**Love Step番外編**

 〜な・い・しょ〜 


「聖良、何見てるんだ?」

学校側から死角になる校内でも有名な告白スポットでぼんやりしていたあたしは
不意に呼びかけられて振り返った。
振り返らなくても声の主なんてちゃんとわかっているんだけどね。

「あ、龍也先輩。うふふ…な・い・しょ・です。」

そう、まだ秘密にしておきたいの。あなたの為にあたしが考えている事。

「何だよ、ぼうっとして。また誰かに見惚れていたなんて言うなよ?」

「なっ!違いますよ。もうっ…。そんな訳無いじゃないですか。」

「…だったらいいけど、何してるんだよ。告白スポットに突っ立って…まっ、まさか誰かに告白されたとか?」

どうしてそう言う発想になるのかなぁ?龍也先輩が告白されるならまだしも
あたしに告白してくれるのは龍也先輩くらいのものですよ?

「クスクス…違いますよ。静かな所で考え事したかっただけです。もうすぐだし…。」

「何が?」

「だから、な・い・しょ・です。」

「冷てぇなぁ。」

「そのうちわかりますよ。」

たまにはあなたを振り回すのがあたしだっていいでしょう?
いつだって あなたの瞳の前にはウソをつけなくなってしまうあたし。
その瞳で問い詰められるとついつい本当の事を言ってしまうのよね。
でも…これだけはまだ言えないの。

だって、あなたを驚かせたいから…。

「せ〜い〜ら?教えて。気になるじゃないか。」

ギュウッと後ろから抱きしめてくる先輩に思わず負けそうになってしまうけど…
今日は絶対にくじけないんだから。

「まだ教えられません。」

「いつだったら教えてくれるんだよ。」

そんな風に耳朶を甘噛みしながら囁くのは止めて下さい。
仮にもここは学校です。

「はっ…花が咲いたらっ…。」

「え?」

恥ずかしさに動揺して思った以上に大きな声が出てしまって自分でもギョッとする。
あたしの大声に驚いたのか龍也先輩の腕が一瞬緩んだ。
その隙にするりと抜け出して、慌てて少し距離をとったあたしを見て「ふぅ…ん」と小さく漏らして腕組みをする龍也先輩。
ヤバイヤバイ…先輩の策に嵌る所だったわ。

あたしが逃げ腰なのを見てニヤッと笑うと眼鏡を外して潤んだ瞳であたしに近付いてくる。
その瞳を見て毎回動けなくなるあたしって…学習能力が無いのかしら?
至近距離で覗き込むように見つめられ、すぐにでもキスできそうな距離で「花がどうしたって?」と問い詰めてくる龍也先輩は
きっと誤魔化したらこのままキスするぞ、とか何とか考えている気がする。

やっぱりあたしが龍也先輩に隠し事をするのは一生無理なのかなぁ。

でもね、これを話すのは満開の桜の下、あなたの生まれた日がいいの。

だからね…もう少しだけナイショでいさせてね?

「あのっ…桜の花が満開になったら話しますから。それより先輩の誕生日もうすぐですよね。誕生プレゼントは何がいいですか?」

「聖良が欲しい。」

直球&即答ですね。
でもこれは予想通りの言葉だったから、あたしはやっぱりとは思っても、全然驚かなかった。

「あれ?真っ赤になるかと思ったけど。」

「予想はついてましたから。」

クスッと笑って少し背伸びすると先輩の首に腕を回して耳元に唇を寄せた。
少し含みを持たせた艶のある言い方をしたら、さっきの仕返しになるかしら?

「プレゼント…楽しみにしていて下さいね。」

龍也先輩が一瞬固まった。

それからあたしの顔を覗き込んで「それってどういう意味?」と問い詰めたけど
動揺して頬も少し赤くなっている龍也先輩が何だかかわいらしくて
いつもみたいにその瞳を見ても誘導尋問される事は無かった。
あぁ、気持ちいい。たまにはあたしが余裕で龍也先輩がドギマギするのも悪くないわよね?
なんだか病み付きになっちゃいそうなんだけど。
…でも、あんまりしょっちゅうイタズラすると、先輩の仕返しが倍になっちゃうかしら?

どういう意味だよ?って何度も聞いてくる先輩をかわしながらクスクスとじゃれあうこんな時間がとても幸せで
ずっと続いていけばいいと思う。
あなたと過ごす時間が少しでも長く、この幸せが永遠であればいいのに。

桜が咲き綻ぶまであと少し。
満開の桜の下、あなたに伝えたい言葉がある。

待ってて…あなたの誕生日にきっと伝えるから…。

4月8日あなたの生まれたこの日を…

あたし達の新しい記念日にしましょうね。



+++ Fin +++

2006/03/30

*****     *****     *****     *****     *****     *****
【楽園の小鳥】の小鳥さんから相互リンク記念に『Love Step』の聖良を頂いてしまいました。
かっ…カワイイ。龍也でなくても惚れるよ〜(感涙)
龍也が押し倒したくなる気持ちがわかりますね(コラコラ)
もう、あまりのかわいらしさに短編がサクサクと出来てしまいました(笑)
含みを持たせた終わりかたですが、聖良の誕生プレゼントとは何か、告げようとしている事は何か…
龍也の誕生日4月8日に明らかにします。
小鳥さま、素敵な作品をどうもありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
2006/03/30

朝美音柊花