年 (平成年)

11月歌舞伎公演「元禄忠臣蔵〈第二部〉」国立劇場

11月3日(金) 〜11月26日(日) <16日(木)休演>

配役
12:00開演(16:00時終演予定)/9日、17日は16:30開演(20:30終演予定)
元禄忠臣蔵〈第二部〉
大石内蔵助:四代目 坂田藤十郎
小野寺十内、新井勘解由:五代目 片岡我當
進藤八郎右衛門:八代目 坂東彦三郎
落合与右衛門:六代目 中村東蔵
富森助右衛門:五代目 中村翫雀
堀部安兵衛:六代目 中村松江
不破数右衛門、寺坂吉右衛門:二代目 中村亀鶴
上臈浦尾:初代 中村歌江
腰元おうめ:六代目 上村吉弥
大石主税、羽倉斎宮:六代目 片岡愛之助
中臈お喜世:三代目 中村扇雀
瑤泉院:五代目 中村時蔵
御右筆江島:二代目 中村魁春
遊女浮橋:二代目 片岡秀太郎
徳川綱豊卿:四代目 中村梅玉

筋書
愛之助丈関連
33ページ:出演者のことば(1/3ページ、素顔写真あり、カラー)
料金
特別席:12,000円(学生8,400円)
1等A席:9,200円(学生6,400円)
1等B席:6,100円(学生4,300円)
2等席:2,500円(学生1,800円)
3等席:1,500円(学生1,100円)
筋書:800円
戯曲
 
その頃、他の劇場では…
歌舞伎座
新橋演舞場
松竹座

感想
チケットを取ったときは、国立劇場の特別席が中央ブロックということを知らなかった。(←座席表を見て、ようやく桟敷席がないことに気付いたアホ) 次にチケット取る時は覚えておこう。

18日に1列目20番で観劇。
襖の向こうに夜桜が浮かんでいるセットが綺麗。今回は女形さんの衣装もすごく綺麗で、見ていて楽しかった。
内蔵助(藤十郎丈)が揚屋で遊んでいるところに主税(愛之助丈)と不破数右衛門(亀鶴丈)がやってくる。亀鶴丈はむさくるしい扮装をしていたから、一瞬誰かわからなかった。(声でわかったけど。)
主税「父上が遊んでばかりいるから、勝手に元服しちゃいました。親子の縁を切られてでも江戸に行きます」
内蔵助「ならぬ! この親不孝者!!」
と、持っていた扇でびしばし折檻をする。主税は父に打たれてもふるふる震えているだけ。ちょうど目の前だった。

浮橋(秀太郎丈)が飛んできて主税をかばう。
それでもおさまらず、「どけ!」という内蔵助。ここだけ見ると、飲んだくれた挙句にDVに走るオヤジだけど、そうではない。誰もいなくなったところで本心を明かす。
内蔵助「方便としてお家再興を願い出てしまった。絶対にありえないと思っていたのに、世間の評判によってそれがかなってしまうかもしれない。そんな中で敵討ちをするのは道理に合わない」

このとき、両手をついてちょこんと座っている主税が可愛い。内蔵助の扇をおでこに突きつけられた姿は、「マテ」と言われた子犬みたいだった。このいたいけいな十五歳が楽しいこともあまり経験できないまま、主君のために仇討ちに加わって腹を切るんだからやるせない。
内蔵助「至誠が第一、敵討ちは第二」
血気にはやる若者達も納得し、鬼事をして幕。

二幕目は御浜御殿。
綱豊卿(梅玉丈)が素敵だった。梅玉丈は“That's 殿様!”という感じだと思った。「ハッハッハ…」という笑い声が耳に残っている。
お伊勢参りの子役さんが可愛かった。(愛之助丈も子役時代にやっているみたい。)「意地悪ババア」と言われたときの浦尾(歌江丈)の反応が面白かった。いかにもオツボネ様みたいだった。
儒学者の新井勘解由(我當丈)が「侍心が大事。その上で異国の学問を取り入れる」みたいなことを言っていて(聞き違い、勘違いかもしれないが)、なるほどなぁと思った。

助右衛門(翫雀丈)は熱いを通り越して暑苦しいくらいの熱演だった。(←褒めてます。) ちょうど目の前に座っていたので、表情などがよくわかった。「お家再興になったら、敵討ちはできなくなるぞ」と言われ、座敷に入って必死に目で訴えるところがよかった。
能装束の綱豊卿が出てきたときは「ガイドブックなどでよく見るアレだー」とわくわくした。動くたびに鈴がシャンシャンと鳴り、桜の木にぶつかって花びらがはらはらと落ちるところがすごく綺麗だった。

内蔵助が瑤泉院(時蔵丈)の屋敷へ暇乞いに現れる。仇討ちを期待して浮き足立っている腰元たちが面白い。
今生の別れになるのに、内蔵助は最後まで仇討ちについては明かさない。落合与右衛門(東蔵丈)にはそっぽを向かれ、瑤泉院に亡き主君への焼香を拒絶され、閉められた襖に向かって頭を下げる姿が切なかった。内蔵助は袱紗包みを置いて静かに屋敷を出る。

外に出たら、今度は酔っ払いのおっちゃんに絡まれる。その酔っ払いは羽倉斎宮(愛之助丈)で、「俺は赤穂義士にこんなことをしてやったんだぞ!」と主張した挙句、「それでも人か! 侍か!」と内蔵助を傘でびしばしと叩く。
幼げだった主税とは対照的に小憎たらしい役だった。声も低かった。一幕では藤十郎丈に叩かれる役、最後は藤十郎丈を叩く役というのは、わざとそういう配役にしたのかな。

散々ののしられた後、しょんぼりとてぬぐいで着物を拭く内蔵助。
しかし、与右衛門や瑤泉院への誤解は解け、2人に見送られて去っていく。内蔵助は我慢しっぱなしでストレスがたまりそうな役だけど、瑤泉院の「さらば」で救われた感じ。内蔵助の目にも涙が浮かんでいたように見えた。
最後、花道を引っ込む姿は立派だったなぁ。

最初、「第二部ってことは、『殿中でござるー!』もないし、討ち入りの手前だし、ひょっとして一番つまらない部分?」と心配していたけど、そんなことはなかった。
大向こうさんが少なかったのが寂しかったなぁ。でも、おばはんの声で「松嶋屋!」はいらない。(一回だけだったけど。)

おまけの話。
国立劇場の雀は丸々としていた。ベンチに座っていると、こちらをうかがいながら近くまで寄ってくる。可愛かった。
お土産には切腹最中を買ってきた。餡が皮からはみ出していて、中にはお餅が入っている。美味しくて、家族にも好評だった。
国立劇場の筋書はしっかりしたつくりなのに、800円と安い。「出演者のことば」に載っている写真は最新のものなのかな。

ちらしのコーナーに地味な一色刷りのちらしがあった。
よく見ると「上方歌舞伎の色男 坂東薪車」という歌舞伎セミナーのちらしだった。
上方歌舞伎の色男について薪車丈がお話しするのか、上方歌舞伎の色男として薪車丈がお話しするのか、どっち?
ちらしには、名を継いだ心境や父でもある師匠のことなど伺う、とあるから後者っぽいなぁ。「どうもー。色男でーす」と登場するんだろうか? …ちょっと見てみたい。