をのんだ。こめかみが痛み、信じられない思いに目が回る。
 嘘だろ、呟く間もなく無骨な指が小さな穴に捩じ込まれた瞬間、清正の双眸からはぼろりと涙がこぼれた。
 狭い肉の壁の間をぬめった指が進んでいく。その気色悪さに身体中の血が冷えていくようだった。
「う、うぁ……っ、く、あ……」
 入っている。節くれだった汚ならしい男の指が、自分の身の内にある。
 それは味わったことのない絶望的な恐怖を清正にもたらした。
 指は清正の中を図々しくかき混ぜ、擦られた肉がぬち、と音を立てる。
 無理矢理身体を開かれるおぞましさに寒さのせいではない鳥肌が立ちそうだった。
「おい、どうだ?」
「窮屈だが、おかげでよく締まる。この調子なら長く楽しめるだろうよ」
 くくく、と男たちが笑いあう。耐えがたい恥辱に、清正は強く唇を噛んだ。
 目尻を伝い落ちた涙が耳の横を流れていくのが冷たくて、肩が震える。
 何度も指を抜き差しされるうちに、閉じていたはずの蕾が次第にほころび、開いてくる。
「っく、う……あっ、あ」
 耳を汚すような濡れた音が呻き声に混じり、男たちを大いに喜ばせた。
「そら、段々柔らかくなってきたろう」
「ああうまそうな色だ、早くぶち込みてえ」
「まだもう少し待てって。焦る必要はねえ、時間はたっぷりあるんだ」
 下衆が。
 唾棄すべき思いで睨みあげる清正の眼光はいくら鋭く尖らせたところで男たちを切り裂くことはできず、無慈悲にもさらなる指が捩じ込まれた。
「ぐ……!」
 悲鳴を噛み殺し、清正は耐えた。みっちりと拡げられた後孔が痛みを訴えてくる。
 中で指同士を擦りあわせるように動かされたかと思うと、次には揃えた指の腹で内壁を擦られる。その次にはまた曲げられた指をばらばらに動かされる。
 ぞわぞわと背筋を駆けのぼる感覚は、清正の知らぬものだった。
「あ、……いやだ……いやだっ」
「なあ、そろそろいいんじゃねえか」
 男たちは頷きあい、好色な目配せをして指を引き抜いた。
 太股を掴み直され、代わってぐ、と押し当てられた生々しい熱に、清正は愕然と目を見開く。
「う……あ、――――……っ!」





古キョンでもこういうの書いたよね…好きなんですすみません