きっかけは某テレビ、ではなく、いつものようにハルヒの唐突な思いつきの一言だった。
「AVを撮るわよ!」
 いつか言い出すんじゃないかと思ってはいたよ。こんな日が来ることを危惧していたともさ。
 だが本当に言い出すとは思わないじゃないか。
 流石のハルヒもその辺の良心とか良識とか常識とかは持ち合わせていると信じていたいじゃないか。
 いや、ある意味では良心的なのかもしれない。AVを撮影するにあたって、本物の女の子を使わずに、ダメージの少なそうな男を対象に選ぶとは。
「涼宮さんはAVを撮りたいとは思えど、朝比奈さんや長門さんを被写体にすることには流石にためらいがあったのでしょう」
 だから俺か。
「ええ」
 古泉はなにもかもわかっていますといった癇に障る笑みを浮かべた。
「それに、もし朝比奈さんを被写体にすると言えば、あなたは必ず彼女をかばうでしょうからね。涼宮さんとしては、そんなシーンは見たくないのですよ」
 朝比奈さんや長門を守るためなら己が身を犠牲に晒すのもやぶさかではない、二人のあられもない姿を不特定多数の目に晒すよりは俺が出たほうがマシだと本気で思う、思うが、いくらなんでもこれはねえだろ!
 なんで俺が女の身体に変えられて、あまつさえ上半身はブラをはずされ、下半身はブルマを脱がされなければならんのだ!
「ほらキョンいつまでも恥ずかしがってないで! んもうまどろっこしいわねえっ、古泉くん、もっとがばっと下ろしちゃって! 一気に!」
 メガホンを手にしたハルヒ超監督が声を飛ばす。
「ほら、監督がああ仰せですよ」
 俺の後ろに膝をついている古泉が、小声で囁いた。
 こいつはさっきからずっと、ハルヒから死角になっているのをいいことに好き放題俺の身体に悪戯をしてくれやがっている。
 今だってブルマを下ろすのにかこつけて尻の割れ目をつつ、となぞっていった。
「……っ、こいずみ、てめ、覚えてろ……! ひ、」
「ええ、しっかり覚えていますよ、あなたの肌、ほくろの位置まで全部ね」
 ぬる、とケツに生温かな感触があった。柔らかな尻たぶをくすぐるように這うその何かに、思わず跳ね上がる肩。
「ひっ!」
 ててててめえ今ななな、なめ、舐め……!
 内心で慌てふためく俺をよそに、調子づいた古泉は、舐めるだけでは飽き足らず肉に吸い付いてくる。つうかなんでハルヒにばれないんだ、これも超能力か!?
「あら、キョン、いい顔するじゃないの! そうそう、そういう感じよ!」
 どんな顔だ。そしてどんな感じだ。自分じゃさっぱりわからん。
 ひとつわかるのは、ハルヒのお眼鏡にかなった俺の表情とやらが、古泉のおかげ、じゃない、せいだってことだった。