帰り道

「ここから一時間かぁ」
 最寄の駅に着いた俺は、溜息をついた。
何を思うわけでもなく、呆然と遠くに見える山岳を見つめる。
「そろそろ歩きださないと、一時間以上掛かるって」
 傍らで同じく呆然としていた毅が笑いながら言って、先に歩き出した。
「ああ、そうだな」
 続いて俺も歩き出す。
 俺、坂波伸吾と隣で歩く粕谷毅は幼馴染み。
二人とも幼稚園から中学まで地元の学校に通い、今は地元から一番近い高校に電車通学している。
一番近いと言っても、片道一時間半はかかった。
「あー。せめて駅の近くに引越ししてぇ」
 人通りどころか店舗まで疎らになり始めた道を歩きながら呟く。
「親が一人暮らしを許してくれたらなぁ」
 毎日一時間半かけて通学するのは、俺達の気力と体力を嫌でも奪う。
何より、遅刻しないように通常よりも早く起きなきゃならないのがツライ。
せめて駅前に引っ越せたら。
家から駅までの一時間を、ゆっくり寝て過ごせるのに。
「卒業したら、早く地元離れようぜ。もっと便利なところに二人で住むんだ」
 俺がそう言って振り向くと、少し後ろを歩いていた毅が照れくさそうに笑う。
その笑顔につられて、俺も微笑んだ。
 大人ばかりの小さな農村で同い年の俺達が仲良くなるのに、そう時間は掛からなかった。
世間知らずで井の中の蛙状態な俺達だけど、互いに惹かれあった事は後悔していない。
俺が毎日の大変な通学を続けられるのも、毅が居るからだと思う。
二人で他愛無い話をしていると、身体の疲れが少しだけ癒える気がした。

 駅から三十分近く歩くと、林に囲まれた坂道に入る。
この坂道が結構キツイ。
俺はなるべく身体の疲れを紛らわせたくて、ゲームの進行状況だとか昨日見たテレビ番組の話をしながら歩いた。
「そろそろ制服、脱ぐか」
 程よく身体が火照ってきたところで、俺は毅にそう切り出した。
俺達はサッカー部で、帰りは毎日ユニフォームの上に制服を着て帰っている。
坂道を登る時は、いつも途中で制服を脱いでいた。
半袖短パンのユニフォームになると、火照った身体が風に触れて気持ちがいい。
そうして、俺達は再び坂道を歩き出した。
 ふと、少しだけ後ろを歩いていた毅の歩調が遅くなっている事に気付く。
「毅、大丈夫か?」
 俺が振り向いて止まると、毅は小さく頷いた。
毅は普段より息を弾ませていて、額には汗が伝っている。
その様子を見る限り、平気なようには見えない。
毅は頬を赤く染め、どこか視線を泳がせていた。
「おい、本当に平気か?」
 心配になって再び尋ねる。
毅は止まって挙動不審な様子で辺りを見回し、俺の質問には答えなかった。
心なしか足が震えている気がする。
「おい、毅」
 もう一度名前を呼ぶと、毅は驚いたように身を震わせた。
そして弾む息で
「ごめ……。俺……っ」
 そう言ったかと思うと、両手で下腹部を押さえる。
「トイレか?」
 その様子を見て悟った俺が尋ねると、毅は小さく頷いた。
かなり限界らしく、顔色が青ざめているのが見て解る。
「その辺にしちゃえよ」
 そう言って俺が毅に近付く。
「も、動いたら出そう」
 絞り出すような声で毅がそう言った、次の瞬間……。
「あっ」
 毅が情けない声を出した。
ブルッと身体が震え、嫌な予感がした俺は視線を下ろす。
すると、ユニフォームの股間部分に淡い色の染みが広がるのが見えた。
「やば……っ」
 吐息を吐くように力なく毅が呟く。
だけど染みを広げた尿は留まる事を知らず、毅の足を伝って流れる。
「あっ……ふあ」
 毅は小さく悶えると、隣で立ち尽くしていた俺の肩を掴んだ。
身体に力が上手く入らないらしく、やや内股になった足は小刻みに震えていた。
足を伝った尿は、毅の履いていたライン入りのハイソックスまで染めていく。
それを見ていた俺は、初めて流れる尿が綺麗だと思った。


「――っと、大丈夫か。毅」
 相当我慢していたのか、尿を出し切った毅は一人では立てないほど無気力になっていた。
「ごめ……っ」
 そう小さく呟いた毅を抱え、ゆっくりとした足取りで脇道に入る。
まだ震えが止まらない毅を大木に捕まらせ、俺は毅の短パンを下ろした。
「し、伸吾っ」
 突然の事に、毅は慌てて声を上げた。
「このまま家に帰る気か? 着替えるの手伝ってやるから大人しくしてろ」
 言いながら短パンとパンツを一緒に下ろす。
毅の日に焼けていない尻が顔を出した。
「っう」
 膝まで一気に短パンを下ろすと、毅が小さく呻く。
曝された毅のチンコは、恥ずかしさからか、少しだけ勃起していた。
「伸吾、もう後は自分で……」
 そう言った毅の声が、妙に艶かしく俺の耳に届く。
「遠慮するなよ。ほら、足上げろ。靴も靴下も脱げ」
 少しだけ興奮してしまった自分を誤魔化すように、やや強い口調で言う。
毅は観念したように押し黙り、自分から靴と靴下を脱ぎ始めた。
突き出された毅の尻を俺は見慣れているはずなのに、何故か妙に初々しい。
 俺は自分の鞄からタオルを取り出すと、毅の濡れた太ももにあてがった。
「っふ」
 突然の事に驚いた様子で毅が身を震わせる。
俺は構わず、タオルで毅の身体を拭く。
毅は抵抗するでもなく、じっとしていた。
「今、凄く恥ずかしい……」
 大木に額を押し当て、毅が呟く。
そんな毅が、何故か急に可愛く思えた。
「慰めてやろうか?」
 俺は立ち上がり、毅の耳元で囁くように言った。
ビクッとして顔を上げ振り向いた毅の目は、少しだけ潤んでいた。
少しの間無言で見詰め合って、俺は、ゆっくり毅にキスをした。

 唇を離し、そのまま首筋に伝わせる。
タオルを持った手で足の間から毅の股間を握った。
「んっ。伸吾っ」
 思っていたより良い反応が毅から返って来る。
俺はそのままタオル越しに毅のチンコを摩った。
「お漏らししたのが、そんなに恥ずかしかったのか? チンコ勃ってるぞ」
 俺が意地悪く毅の耳元で囁く。
毅は恥ずかしそうに頬を染めていた。
大木に添えられていた毅の左手が、ゆっくり俺の左手に添えられる。
それは、毅が俺に身を許す無言の合図。
俺は愛しさで胸が苦しくなって、もう一度毅の唇を奪った。
「ちょっ、待て……待てってば」
 そのまま毅を草むらに押し倒して、拭いたばかりのチンコにしゃぶり付く。
最初は戸惑っていた毅も、次第に甘い吐息を漏らし始めた。
チンコを口から放すと、チンコの先から透明な液体が滴り落ちる。
それが俺の興奮と毅に対する愛しさを昂らせ、胸をいっぱいにした。
「おもらしした恥ずかしさなんて忘れるくらい、気持ち良い事してやる」
 俺は自分の短パンを下着ごと一気に下ろし、いきり立ったチンコを毅の尻に押し当てた。
「……っん」
 濡れたチンコの先端が毅の中に押し入ると、毅は身悶え、甘い吐息を洩らす。
俺は毅にしがみ付き、夢中で腰を振った。
静寂とした自然の中で、俺達は夢中になって互いを求め合った。
木々に囲まれた草むらは俺達以外に誰も存在していない、俺達だけの世界。
二人の漏らす吐息と、身体が擦れ合う音だけが響いていた。
 俺達は内側から溢れ出すものを解放し、互いに抱き締め合った。

「すっかり日が落ちちまったな」
 制服に着替え直し草むらから這い出た俺は、紫色に染まる空を仰いだ。
少し遅れて、毅も空を仰ぐ。
坂道から眺める夕焼け空を毅と見るのは、これで何度目だろう。
「俺、始めて田舎に住んでて良かったって思った」
 歩き出し呟いた毅の赤らんだ顔が愛しくて、俺は声を出さずに笑った。
自然と繋がれた手が離れる事無く、俺達は互いへの愛情を噛み締めながら帰路に着いた。



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