熱い。
 身体の奥深い部分が熱で溶けて、じわじわと全身に及ぶ。ぶつりと途切れていた意識が明滅を始め、やがて細い糸となって繋がり、俺は覚醒する。
「……っ」
 ぶわ、と身体中から汗が噴き出たような気がした。この感覚が大嫌いだ。
 ――――中に楔を穿たれ、拡げられている圧迫感。
 一気に感覚が鋭敏になる。
 なのに、目を開けても視界は開けなかった。


 昨日の昼、俺はあいつと喧嘩をした。酷い意地悪をされたのだ。今日も怒りは収まっていなかったから、あいつの充電を頑なに拒んだ。
 あいつのほうも、俺が怒っているのを解った上で、それだけじゃない、その結果どうなるのかも解った上で、ただ俺の充電が減っていくのを傍観していた。
 そうして意地を張り続けて、俺はとうとう限界を迎え、気を失い……気を失っている間に充電を開始されていたのだ。
 今までにも何度かそういうことはあったが、今回は少しいつもと違った。
 目隠しをされている、と気付く。取り払おうとした腕もきっちり縛られていた。
 ずる、と中に入れられていた熱源が動く。
「っあ、……な、」
 目の上を布で覆われているらしく、何も見えない。ただ触れている肌の感触だけがとてもリアルだ。
 結合部から電気が流れ込んできて、俺の身体に満ちていく。
「……な、っだこれ、とれよ……っ」
 縛られた腕を解こうともがいたが緩む気配はなく、相手からの答えもない。
 組み敷かれて大きく開いた足の間に男の身体があって、太ももを掴む指。見えないが伝わってくる体温、鼓動、揺さぶるリズム、息づかい。
 知っているあいつのはずなのに、無言で貫かれて揺さぶられていると、不安が心を食い始める。
 どうして何も喋らないんだ。
 顔が見えない、声も聞こえない、どうしてこんなことをする? 今俺を抱いているこいつは、本当にあの――――
「あ! んっ、く」
 中を擦られて声が出てしまい、慌てて唇を噛みしめる。
 ああ、そういえばいつもはしつこいくらいにされるキスも今日はまだで、俺の不安はどんどんと膨らんで大きくなった。こいつはあいつなのか、それとも、
「や、あ」
 肌を這う手のひらが怖い。怖い。怖い。
「いや、いやだ……」
 お前は誰なんだ。不安は恐怖に形を変え、俺は目を覆う布が湿るのを感じた。ついに決壊した心が喉から声をほとばしらせる。
「こいずみぃっ……!」
 呼んだのは、どちらの名前だったのか。