ホタル プロポーズ
月も星も見えない夜道
いつもだったら避けて通るはずの道
あなたに逢ったのは偶然じゃない
きっと二人で「それ」を見つけるため
闇夜に漂う小さな光
吹く風に掻き消えてしまうほどの儚い光
その存在は弱々しくて、切なくて…
たけど「それ」は確かに今ここに在る
「ホタルを見にきたの?」声が震えたのをあなたは気付いたかしら?
あなたの微笑む姿が無数の淡い光で浮き上がる
「伝えに来たんだよ。結婚しようって…」
あなたの香りが私を包み、その唇が優しく重なる。
―――儚くても切なくても、ひと時確かにそこに在る存在
「最後のときまで、傍にいるから…」
―――ひとつの光は弱くても、無数になれば夜道すら照らせる存在
「たとえ短い時間(とき)でもいいから…。一緒に幸せになろう」
擦れるあなたの声は切ないけれど強い意志を秘めている。
私は何を迷っていたのだろう
命の長さが幸せじゃない。その想いの深さが幸せなのだ。
あなたと一緒ならば、ほらこんなにも強い私になれるのに…。
「……ハイ…」
小さく頷く私を、あなたは苦しいほどに抱きしめた。
私の光は弱くても、あなたとならば未来を照らせるだけの強い光になれるはず。
闇夜に舞い踊るホタルの光が、確かに今ひと時ここに存在するように
今ここに私は生きていて、あなたを愛しているのだから…。
月も星も見えない夜道
私たちは「それ」をみつけた
儚くて弱々しい
不確かで切ないもの
+++ Fin +++
2005/7/2
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