術師
兄貴が俺の体を引き寄せた。
そして予めローションで馴らしておいた俺のアナルを指で開くと、硬くなった兄貴のペニスを押し当てる。
ローションで濡れたアナルは、意外とすんなり兄貴の進入を許す。
だけど初めての事で緊張した俺は、無意識の内に体に力を込めていた。
それを自分の体で感じた兄貴は、俺の耳に優しく囁く。
「春、力抜いて」
その吐息に肩を竦め、不意に全身の力が奪われる。
「――っう」
その途端、遮る物を無くした兄貴のペニスが全て俺の中に収まった。
兄貴の体温を一層近くに感じる。
俺の中に、兄貴が入っているのが解かる。
それはとても恥かしくて、同時に心地良い。

「自分で動いて、気持ち良い所を探してみて」
兄貴が耳元で囁く。
俺は言われた通り、ゆっくりと自分の体を動かした。
「んっ……ふっ」
体を動かす度、内側に兄貴が接触して快楽をもたらす。
少しずつポイントを探ると、強い快感を得られる場所を見つけた。
「ここ……。ここが、一番気持ちいい」
俺がそう教えると、兄貴は俺の尻に手を添えた。
そして耳の後ろに優しくキスをする。
「いくよ」
少しだけトーンを落とした兄貴の声が耳に届いたかと思うと、兄貴はゆっくりと俺の尻を揺り動かした。
「――うっ、く」
その途端、奥にある気持ち良い場所を兄貴のペニスが突き、俺の体を刺激した。
「ううっ、くぅっ」
その気持ち良さが徐々に強くなり、俺は歯を噛み締める。
すると兄貴は、俺の耳の裏を唇で優しくなぞった。
そして俺に、優しく声をかけた。
「春、声を出してもいいんだよ」
耳に掛かった兄貴の吐息で、敏感になった俺の体が悶えた。
「っあ、やだ……っ」
堪え切れなくなった俺は、口を開けて喘ぐ。
その声は、兄貴の動きを一層激しくした。
「嫌なの? やめようか?」
体を揺り動かしながら、耳元で兄貴が囁く。
「っやだ。やめちゃ、嫌だ……っ」
それが単なる意地悪だと解かっていながら、俺は夢中で叫んでいた。
「可愛いな、春は」
兄貴のトーンを落とした低い声が、俺の耳に届く。
それと同時に、俺の中を突き動かす速度が上がった。
「やぁっ、あっ、あぁっ」
奥の壁に兄貴が食い込む度、激しい快感に襲われ頭が真っ白になる。
俺は弓なりに体を反らせ、下半身に力を入れた。
「――あぁっ、兄貴ッ!」
快楽が頂点に登り詰めた俺は、夢中で叫んだ。
そして訪れる絶頂。
その瞬間、俺の目に映ったのは、降り注ぐ自分の精液だった。
俺は兄貴と一つになったまま、ぐったりと兄貴に身を任せる。
「気持ち良かった?」
兄貴は俺の髪を優しく撫で、耳元で囁いた。
俺が感じていたのを知っているくせに。
やっぱり兄貴は意地悪だ。
だけど、その声がリアルな感情を引き戻させ、俺は顔が熱くなるのを感じた。
兄貴の声、兄貴の体温、兄貴の吐息――。
その全てを、俺は今、敏感に感じている。
それが愛しさへと姿を変え、俺の胸を締め付けた。
「兄貴の、気持ち良かったよ」
俺は恥じらいながら、呟いた。
兄貴は俺の耳にキスをしてそれに応えると、安堵した優しい声で囁いた。
「――良かった」
その声は、俺の中に温かな安らぎとして残る。
そして暫くの間俺は、兄貴と一つになったまま、その余韻に浸っていた。
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