1話

 俺は圧し掛かる重力を、腹部に感じて目を覚ました。
身体が重い。
その上手足は、金縛りにあったように動かない。
その異変に、俺は重たい目蓋を無理矢理開いた。
「――っふ、藤崎……!?」
 目を開けて最初に飛び込んで来たのは、後輩の藤崎だった。
藤崎は俺の腹部に跨り、勃起した自分のチンポを扱いている。
「う、ん……。冴島先輩、おはようございまぁす。んんっ」
 藤崎はチンポを扱いて感じながら、悠長に挨拶をした。
「お前……何で俺の上でマスかいてんだよ!?」
 しゃがれた声で俺が尋ねると、藤崎はピンク色の顔でニコリと笑った。
「俺、先輩の事好きなんです。だから、犯そうと思って」
「――はぁ!?」
 俺は藤崎の言動が理解できず、余計に混乱した。
だが藤崎は息を荒げ、夢中でチンポを扱いている。
「ん、あっ……先輩、出ちゃう」
 そして事もあろうに藤崎は俺の腹の上で絶頂に達し、俺の顔にザーメンをぶちまけた。
「っテメ……!!」
 俺はいい加減腹が立ち、藤崎に殴りかかろうとした。
だが、手も足も動かない。
「無駄ですよ、先輩。先輩が寝ている間に、手足を拘束させてもらいましたから」
 藤崎は何気無い口調で言うと、俺の腹部からケツを上げた。
俺は藤崎が言う通り、手も足も拘束されていた。
「エッチ用の道具って、色々あるんですねぇ。俺、先輩とエッチしたくて色々調べたんですよ。男同士のエッチって、どうすればいいか解からなかったし。でも運良く知り合いに詳しい人がいて、色々教えてくれたんです。凄く助かったなぁ。これで先輩と気持ちいいエッチが出来るって思ったら、凄く嬉しくなっちゃって」
 俺の見えない所でゴソゴソと何かを準備しながら、藤崎はお得意のマシンガントークを俺に浴びせる。
その間俺は、拘束具を外そうと必死でもがいていた。
こんな頭のイカれた奴に、犯されて堪るものか。
 だが俺の心情とは裏腹に、藤崎は何食わぬ顔で俺に近付く。
そしてベッドに上がると、俺の足を強引に持ち上げた。
「っおい、コラ! 藤崎、テメェ何を……!!」
 藤崎は俺の手足を固定していた拘束具を、それぞれ繋げた。
そうして、右手は右足と、左手は左足と繋がれる。
両足を拘束具により開かれ陰部が丸見え状態になった俺は、屈辱感で頭に血が上った。
「藤崎……こんな事をして、タダで済むと思ってんのか!?」
 だが藤崎は、相変わらずマイペースに事を進めている。
そしてエロ本の広告に載っているような道具を手にすると、再びベッドの上に乗って来た。
「先輩、男とエッチするのは初めてですよね?」
「ったり前だ! って言うか、放しやがれ藤崎!!」
 リアルな道具を目の当たりにし、俺は一層向きになった。
あんなモノで、ケツを掘られるなんてご免だ。
しかし、俺の要望が藤崎に聞き入れられるわけでもなく、藤崎は何か呟き俺を無視した。
そして無理矢理開かれた俺の両足の間から俺を見ると、ニコリと笑って言った。
「それじゃあ、先輩。最初はケツの穴を慣らす事から始めましょう!」
「――っ何!?」
 言い知れぬ不安を感じた俺は、首を曲げて奴を見た。
だが藤崎は自分の手に透明の液体を付けると、俺のケツの穴に指を突っ込んだ。

「っお!」
 ケツの穴に指が食い込み、俺は変な感覚に襲われた。
藤崎の指が、俺の中を無造作に探る。
その感触が気持ち悪く、俺は身体を捩じらせた。
「ローションでグチュグチュですよ、先輩のここ」
 藤崎の手に付けた液体が、指の滑りを良くしている。
グチョグチョと生々しい音を立てて、指が俺の中を滑った。
「っく……!」
 その感触が変に気持ち良くなり始める。
だがそれを藤崎に悟られては思う壺だと思い、俺は歯を噛み締めた。
「うん、そろそろいいかな」
 藤崎は何かを見計らうと、入れた時と同じように強引に指を穴から引き抜いた。
「最初は痛いかもしれませんけど……」
 そんな前置きをし、藤崎は別の物を俺の穴に押し入れた。
「っうお!」
 その時ケツに走った痛みに、俺は短く叫ぶ。
だが藤崎は窄む内壁を抉じ開けるように、強引にモノを押し込んだ。
「これ、アナルスティックって言うんですよ。ボコボコしてて、気持ち良くないですか?」
 穴を突き進ませながら、藤崎が俺に声を掛ける。
「ふざけんな! 男に犯されて、気持ち良いわけがないだろうが!」
 俺は逆上して叫んだ。
すると藤崎は、少し不満そうに顔を歪ませる。
「えー。それじゃ、困りますよ。僕は先輩と気持ち良いエッチがしたいんですからぁ」
 そして穴に差したアナルスティックを、今度は引き始めた。
「――くうっ」
 突然訪れた快感に、俺は思わず唸り声を上げる。
それを見た藤崎は何かに納得し、アナルスティックを穴の中で前後に動かした。
その度、塗りたくられたローションがヌプヌプ音を立てる。
「っふ、くっ……ううっ」
 それは同時に、俺の内壁を刺激した。
「ああ、早く先輩に俺のチンポぶち込みたいなぁ」
 藤崎は惚けながら、アナルスティックの動きを強めた。
「っおー! やめろ、やめろぉっ!!」
 穴の奥から感じる快楽で、頭が変になる。
俺は無意識の内に腹筋に力を入れ、不覚にも感じてしまった快楽に堪えていた。
しかし、スティックが穴の奥の壁を何度も激しく刺激する。
そしてとうとう、俺は堪え切れずに絶頂に達した。


「ううっ!!」
 最高の快楽が体中を包んだ瞬間、俺は己のチンポから飛び出したザーメンを、肉体に浴びた。

 ――その後……。
 心身共に疲労した俺の隣に寝転んだ藤崎は、相変わらず無邪気な顔で俺を見る。
「先輩が感じた所、前立腺って言うんです。普段は精液の一部を作る所なんだけど、刺激すると気持ちいいんですよね。あ、因みに僕は先輩と気持ち良いエッチをする為に、事前に前立腺を刺激して確かめてみたんですよ。やっぱり自分で確かめてみないと、いきなり先輩に突っ込むのは心配ですからね。それと前立腺って」
「あー、解かった解かった。もういい、解かったから……」
 耳元で無理矢理聞かされるマシンガントークに呆れた俺は、力なく項垂れた。
「えっ!? 解かったって、俺とエッチしてくれるって事ですか!?」
 藤崎は上半身を起こし、俺に顔を近付けた。
「……ああ。お前には負けた」
 溜息をつき、観念したように俺が言うと、藤崎は跳び上がって喜んだ。
「良かったー! やっぱエッチって、お互い同意の上で楽しむ物だと思うんですよねー。でも先輩が嫌だって言い続けてたら、僕は無理矢理先輩を犯してただろうし。でも、それは嫌だなぁって思ってて……――」
「――はぁ……」
 最早ツッコミを入れる気力を無くしていた俺は、早くも前言撤回したい気分だった。



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