私は主君に大事な言伝を頼まれ、単身自国への帰路を急いでいた。
だがその途中、私は自国と敵対する隣国の兵士に捕らわれてしまった。
奴等は私が主君から言伝を頼まれた事を事前に感知し、私を待ち伏せていたのだ。
 私は抵抗虚しく薄汚い牢屋に連れ込まれ、手枷で自由を奪われた。
「お前が知っている事全てを吐いてくれりゃ、無事返してやる」
 顎鬚を蓄えた巨漢が、私の前に立ち塞がる。
「私は、主君を裏切る事は決してしない」
 私は男を睨むと、硬く口を閉ざした。
 すると男は不気味な笑みを顔に浮かべ、私に言い放った。
「俺も金がかかってるんでな。お前には、是が非でも吐いてもらうぜ」
 男の言葉の意味を、私は瞬時に理解した。
だが、どんな事があっても口を割ってはならない。
こんな所で音を上げるわけにはいかないのだ。
主君のためなら、どんな拷問にも堪えて見せよう。
 私は強い意志と共に、そう心に誓った。
「早く吐いちまった方が身の為だぜ」
 男はそう前置きを据えると、私の身体を鞭打った。
その容赦無い仕打ちに、私の体躯は酷い傷を負う。
だが、それでも私は口を噤んだまま堪えた。
 男は一頻り私を鞭打つと、私を残して何処かに消えた。
 それから数時間が経ち、男は私に水と小量の食料を持って来た。
私はそれらを拒んだが、男は無理矢理私の口に水を押し流す。
「お前は、拷問じゃ口を割らねぇ。別のやり方でイカせてもらうぜ」
 男はそう言い、不気味な笑みを顔に浮かべた。

 それから、どれくらい時が過ぎたのだろう。
男は私を放置したまま、どこかへ行ってしまった。
時々別の男が私に無理矢理水を飲ませ、去って行く。
そんな状況が幾度か続いた。
 鞭打たれた身体の痛みが、徐々に薄くなる。
だが暫くして、私は別の苦痛に顔を歪める事となった。
男達から無理矢理水を飲まされたせいか、尿意を催したのだ。
「――っく」
 私は必死でそれに堪えたが、私の意思とは裏腹に、尿意は強くなるばかりだ。
私の身体は次第に汗ばみ、激しい痛みが下腹部を襲う。
今すぐにでも、排尿したい心境だ。
だが、そんな醜態を晒すなど私には出来ない。
私が醜態を晒せば、自国の名誉に傷が付く。
それだけは避けねばならない。
 私は身体から血の気が引くのを感じながら、それでも必死に襲い来る尿意と戦った。
「おい、そろそろ小便がしたくならねぇか?」
 その時、巨漢が勢い良く部屋のドアを開けて入って来た。
私は苦痛を隠し、平然を装おうと努めた。
だが下腹部への痛み、圧迫感は限界を来たしており、最早私に偽る余裕もない。
そんな私を見て、男は満足げに微笑んだ。
「どうだ、苦しいだろ?」
 男は私の顎に手を添えると、私の顔を覗き込む。
しかし、私は負けじと男を睨み返す。
すると男は卑下た顔を浮かべ、私に言い放った。
「大の大人が失禁させられるのは屈辱だろう。そんな屈辱をお前が味わえば、お前の国が、君主が侮辱されたも同然だ」
「――貴様……」
 私は怒りと憎しみに満ちた目で、男を睨んだ。
私に対する侮辱は、自国への侮辱。
そしてそれは、愛すべき主君を侮辱する事になる。
「だからよ、早く吐いちまいな。楽になれるぜ?」
 男は子供を諭すような声で、私の頭部を撫で付けた。
「お前のような下賎の言う事など……!!」
 私は最後の力を振り絞り、男に向かって叫んだ。
すると下賎と言われた事に腹を立てたのか、男の顔は明かに変貌した。
「貴様……下手に出てりゃ、いい気になりやがって」
 男は低い声を唸り出すと、隠し持っていたナイフで私の服を切り刻んだ。
「この、無礼者が……!」
 途端に露わになる私の体躯に、私は屈辱を覚えた。
だが男は浅ましい顔で私の体躯を舐め回すように見ると、薄汚い手を私に近付けた。
そして刻まれた衣服の間に手を入れ、私のペニスを握る。
「っう……!」
 尿意が限界に達していた私は、その苦痛に思わず声を漏らした。
男はその様子を見、嘲笑うかのように私のペニスを弄び始める。
「――っ、やめ……」
 尿道を太い指で刺激され、私は迫り来るものを必死で堪えた。
しかし既に限界を超えていたせいか、抵抗虚しくペニスの先端から微量の尿が漏れる。
そしてそれは、まるで雪崩のように勢いを増し、体外へと流れ出す。
そうなってしまえば、私には出し切ってしまう他無かった。
「っあああぁぁぁ……!!!」
 私は体躯に走る開放感とは裏腹に、狂おしいほど沸き立つ屈辱感を感じ、声を荒げ叫んだ。
その屈辱は、私が愛する主君を侮辱されたと言う怒りから沸き立つものだった。
それは、予想以上に私の心を乱す武器となった。
私は完全に敗北したのだ。

 すっかり灰になった私は、その後数日間男の道具として性的屈辱を受け続けた。
 私が自国に帰還したのは、それから一月後の事だった――



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