Love Step
** 大好き **
龍也先輩が大好きだからいつも一緒にいたいと思う。
だけど彼は生徒会長で学校行事が近付くとやたらと忙しくなる。
ただでさえ普段から家庭教師のバイトで忙しくてなかなかゆっくりと龍也先輩と過ごす時間の無いあたしはちょっぴり寂しかったりする。
せめて毎日彼の為に夕食を作って帰ってくるまで待っていたいのに、バイトで遅くなる日は早めに帰るように言われてしまう。
龍也先輩は本当に心配性で、夜道をあたし一人出歩かせるのが心配でたまらないらしいの。
小学生じゃないんだから声を掛けられてもホイホイ付いて行ったりしないって何度も言っているのに…
あたしって信用がないみたいなのよね。
この間も道に迷って困っていた男の人を案内しただけで、龍也先輩は血相を変えて飛んできたんだから。
一体何処で見ていたんだろうってあの時は本当に驚いちゃった。
でも、彼があたしを凄く愛してくれているって分かるから、そんなことも嬉しくなってしまうの。
最近ずっと忙しい彼とは週末さえもゆっくり一緒に過ごす事ができなくて、とっても寂しかったりする。
だから、龍也先輩のマスコット人形を作ってみたりしたの。
彼に言わせたら『不機嫌極まりない可愛い気の無い人形』だそうだけど、
ニコニコ笑っている顔は私だけの宝物だから誰にも見せたくないもの。
人前ではいつも不機嫌でクールなあなたのままでいて欲しいの。
こんな事を思うあたしって欲張りなのかな?
ねぇ…龍也先輩。
ヤキモチ妬きのあなたは、あたしがこの人形にキスをしたらやっぱり怒るのかな?
おそろいであたしを型取ったマスコットをあげたとき
『ゲッ、こんなの恥ずかしくて付けられねぇよ。』って情け無い顔をしていたあなた。
やっぱりマスコットなんて可愛すぎて先輩には可哀相だったかな?
そう思っていたから付けてくれなくても仕方ないと諦めていたけれど…
でもね、この間見つけちゃったの。
いつも持ち歩いているカバンの中にコッソリと入れてあるのを。
「大事にしてくれていたのね?ありがとう」って言ったらなんて言ったと思う?
『聖良がくれたものだから大切にするのは当たり前だろう?』ですって。
真っ赤になって照れている龍也先輩なんて滅多に見れないから驚いちゃったけれど、そんな彼がとても愛しくて…
あぁ、あたしはやっぱりこの人が大好きなんだなぁって凄く心が温かくなったの。
龍也先輩が大好き。
この気持ちをずっとずっと大切にしていきたいと思うの。
あなたが微笑んでくれる時、世界中で一番幸せな女の子になった気がする。
誰も知らないあたしだけのあなたの笑顔。
こんなに素敵な笑顔のあなたを独占できて、愛されているあたしって本当に幸せなんだと思う。
だから、少しくらい寂しくたって我慢しなくちゃいけないよね?
大丈夫
あたしにはこのミニミニ龍也先輩がついているもの。
寂しい時はこの龍也先輩にキスをして…
「聖良。そんな『不機嫌極まりない可愛い気の無い人形』にキスするくらいなら本物にして欲しいんだけど?」
突然背後から聞こえた大好きなあなたの声に思わず胸がドキンッ!って跳ねた。
振り返るとミニミニ龍也先輩と同じくらい仏頂面をした本物の龍也先輩が腕組みをしてドアの前に立っていた。
玄関を開ける音なんて聞こえませんでしたけど?
「風邪をひいたとかで家庭教師のバイトが急にキャンセルになったんだよ。
聖良を驚かせてやろうと思って急いで帰ってきたのに…
俺よりその『不機嫌極まりない可愛い気の無い人形』のほうが良いらしいな。」
あらら、本当にマスコットに嫉妬しているのかしら?
拗ねた顔をしてソファーに座り込む龍也先輩を見て、ご機嫌を直すにはどうするのが良いのか暫し考える。
やっぱり…アレしかないかな?
あたしはソファーに座る龍也先輩をふわっと後ろから抱きしめて耳元で囁いた。
―― ミニミニ龍也先輩も好きだけど、やっぱりあなたが一番大好きよ ――
チュッと頬に落とした軽いキスがその後どうなったか…
これ以上は教えられないわ。
+++ Fin +++
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桜塚森さまからまたまた貰ってしまいました♪『Love Step』の聖良です。
桜塚森さまのサイトに飾ってあったこのイラストの『ミニミニ龍也』がツボにはまってキャアキャア喚いていたら(ウルサイ)
桜塚森さまが送ってくださったんですよ〜♪
もう感動です!あっという間に短編がサラサラッとできてしまいました。
本編はなかなか筆が進まないのにこの差は一体何なんでしょう?
やっぱり素敵なイラストに創作意欲を掻き立てられるんですね…ってことで許して下さい(滝汗)
桜塚森さま本当にありがとうございました。
朝美音柊花
2006/04/27