小さな穴が、きゅう、と人差し指を食い締める。
 なるべく力を抜くようにしてもひくひくと締め付けてしまうそこにゆっくり第一関節までを埋めて一息ついた。
 やべえ、ほんとに入ってるよ。俺の指、が、俺の身体の中、に。すげえな。
 なにか大事なものを失くしてしまった気がするが、精神衛生のために深く考えるのはやめておこう。
 熱い肉に包まれている指と、何か細くて硬い棒にこじ開けられている内壁とが同時に脳に信号を送ってきて、どっちを感じればいいのかわからん。つうか、どっちも?
「……っ、ん」
 蝸牛の歩みで指を進めていく。指の股がケツにぶつかって止まり、……あーあついにやっちまった、これで根元までずっぷり入っちまった。
 指からは中の温度や感触、締め付けのきつさが伝わってくるし、腸の粘膜からは指の太さや硬さや位置が伝わってくる。
 中でも特筆すべきはそれまで味わったことのなかった指からの感覚のほうで、生々しいそれにじたばた悶えたくなるが、指が体内に入っているこの状況でそんなことをしてみろ、別の意味で悶えること必至だ。
 おそるおそる指を動かすと、窮屈で隙間がほとんどなく、すぐに指の腹に粘膜が触れた。
「は、ぁ」
 そうか俺の中ってこんな感じなのか。
 古泉と関係を持たなければおそらく一生知ることはなかったであろう、自分の体内の手触り。
 熱くて、粘膜がつるりとしていて、入り口のところがぎゅうっときつくて、それに比べると奥のほうは比較的柔らかいが狭い。
 古泉はいつも俺のここに触れて、自分を埋め込んでいるのだ、ここで気持ちよくなっているのだと思うと、たまらなくぞくぞくした。
 くそ、こんな恥ずかしいことを考えているようでは、あいつのことを変態と責められん。
 あいつがよく「あなたのなか……すごく、熱いです……っ」とか、「きつい、です、もうちょっと力抜いて……?」だとか「……っせま、あんまり、締めないでください……」とかな、最中にいらん感想を漏らすのは、正直単なる言葉責めだと思ってたんだが、あいつとしては本当に思ったことを言っただけだったのかもな。
 だからといってそれがわかったところで言葉責めとしての威力が増すだけで、余計に悪いじゃねえか。
 しかも今のであいつの甘ったるい声が耳元によみがえって明らかに中が指を締め付けたし。ああもう、俺、手遅れだな。
 想像の声だけで欲情して、あいつの指の感触を思い出しながら後ろを弄ってる。
「く……ぁ」
 はぁ、と息を吐きながらぐるりと粘膜の表面を撫でてみる。太ももがぴくんと引きつって指が予期せぬところにぶつかり、思わず悲鳴みたいな声が漏れてしまった。
「ひぁっ!」
 誰もいないとはいえ、わが妹の神出鬼没ぶりは侮れないのでいつ帰ってくるか知れず、あまり声を出すのはよろしくない。
 俺はシーツに噛み付いて、鼻で息をした。薄い布はたちまち唾液を吸って濡れていく。
「ん……んぐ、っ」
 前から先走りが垂れるのがわかる。今度は左手の指にそれをなすりつけて濡らし、すでに右手の指を一本咥えこんでいた穴に沿わせて何度もぬめりを足した。
 指の形に広がっている穴の縁をぐるりと撫でると、当たり前だが本当に指が突き刺さっていてやっぱり悶えたい。
「ふーっ、う、ぅ」
 奥歯をぎゅっと噛み締め、それまで周囲をなぞるだけだった指を穴に引っ掛けて、両手の人差し指を互いに反対の方向に引っ張った。
 ぱく、と口をあけたそこに空気が触れ、背筋を駆け上がる震えに頬をシーツに擦りつけると、目からこぼれた雫が布に吸い込まれていった。





得意技・書き逃げ