かくて世界は元通り


 α世界とβ世界は融合し、ようやく事件は終焉を迎えた。
 そして日曜日、詳しい事情の説明にと長門と古泉が連れだって我が家にやってきて(というか俺が呼んだのだが)、俺が未来に飛ばされた後の現在軸で起こったことの話をしてくれた。
 遊ぼうよと途中で乱入した妹が長門とシャミを引っ張って階下に行ってしまったところで、さて、古泉と二人きりだ。
 ……もしかして長門、俺たちのこと知って……………………深く考えないでおこう。
 部屋に来たときから当たり前のように俺のベッドに腰かけている古泉に、α世界の記憶が蘇る。
 この辺りの記憶の整合性は矛盾がないように融合されており、俺の部屋で三度目のセックスをしたαの記憶と部室でしたβの記憶は別々に存在し、しかし同時には思い浮かばないように整理されているようだ。
「……デートかと言わんばかりの格好で来やがって」
「おや。あなたの部屋であなたと二人きりなんですから、デートのようなものでしょう?」
 なにやら古泉が調子に乗っているが、こちらはなまじあのときの記憶があるものだから強く出られん。
 この部屋でどんなことをしたか、あのときと同じように古泉がベッドに座っている状況で、連想するなというほうが難しい。
「今日は何もしねえぞ。長門もいるんだし」
「わかってますよ。でも、キスくらいは許していただけると嬉しいのですが」
 顔が近い。と、文句を言うことのできる口は塞がれてしまった。
 ――――まあ俺も、古泉の横に座った時点で、何も言えるはずがないのだった。