こんなのは嫌だ、と清正は身を捩って啜り泣いた。懸命に耐えていた心もすでに折れ、涙は目を覆う布をぐっしょりと湿らせている。
「嫌? だがお前が言ったんだろう、こうして欲しいと」
 宗茂の声音はあくまでも、とても優しい。だがそこに含まれる怒りは清正を震えさせるほど苛烈なものだった。目隠しのせいでその表情が見えないことは幸いだったのかもしれない。どんな顔をしているのか、考えるだけで恐ろしい。
 清正は首を横に振った。
 拘束され、身体の自由を奪われた上で徹底的に嬲られること。確かにそれは清正自身が望んだことであったが。
「っ、あ」
「お前が傷つけられたがっているのは知っている。だが、俺はお前に優しくしたいのだ。愛するお前の望みはできるだけかなえてやりたいと思うが、やはり俺は俺のやりたいようにする」
 ゆったりと緩慢な動きで肌を撫でられる。行為が始まったときからずっとこうなのだ。
 着物を剥がれ縛りあげられたときは、これで酷くしてもらえると安堵すらしていた清正の期待は儚くも裏切られた。
 宗茂は清正を縄で縛り、目を塞いで視界を奪ってまでおきながら、決して清正の望んだ責め苦を与えてはくれなかったのである。
 まるで愛されているかのような扱いは清正の欲するところではない。罪深い己には痛みこそが相応しい。清正は罰せられたかった。断罪されたかった。きつく縛られ、嬲られ、いっそ壊れても構わないくらいに手酷く犯されたかった。自分にはそれが似合いだ。
 だが宗茂の手は清正の官能を引き出すばかりで、傷などつける気配もなく、どこまでも優しくて優しくて優しかった。
 そっと肌に触れ、清正が声を上げたり身体を震わせる場所を、一つ一つ暴く。そうして見つけた場所を指と舌でもって征服する。
 じりじりと高められ、息は上がり、緩やかに快楽に繋がる刺激を与えられ続ける。
 宗茂の優しさを執拗なまでに刻み込まれた身体は清正の意思を離れて溶けていった。
 ほどける気配のない縄、外れる気配のない目隠し、望まぬ愛撫、ある意味では拷問のようではあったが、こんな手のひらの温度などいらないのだ。
「あ、……っ……あ……」
 あえかな吐息を洩らし、清正はまた目隠しを濡らした。
「ひっ、そこ、やめ……っ!」
 幾度も柔らかく揉みしだかれた胸は、先端が疼いてたまらず、宗茂の指が戯れのようにそこを摘むたびに背筋がぞくぞくと震える。
 視界が遮られているから、宗茂の指が次にどこに触れるのかがわからない。
 腰の線を辿って清正に嬌声を上げさせたかと思うと、次は内股にするりと入りこんでいたりする。
 そして用いられるのは指だけではなく、鎖骨を吸われたすぐ後に耳を食まれたり、かと思えば乳首を口内に含まれている。
 ねとりと舐め上げられて頭の中が甘く染まった。
 陽根から垂れ落ちる体液で股がすっかり濡れそぼってしまっているのがわかる。間断なく与えられる快感に清正は身悶えた。
「っあ、ああ、むねしげ……っ」
「……可哀想に、清正」
 声はごく近くで響いた。
「お前は、俺に愛されていろ」