肩を叩いた瞬間に見上げた顔がきょとんとしていたこと。
その後タブロイド紙を取り上げて「これかー!?」と怒っていた顔。
いつものことだと慰めていたら頬をつねられた、その痛み。
あるいはその指先の意外な柔らかさ。爪は立てない手加減。
……全てが魅力的だった。
「……ッ……ぁ、あ…」
くしゃくしゃになった紙が怒張した性器を包み込み、敏感な部分には優しくないがさつさで擦過する。
その外から包み込む手の動きも荒々しく乾き、
充足はともかくともかく出してしまう事を目的としているようだった。
――狭い従業員用トイレの個室。コモリはその中で妄想と快楽に耽る。
脚を開けば両側の壁に当たるような狭さと排泄物の残香漂う不潔な中でもその行為は邪魔されることはない。
むしろ目を閉じ没頭することで、その空間はどこでもない理想の場所に変わる。
そう……コモリが今目蓋の裏に描く光景こそが最高の夢想。
ふわりと柔らかいマットレス、白く清潔なシーツの上。
ぴんと伸びたシーツの上には、激しく動きそれを乱す人物がひとり。
「…ぇ、…っだ…」
コモリの右手が激しく上下する。酷く熱く、杭のように滾るそれがタブロイド紙の中でどろどろと汁を漏らす。
質の悪い紙はそれだけでふやけて繊維に戻ろうとしているようだった。
ぼろぼろとくずがトイレのタイルに落ちる中、コモリは恍惚とした表情で妄想に陥っていた。
シーツの上で乱れているのは、白人系の青年だった。興奮がすぐ肌に出る。
真っ赤な耳元、目元のすぐ上には豊かな緋色の髪と青灰色の目が暴れている。
ぐいぐいと強く揺さぶると、普段叩いても蹴っても壊れそうにない強靭な体が溶け崩れそうなことを不安がる、
そんな保護欲をそそる声で激しく彼が啼いた。
代理戦争で鍛え上げられた体は流石に締りが良かった。が、口を突破すれば奥までは筋肉ではない。
入り口がキツキツで奥がふわふわというのが男の名器――いや、名門というらしいが、
それに近いのではないだろうか。コモリはそう思いながら、タブロイド紙と右手の中を掻き混ぜる。
シャワーを覗いたときのあの腰と脚の細ささえその予感を感じさせる。
ふいに、青年が声を上げた気がした。もう出る、だめ、そんなことをコモリに訴える。
任せろとばかりに攻め立てると、壊滅的なほどにシーツにしわがよった。
涙声の中、青年が限界を迎えた。それに合わせるように右手がラストスパートをかけた。
あぁ、もう限界だ――
と思うより早く。細切れになったタブロイド紙は、哀れにもコモリの精液を受け止めていた。
「……戻ったらまたどやされちゃうね」
そんな独り言を呟きながら、コモリはタブロイド紙を丸めてくずかごへ捨てた。
どろっとしたものが絡んだ部分は、なぜか偏っていた――ちょうど、誰かの凄惨な笑顔の上へ。
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