
昼の部
23日に、1階1列5番(花道横)で観劇。
役者さんが近かった。目が合ったりもした。(気のせいかもしれないが。)
ただ、花道の芝居では後姿を見ることが多かったかな。花道横なら、3,4列目くらいがよさそうに思った。
信州川中島
敵方の軍師・勘助を引き抜くべく、その母・越路(竹三郎丈)をもてなす輝虎(我當丈)のお話。輝虎の部下が直江山城守(進之介丈)、その妻・唐衣(孝太郎丈)は越路の娘。お勝(秀太郎丈)は勘助の妻という人間関係。
輝虎の衣装が豪華だった。金ぴかの烏帽子と直衣。ライトが当たってきらきら光っていた。そんなきらきらな衣装を着て、越路にお膳を運んでくる。
越路は三婆の一人と言われるだけあって、強烈なおばあちゃん。敵のもてなしは受けないとばかりに、輝虎が用意したお膳を足蹴にした。ここでいそいそと食器を拾い集める黒衣さんに目が行ってしまった。黒衣さんの動きを見るのは面白い。
ぶち切れた輝虎が越路を斬ろうとする。お勝はどもりで上手く喋れないので、琴を弾いて「母の代わりに私を…」と懇願する。秀太郎丈は本当にお琴を弾いていた。簡単に弾いているように見えて、結構難しいんじゃないかと思う。テレビのインタビューなどでは流暢に話す秀太郎丈だが、舞台ではどもりに見えるところはさすが。
お勝の姿を哀れに思った輝虎は越路を許し、越路とお勝は館を後にする。我當丈と進之介丈が並んで見得を切るのを見て、親子そっくりだと思った。DNAって不思議。竹三郎丈の越路は最後の引っ込みまで凛としてかっこよかった。
連獅子
翫雀丈と壱太郎丈親子の連獅子。この親子はあまり似ていないと思った。…が、もう20年もすればそっくりになるのかな。
まずは狂言師の姿で踊る。これがなかなか激しい動き。壱太郎丈が花道で踊っている時に汗が飛び散っていた。離れているとわからないけれど、やっぱり汗をかいているんだなぁ。あのお化粧は落ちないんだろうか。
狂言師が引っ込んだ後、修験者(愛之助丈)が登場。もっさり眉毛にコミカルな動きで、花道に来た時に至近距離で見上げたのだけれど、笑ってしまった。鬼次郎をこの位置で見上げたかったなぁ。でも、愛之助丈の素顔はどちらかというと修験者に近い気がする。たれ目だし。
ひょうたんを振ってお酒が残っているのがわかると、嬉しそうににこっと笑ってぐいっと飲み干す。「うぃーっ」とか言ってるし、まるっきり酔っ払い。女性2人に「獅子を封じ込めてください」と言われて「いーろーはーにほーへーとー」と唱え出す。おいおい。結局、獅子を封じ込めることはできず(当たり前)、ふるふる震えて腰を抜かして退場。
獅子となった親子が登場。花道で毛をぶんぶん振った時は、こっちに当たるんじゃないかと思った。舞台の上でもぶんぶんと毛を振る。若さが有り余っているせいか、壱太郎丈の方が勢いがあって元気だったな。

口上
写真や映像では見たことがあるけれど、劇場で見るのは初めて。
幹部俳優さんが裃姿でずらりと並んでいる様子は華やかだった。松嶋屋さんの裃は途中で色が変わっていて綺麗だと思った。
口上の舞台写真がほしかったけど、売ってなかったなぁ。よくよく考えたら、襲名続きで毎月のように口上があるんだから、何度も観に来ているお客さんには珍しくないんだ。
私の目の前は段四郎丈だったのだが、カツラの髷が妙にとんがっているので、まじまじと見てしまった。なんだかアンテナみたいだったんだもの。澤瀉屋さんは皆こういう髷なのかなぁ。
笑いをとっていたのは、菊五郎丈の「私と藤十郎さんの共通点は奥様が怖いこと」と、仁左衛門丈の「公私共にご活躍の兄さんを私も見習いたい」というもの。
全体的に上方歌舞伎の繁栄を願うものが多かったような。藤十郎丈はこの名跡への思い入れを語っていた。内容は夜の部の向上と同じ。
夏祭浪花鑑
実はこの演目には、観る前から苦手意識があった。ガイドブックに載っている写真が原因。薄暗い場面で、刺青をして髷がほどけて着物の乱れた男が、汚れた格好の老人に向かって刀を振り上げている。そのいかにも陰惨な写真を見て「あまり気持ちよく観られそうじゃないなぁ」と思っていた。
私の予想は半分当たり、半分外れという感じだった。
主役の団七(藤十郎丈)はあまりかっこいいと思えなかった。藤十郎丈が「団七は泥臭い男」というようなことを言っていたので、これでいいのかも知れない。
釣船三婦(我當丈)はやんちゃなおじいちゃんという感じで、観ていて楽しい。ぽんぽんっと関西弁の台詞が飛び出してきて、テンポがいい。おつぎ(竹三郎丈)はそんな三婦に惚れているのがよくわかった。お辰(菊五郎丈)がやってきた時、戸をぴしゃりと閉めて三婦に「若い女子が来てますよ!」というおつぎ、戸を閉められて「…あら?」という表情のお辰、「妬くな、妬くな」と言いつつ面倒くさそうに出て行く三婦がおかしかった。三婦をほれぼれ見送りながら、おつぎが「よっ、松嶋屋!」というのはお約束なのかな。
一寸徳兵衛(仁左衛門丈)はスマートで素敵。長い脚を邪魔そうに組んで、髭を抜いているところがかっこよかった。団七との立ち回りは、どっちが主役か分からなくなるくらい。(ごめんなさい。) 恩あるお梶(時蔵丈)の前で大きな体を小さくしている姿が可愛いかった。琴浦(孝太郎丈)はバカップルみたいな感じがよく出ていたと思う。
お辰が「ここでござんす」と胸をぽーんと叩く辺りまでは非常に面白く見ることができた。
で、大詰の泥だらけの立ち回りなのだが… やっぱりあの場面は好きになれなかったなぁ。どうしても団七のぽっこりとしたお腹に目がいってしまう。舞台もなんだか暗いし。今まで明るかった分、余計に舞台が暗く感じられた。それが狙いなのかもしれないけれど、殺しの場で終わるのは後味が悪い。(伊勢音頭は刀と折紙を取り戻したという救いがあったけど、今回はそういうのもなし。)
今回は昼の部→夜の部と続けて見て帰るのが正解だったかも。
しかし、1日中観劇するのは辛いしなぁ。
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