篤志編1


 篤志は夏休みを利用して、祖父母の家にやって来た。
家は森林の奥に建っており、夏だという事を忘れそうになるくらい涼しい。

 だが、篤志は一つ気になる事があった。
 夕食の食材にと、祖母と共に山菜を採りに行った時の事。
祖母は古びたロープが張ってある方を指差し、こう言った。
「ここから先は、入ってはいけないよ」
 篤志はその時、いつか中に入ってやろうと思った。
駄目だと言われれば、それに背きたくなるものだ。

 そして数日後、遂に決行の時が来た。
祖父も祖母も、今日は朝から出掛けていて不在だった。
篤志はこの時を待っていたと言わんばかりに、森の奥へと足を踏み入れた。
 生い茂った木々が直射日光を遮っている為か、森の中は昼間だと言うのに薄暗かった。
篤志以外に人は居らず、シンと静まり返っていた。
セミの鳴き声も、心なしか遠くから聞こえる。
 一面、緑色の世界。
 篤志は臆する事無く、森の奥へと進んだ。

 どれくらい歩いただろうか。
周りが同じような木々に囲まれているせいで、篤志は自分が今どの辺りにいるのかを見失っていた。
だが、篤志は歩みを止めない。
ロープが張られ、立ち入り禁止となっているからには何かある筈だ。
篤志はそれが何なのかを突き止めるまでは、振り返らないと決めていた。


 暫く歩いていると、目の前が急に開けた。
その場所は木漏れ日が差し、神秘的な空間を作り出していた。
篤志は草叢を掻き分け、その場所に足を踏み入れた。
 その途端――
 足に何かが引っ掛かり、篤志は転倒した。
幸いにも草が覆い茂っていた為、篤志は軽い打撃を受けただけで済んだ。

「――ったいなぁ」
 篤志は自分の足元を見た。
それを目にするまでは、篤志は木の根か何かだろうと思っていた。
 だが、違った。
 それは、粘液を纏った得体の知れない"何か"。
「な、何だよこれ!」
 篤志はその"何か"から自分の脚を開放するべく、抗った。
だが、足に絡みついたそれは簡単に離れない。
それどころか、蛇行するように篤志の足を上って来るのだ。
「――っわぁっ」
 篤志は叫んだ。
足を伝う粘液を纏った軟体が、篤志には気味が悪くて仕方なかった。
「離せよっ!!」
 無我夢中で抗ってみるものの、やはり"何か"は離れようとはしない。
それでも篤志は、逃れるように前へ進んだ。

 だが篤志は、思いもしない光景を目にした。
前からも横からも、同じように粘液を纏った"何か"が近付いてくるのだ。
それはまるで、大量の大蛇。
その光景に、篤志は言葉を失った。

「ぅあぁっ!」
 不意に、篤志は体験した事のない不快感を感じた。
慌てて足を見る。
足に纏わりついていた"何か"が、何時の間にか増えていた。
いや、足だけではない。
逃れるように前方へ投げ出されていた両腕にも、それらは無数に絡み付いていた。
「――――っ!」
 そして次の瞬間、篤志の身体は無数の"何か"によって支配され、高々と宙に浮いた。

「――やめろッ!」
 篤志は叫んだ。
だが、その声は虚しく響き渡るだけだった。
その恐怖に、篤志の目に涙が溢れる。
このまま、この得体の知れない"何か"に食われてしまうのか。
篤志は生まれて初めて、生命の危機を肌で感じた。
抗うように身体を揺すっても、手足に纏わりついた"何か"が強く篤志の自由を奪った。
手足に纏わりついた"何か"は、次第に篤志の体にまで及んだ。
その幾つかは、既に篤志の衣服の中まで侵入していた。

「――っあ」
 不意に、篤志は言い知れぬ快感に見舞われた。
"何か"の一つが、篤志の股間に到達したのである。
それに続くように、次から次へと"何か"が篤志の股間に集まった。
その感触に、篤志は抗う事が出来なくなっていた。
 篤志は、全身の力が抜けていくのを感じた。

「は……っあぁっ」
 纏わりつく"何か"の粘液と絶妙な動きが、篤志に快感を与えた。
その快感に、篤志のペニスは次第に膨張し始めた。
「――や、やだ……っ」
 篤志は自分の身体が別のものになっていく気がして、急に怖くなった。
だが、それでも"何か"は篤志の身体を求める。
無数の"何か"は、篤志のペニスに絡み付く。
まるで篤志の感じる場所を知っているかの如く。
 言い知れぬ恐怖と、それに比例する快感に篤志は溺れた。

 いつしか篤志の服は、無様な形となって地上へ落とされた。
文字通り全裸となった篤志は、既に抗う事をやめていた。
全身を伝う粘液。
無数の"何か"は卑猥な音を立て、篤志の身体を貪った。
「や……あっ」
 篤志は"何か"に両足を開かれ、無防備になった自分の股間を見た。
天を仰ぐペニスの先端からは"何か"が発する粘液の、それとは違った液体が流れていた。
それが余計に篤志の興奮を高まらせる。
「も、う……好きに……し、てっ」
 篤志は掠れた声で叫んだ。
このまま得体の知れない"何か"に食われてしまうなら、快楽に溺れたまま死んだ方がいい。
篤志は思った。


 篤志の言葉を理解したのか、無数の"何か"が一度篤志の身体から離れる。
そして、それらは突如、篤志のアヌスに侵入を試みた。
「ああああっ」
 不快感と快感が、同時に篤志の身体を襲った。
粘液がヌチョヌチョと音を立てる。
「っあ! や……ッ!!」
 アヌスを犯した"何か"の一つが、篤志の前立腺を刺激した。
篤志は全身に電気が走ったように、激しく身悶えた。
それでも"何か"は篤志のアヌスを掻き乱す事をやめない。
それどころか、他の"何か"が幾つか無理矢理篤志のアヌスに侵入して来たのである。
「――あぁ、あっ。やだっ」
 篤志は内側から全身に伝わる快感を感じた。
無心に篤志のアヌスを犯していた"何か"は、次第にその動きを激しくする。
無数の"何か"が、入れ替わりで篤志のアヌスを犯す。
一度アヌスの奥まで深く入った"何か"は、篤志の前立腺を突き上げる。
そして肉壁がある事を確認すると、勢い良くアヌスを抜け出る。
それを、無数の"何か"が交互に行っていた。
「あっああっ」
 "何か"が篤志の前立腺を突き、這い出る度に、篤志は今まで感じた事のない激しい快感に襲われた。
「も、う……イっちゃう――ッ!!」
 篤志が叫ぶと同時に篤志のペニスから精液が飛び出し、篤志の腹部に散った。




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