●絵チャにお邪魔したときの足コキ
 男の足の裏がゆるゆると俺の性器を踏みつけるように擦る。
「くっ…あ、」
 ときおりつま先にぐっと力が込められ、自分の腹に押し付けられた性器が濡れているのを自覚せざるを得なかった。
 ぐにぐにと強弱をつけて踏まれ、背筋が反り返る。
 亀頭を乱暴に刺激され、溢れた先走りが幹を伝うのが分かった。
「あ……あ、ひ、あっ」
 ぐちゅりと汚らしい音が響く。
 男の足が裏筋を擦り上げて、確かに感じてしまう自分が嫌でたまらない。
「あ、あ、あ、あ、あ……!」
 踏みにじるような足の動きに目の前が真っ白になった。
 信じられん。
 ――――こんなことをされて、こんなことでいっちまうなんて。
 呆然としていると、別の男に足首を掴まれる。
 何をされるかと身構えれば、敏感な神経の通った足の裏をべろりと舐められた。
 その感触があまりにもおぞましくて、一気に鳥肌が立つような気がした。
「ひっ!」
 反射的に足を引っ込めようとしても、がっちりと掴まれていてかなわなかった。
 男はしばらくぺちゃぺちゃと唾液をまぶすように俺の足の指を舐めしゃぶったり、土踏まずや踵に舌を這わせていたかと思うと、おもむろにぐいと引き寄せた。
 導かれたのは男の股間――――そそりたつ性器の上。
 生温かい感触が足の裏に触れ、唾液ではないなにかでぬめる。
 生理的な気色の悪さに吐き気が込み上げる。
 男は俺の足の裏や指を己の股間に擦り付けるようにして動かし、獣じみた息を吐いた。
 自分の足を、見知らぬ男の自慰まがいの行為に使われている。
■足コキってこういうのでいいのでしょうか…


●以前書いてみたものの膨らませなかった射手座機械触手
 忠実な機械が人間に牙を向く。
 長いコードを触手のようにのたうたせる様は、意思のある生き物のようだった。
 何本ものコードがしゅるしゅると素早く俺に襲い掛かり、身体を雁字搦めにし、四肢を拘束された俺はたちまち身動きがとれなくなった。
 恐ろしい力でぎゅうぎゅうと巻きついてくる。その気になれば絞め殺すのくらい容易いに違いない。
 これらの動作は決して誤作動ではなく、機械にはあらかじめ、そのように設定されているのだ。
 お仕置きの名の下、その実態はほとんど拷問用のプログラム。
 軍人らしくない反抗的な人間には教育が必要ということなのだろう。反吐が出るね。
 両腕を縛められ抵抗の術を奪われる。後に残った道は一方的な蹂躙、陵辱だ。
「やっ……やめろ! 嫌だッ」
 いくら嫌がったって機械は止まらない。軍服の隙間から入り込み、肌を撫で、前をはだけ、ズボンを下ろそうとする。
■触手って難しいですね 知ってたけど!


●ねずみキョン
「ちゅう」
 勘弁しろ、猫の次はねずみか。
 自分の口から放たれた奇妙な音を聞いてまず俺が思ったのはそれだった。
 しかし過去に似たような経験をしていたおかげで(あの経験を『おかげ』などと思えるようになると誰が想像しえただろう)それほど動揺もせず、長門にメールを打つ指にも迷いはない。
 ねずみ語しか言えなくなった俺の口は固く閉ざされており、古泉の不謹慎な手にも声を上げさせられまいと耐えている。
 だってなあ、言いたかねえよ、ちゅうなんて。間抜けにもほどがあるだろ。
 有名な黒いねずみもとっとこ走るハムスターも人間の言語を駆使しているというのに、生粋の人間の俺が言葉を奪われるとは、俺は前世でバベルの塔の建設に携わってでもいたのだろうか。
 一部で神と定義されているハルヒの逆鱗に触れた覚えもないんだが、そうだハルヒ、あいつが何を思いついた結果こうなっているのかという質問文を長門へのメールに付け加えなければならない。
 だいたいねずみだからちゅうって安易過ぎると思うぞ。
「さしずめうさぎだったらぴょんといったところでしょうか」
 うさぎはぴょんとは鳴かん。
 さて、前回と違うのはすでに古泉にばれているという点である。
 天を仰ぎたいところだが生憎俺は現在仰向けになっており、そして視界一杯に広がるのは空でも天井でもなく古泉のニヤケ面だ。
 なぜそんなことになっているのかは、週末、泊まり、古泉の部屋、この三つのキーワードから推察してくれ。
「ちゅ、」
 やめろ、触るな、って。こんなアホらしい声出したくねえんだよ!
「ですが、そこまで嫌がられると、かえって出させてみたくなるというか」
 俺に覆いかぶさりながら、古泉は片手で乳首を嬲りだす。
 昨夜さんざん弄られたそこはすぐにそのときのことを思い出したらしく、じんじんと疼きはじめた。やばい、抑えられない。
「ちゅう、ちゅー……っ」
 俺は夏のお嬢さんか。
 なんだろうねこれは、猫語ならまだしも、こんな喘ぎ声、萌えるどころか笑えるだけだろ。
 そう思って古泉を見上げると、笑うには笑っていたのだが、笑いの種類がまるで違った。
「なんだかキスをねだられているような気がします」
 次にちゅ、と響いたのは俺の声か、それとも。
■京アニ公式のねずみキョンがありえないくらい可愛かったので


●電波な古キョン
 耳障りな唸り声を上げて、ホームに電車が入ってきた。バスが猫の形をしているなら、電車は虎だと思う。
 大地に倒れたシマウマの肉に牙を突き立て、引き裂いて噛み千切る姿を俺は想像する。
 そんな風に脳を夢の中に浸していないと、俺の意識は電車を待つ間に物騒なほうへ行ってしまうのだった。
 線路の上をカラスアゲハがふらふらと飛んでいる。電車と蝶の追いかけっこ、
 線路に降り注ぐ日差しは強く、俺はただでさえくらくらしていた頭に更なるダメージを与える太陽を呪った。
 蝶は逃げる。電車が迫る。俺の視線は蝶を追う。俺は蝶と目を共有する。
 ああ、轢かれちまう。ずたずたに踏みにじろうと追ってくる虎の息遣いを背中に感じる。すぐ後ろだ。荒く湿った息が耳にかかる。
 レールの軋む音が、俺の記憶を呼び起こす。古泉。ぎしりと鳴るベッドの上、男の熱い息、取れかかったシャツのボタン。
 圧し掛かってくる重みや、縫いとめられた手、素肌に触れるシーツの感触、蹂躙されるというのはこういうことかと
 思い知った昨日、痛む身体を引きずって集合場所に向かっている、なんて滑稽なんだろうな。狂ったように笑える喜劇だ。
 ばらばらにちぎれた羽を掴むと、きっと指先にリン粉が付くだろう。俺は蝶の最期を思った。
 けれど黒い小さい虫はあっけなく上昇し、電車のかいなから逃れて飛んでいった。
 ――――でも俺に羽はない。俺は蝶でも古泉でもない。俺は飛べない。だからきっと、あの蝶のように逃げられはしないのだ。

 電車に揺られて帰った田舎。幼い夏、虫取り網を持って草の中を駆け回った。
 俺はそんな小さいころから年下受けがよく、親戚の子どもたちに昆虫博士と尊敬の眼差しを向けられていた。
 サンダルをつっかけただけの、靴下も履いていない足でぼうぼうに茂った草を踏み分け、バッタや時には蛙が飛び跳ねるのを楽しんだ。
 伸び放題の草むらには多くの虫たちがひそみ、網を振り回せば面白いくらいに飛び込んでくる。
 運悪く網目に頭を突っ込んだ蝶をはずしてやろうとすると、首は糸を引いてもげるのだった。後に残った足や羽だけが数度もがいて。
 あのころどうしてあんなにも、世界に対して無頓着でいられたのかわからない。根拠のない万能感は、幼さゆえの愚か。
 高校生になった今の俺は、ピンで縫いとめられた蝶の側に回っている。
 頭と身体をまるで別物のようにされ、もがいたところで腕の中から抜け出せず、シーツを引っかく。
「少年の日の思い出、ですか」
 うなじに押し当てられていた唇が呟いた。
■少年の日の思い出→外国だと蝶も蛾も扱いが一緒らしいですね