きょうはとくべつなひなんだ。とくべつだからとくべつなことをうんとたくさんしてやろうとおもってきのうからちゃんとけいかくをたてていた。まずあさはこいずみよりさきにおきておみそしるをつくってからくちにちゅうしておこしてやる。なんたってとくべつだからな。それからいっしょにごはんをたべておれはこいずみのぶんもさらをかたづけてやる。こいずみはすわってゆっくりしてていいぞ。それでしごとにいくじかんになったらおみおくりをしていってらっしゃいのちゅうをつけてやってもいい。こんどもくちだ。とくべつだからおおばんぶるまいしてもいいんだ。こいずみがしごとにいってるあいだにおれはそうじをしてせんたくをしてそれからないしょでけーきをかいにいこう。こいずみにはひとりでおそとにいっちゃだめですよっていわれてるがとくべつなりゆうがあるからしかたない。けーきをかえたらつぎはゆうはんのしたくだ。こいずみのすきなかれーをつくっておくからこいずみはかえってきたらびっくりするぞ。もちろんおかえりのちゅうもまたする。それではっぴーばーすでーをうたっていっしょにけーきをたべるんだ。こいずみは「ありがとうございますすごく嬉しいです」って言ってにこにこする。かんぺきだ。
おれははやくこいずみをよろこばせたくてゆめのなかでもすごくすごくたのしみにしていた。それなのにめをあけたらもうべっどにこいずみはいなかった。どうしようこれじゃちゅうできないじゃないか。しかもだいどころからはおみそしるのだしのにおいがしてごはんしたくもこいずみにさきをこされた。こんなはずじゃなかったのに。きょうははやめにおきたとおもったのに。りびんぐにいったらこいずみはごはんをならべていた。
「あ、おはようございます。僕、今日会議があるので早めに出ますね。帰りはいつも通りだと思うのですが」
かいぎ。そのせいでこいずみはいつもよりはやくおきたのか。なんできょうなんだ。でだしからおもいきりつまづいたおれはがっかりしていたのでごはんをたべるあいだもしっぽやみみがぺたんてしてこまった。するとこいずみが「どうしたんですか? 元気ないですけど……具合でも悪いんですか?」てしんぱいするのでまたこまった。こいずみがおれをしんぱいしてかたづけもぜんぶじぶんでやってしまっておれはますますこまるしかない。ぜんぜんうまくいかない。でもまだきょうははじまったばかりだ。
「では、行ってきますね」
「おう いってこい」
こいずみがおれをなでなでしていったのでおれもちゅうしてやろうとおもってたのにこいずみはおれのほっぺにちゅうしてすぐたちあがってしまった。これじゃくちにとどかない。どあがしまるおとがしておれのみみはすっかりぺたんこになってしまった。きもちをきりかえてそうじとせんたくをがんばろうとおもってきちんとそうじをしてせんたくきもちゃんとごうんごうんした。よしけーきをかいにいくぞ。おれはためてたおこづかいをもってそとにでかけた。けーきやまでてくてくあるく。ちょっととおいがこいずみのためだとおもうとへっちゃらだ。けーきやについておれはまるいばーすでーけーきをかおうとおもってけーすのなかをみた。にせんえんてかいてあった。どうしようせんえんしかもってきてない。かえない。どうしよう。おみせのひとがこっちをみてる。こまってこまっておれはよんひゃくえんのしょーとけーきをふたつかった。たんじょうびなんだっていったらおみせのひとがろうそくをおまけでいっぽんつけてくれたけどおれのしっぽはしなしなになってたれた。だってこんなさんかくのけーきじゃこいずみをちゃんとおいわいできない。かりかりをかったりしないでもっとためておけばよかった。とぼとぼうちにかえってせめてごはんをちゃんとつくろうとおもってかれーをつくってさらだもすーぷもつくってならべてけーきもろうそくをたててこいずみをまった。でもこいずみはなかなかかえってこない。かえりはいつもどおりだっていったくせにかえってこない。おれはひるまがんばっていっぱいあるいたからかねむくなってきた。このままじゃおかえりのちゅうもできないしはっぴーばーすでーもうたえないとおもったらかなしくなってきてなみだがでてきた。ぐすぐす。ひっくひっく。
「ただいま帰りました。遅くなってすみませ、ん……?」
こいずみがかえってきたおとがしたのにおれはないていたせいででむかえにいけなかった。りびんぐにはいってきたこいずみはおれをみてぎょっとしてもってたはなたばをゆかにほうりなげるようにおとした。
「ど、どうしっ……え、あ、これ……!」
こいずみはてーぶるのうえをみてはっとしてずんずんおおまたでおれのところにくるとおれをぎゅうっとだきしめた。
「すみません、僕の誕生日をお祝いしようとしてくれてたんですね……! 僕、すっかり忘れていて……今日職場で花束をもらって初めて思い出したんですよ。本当にすみません」
「うー……」
こいずみがおれのほおになんどもちゅうをする。くすぐったい。
「ありがとうございます。すごく嬉しいです」
おれはなきながらおかえりのちゅうをくちにしてやった。
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