ベストフレンド 友達であるために 13 Side Arisa




拓巳が私の元へ走ってくるのが見えた。



もう随分会っていない気がした。

最後に会った時よりやつれた気がする。

涙が溢れてきて拓巳の姿が滲んでいく。

会いたかった…拓巳。

心に封印した想いが一気に込み上げてくる。

手を伸ばしてそのまま彼の腕の中に飛び込みたくなる。


でも…


それは出来ないとすぐに思い返した。

拓巳を妊娠と言う名の枷で縛りたくない。


伸ばしかけた手をグッと握り締めると、想いを振り切るように走り出した。

だけど走り出した途端おなかの奥に響く鈍い痛み。
このまま走り続けたら、この子は死んでしまう。

「やめろ亜里沙。走るな」

夜の静寂を破るような拓巳の声に、ハッとする。

迷いが私の足を緩めたのとほぼ同時に、腕を強く掴まれ引き寄せられる感覚があった。



―― 行くな!



呆然としている私の耳に届いたのは切ない声。

とてもとても愛しい人の声。

拓巳…

あなたを忘れる事の出来ない私を…どうかそっとしておいて…。






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