拓巳が私の元へ走ってくるのが見えた。
もう随分会っていない気がした。
最後に会った時よりやつれた気がする。
涙が溢れてきて拓巳の姿が滲んでいく。
会いたかった…拓巳。
心に封印した想いが一気に込み上げてくる。
手を伸ばしてそのまま彼の腕の中に飛び込みたくなる。
でも…
それは出来ないとすぐに思い返した。
拓巳を妊娠と言う名の枷で縛りたくない。
伸ばしかけた手をグッと握り締めると、想いを振り切るように走り出した。
だけど走り出した途端おなかの奥に響く鈍い痛み。
このまま走り続けたら、この子は死んでしまう。
「やめろ亜里沙。走るな」
夜の静寂を破るような拓巳の声に、ハッとする。
迷いが私の足を緩めたのとほぼ同時に、腕を強く掴まれ引き寄せられる感覚があった。
―― 行くな!
呆然としている私の耳に届いたのは切ない声。
とてもとても愛しい人の声。
拓巳…
あなたを忘れる事の出来ない私を…どうかそっとしておいて…。
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