29日に13列39番で観劇。
散華
お坊さんが客席の通路を歩きながら、華(花びらの形をした厚紙)をばらまく。表には醍醐寺の写真と「平成十八年四月 醍醐寺薪歌舞伎」の文字、裏には「総本山 醍醐寺」と印刷されている。
前の席の男性がいくつも拾って回りに配ってくださった。(私もいただいた。)
口上
中村富十郎丈が舞台向かって左端からご挨拶。「重源上人の名前は、歌舞伎では『勧進帳』にしか出てこない」ということで、『勧進帳』を読み上げた。ここで『勧進帳』が聞けるとは思っていなかったので、かなり得した気分。
重源上人由来鑑
まず、天女の姫(孝太郎丈)が登場。橙、ピンク、赤などの色鮮やかな十二単姿。続いて重元(橋之助丈)が登場。白塗りの色男で、水色の衣装。2人で仲良く踊ったりしていると、お坊さんが重元を呼びにくる。
重元が引っ込んだ後に、盛遠(愛之助丈)が登場。衣装は深緑で笠と蓑を着用(舞台に上がったらすぐ抜いだ)、顔はベージュの釣り目メイク。重元とは対照的で、乱暴な感じの役だった。愛之助丈が目をカッと開いて見得を切る時に、目が赤く見えた。見開きすぎて目が乾いて充血しちゃってるのではないかと心配になった。
盛遠は低くてドスのきいた声で「俺はお前に一目ぼれした」「俺はお前の父親の恩人だ」「だから俺と一緒になれ」と天女の姫にせまるが、嫌がられる。(そりゃあね。もっとスマートに口説かなきゃダメだよね。)
「それなら、恋敵を殺してやる!」というところに、煩悩を断ち切るために出家した重元が現れる。天女の姫が「自分が恥ずかしい」と自害しようとすると、盛遠が「はやまるな」と小刀を奪う。盛遠はその小刀で髷を切り、出家。天女の姫も出家?…と、いう話だった(はず)。
私は憎憎しい役の愛之助丈を見たのが初めてだったので新鮮だった。メイクでずいぶん印象が変わるんだなぁ。
(←マタギかと思った)
新作舞踊だが、元になった話は「恋つか物語(恋塚物語)」みたい。(→京都大学電子図書館)
火入れの儀
ここで薪に火をつける。
煙がもくもくと空へと上がっていき… これが雨の原因になったんじゃないか?
声明
正直、退屈だった。(←罰当たり)
だって、「ちょぉーげんっ、あーじゃーりー」ばかりが耳に残ったんだもの…
船弁慶
弁慶(橋之助丈)が登場したのだが、雨が降ってきたため観客がいっせいにポンチョを着込むガサガサという音が… 仕方ないとはいえ、ちょっと役者さんに申し訳なかった。
弁慶の勧めもあって、義経(孝太郎丈)は静御前(富十郎丈)に都へ帰るように命じる。
別れの盃を交わす場面で、静御前にピンスポットが当たり、次第に場面が暗くなる。こういう演出なのかと思っていたら、「悪天候のため舞台を一時中断します」と場内放送が入った。
雨脚は強くなっていたが、台風の鈴鹿F1に比べればどうってことはなかった。(←基準がズレている。) サーキット仲間の友人と「赤旗中断だ」「このまま雨がやまなかったら、5月1日にこの演目だけやるの? それともこれで成立したことになるの?」「愛之助さんまだ出てないのに!」「でも、これがF・ポンならレース成立だよ」などと話していた。
結局、30分ほどで雨がやみ、そこから舞台を整えて、40分ほど過ぎた頃に舞台再開。

↑見えにくいけど、舞台の上でモップ(?)をかけてる。
静御前の舞から再開。
静御前が舞を終えて退場し、舟長(愛之助丈)が舞を舞う。愛之助丈はベージュのタレ目メイク。踊っている時の表情が可愛くて愛嬌があった。声も高くて、「重源上人由来鑑」の盛遠と同じ人が演じているようには見えない。さおを使って舟をこぐ仕草もあって面白かった。
知盛の怨霊(富十郎丈)が登場し、義経と刀でやりあう。この怨霊、頭にツノみたいなものがついているのだが、それが何だか触覚のよう。バイキンマンを思い出してしまった。結局、弁慶の祈りによって知盛は退散した。
野外ステージ、雨による中断など、なかなかできない観劇体験だった。
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