年 (平成年)

「第九回花柳寿々の会」国立文楽劇場

8月27日(日)

配役
13:00開演
一、長唄「末広狩」
太郎冠者:片岡静香

一、長唄「島の千歳」
一、清元「文売り」
一、清元「玉屋」
一、長唄「藤姫」
一、清元「梅の春」
一、清元「流星」

休憩

一、長唄「賤機帯」

一、清元「落人」
お軽:花柳美琳
勘平:六代目 片岡愛之助

一、長唄「松の緑」
二代目 片岡秀太郎 (応援出演)

一、清元「保名」
花柳寿々

一、清元「青海波」
十五代目 片岡仁左衛門 (応援出演)

御挨拶

※一般の方もいらっしゃるということで、配役は一部しか載せてません※

筋書
家元さん、花柳寿々さん、仁左衛門丈、秀太郎丈のご挨拶と出演者の写真、踊りの紹介が載っている。

愛之助丈関連
17ページ(表紙を1ページ目と数える):写真と紹介

料金
全席自由:6,000円
筋書:無料
その頃、他の劇場では…
歌舞伎座
上方歌舞伎会

感想
自由席だったので、1時間くらい前から並んでいた。しかし、大阪のオバチャンの席取りパワーには脱帽。(「席押さえはダメ」って書いてあっても聞きやしない。)
開演しても、ヒソヒソボソボソガサガサゴソゴソしてるわ、途中入場してくる人はいるわ、長唄に合わせて口ずさんでいるおばあちゃんはいるわ… 踊りっておおらかな心で見るものなのね。
中央13列29番で観劇。小さな劇場だったので、オペラグラスを使えばしっかりと表情まで見ることができた。

着物を着た人が次々と舞台に出てきて踊るのかと思っていたら、1回ごとに幕が下りて、舞台装置を変えて、踊り手さんがこしらえをして登場するので(素踊りの場合もある)、見ていて飽きなかった。女性が男性のこしらえで踊るのは不思議な感じがした。「藤娘」を初めて見たり、お面を頻繁につけかえての踊り分けがあったりと楽しかった。「松嶋屋!」はもちろん、「寿々松嶋!」や踊っている方のお名前の大向こうもかかっていた。びっくりして振り返っているご婦人もいた。

愛之助丈は「落人」で勘平を踊る。この踊りは台詞もあって、ちょっとした劇のよう。
幕が開いたら、2人が寄り添って立っていて、「あ、このポーズ『演劇界』の写真で見た気がする」とまず思った。(余談だが、『演劇界』さん、今月号も愛之助丈の扱いが小さいぞ〜!今年に入ってから検索ランキングで1位取ってるのに…)
近くから「まぁ、お父さんそっくりねぇ… え? 仁左衛門さんの息子じゃないの?」とか「お父さんより仁左衛門さんに似てるわね」という話し声が聞こえてきた。そんなに似てるかなぁ?たまーに「あ、今の表情は似てるかも」と思うことはあるけど。似てる似てないはさておき、ため息が出るほどのいい男だった。

勘平は“色に耽ったばっかりに”お家の大事に居合わせることが出来ず、旅の途中でもしょんぼり。
「僕、腹を切るよ。君は僕をとむらってね」と切腹しようとするが、お軽に「そんなことしたら、あたし、後を追っちゃうからね。『心中した』って言われて、どのみち恥をかくわよ!」と言われて刀もとられちゃってるの。おいおい、お侍なのに情けない。でも、そのしょんぼりめそめそしてる様子がすごく似合っていた。あんな切なげな色男が落ちてたら、お軽じゃなくても拾って帰るね。貢さんの時も思ったけど、愛之助さんって(ノД`)←こんな顔が似合うなぁ。(注:褒めてます。) 勘平の黒い衣装に、お軽の手の粉がついて白くなっていた。歌舞伎を観ていて気付いたことはなかったけど、やっぱり粉って落ちるのね。

ここで思ったのが、愛之助丈の声はすごくよく通るんだなぁということ。台詞のある舞踏もいくつかあったけど、少々声が聞き取りにくかった。やはり、歌舞伎役者さんは声量が違うんだな。声はもちろん、表情や仕草もとってもよかった。25分くらいの舞踏を堪能した。愛之助丈のファンとしては、歌舞伎座に行くよりコストパフォーマンスが高かった。(喜ぶべきか、嘆くべきか…)

続いて、秀太郎丈の「松の緑」で素踊り。素顔で眼鏡をかけていないお顔って初めて見たかも(除く、昔の筋書写真)。女形のイメージが強かったけど、かっこよかった。が、5分くらいで終わってしまった。短っ! もう少し見ていたかったなぁ。

花柳寿々さんは「保名」。紫の鉢巻をしたこしらえで踊るのかと思っていたら、普通にお着物だった。

最後は仁左衛門丈の「青海波」で素踊り。幕が開いたら、仁左衛門丈がおじぎをしていた。お顔を上げた時、周りのオバサマのテンションが明らかに違った。すらりとしてかっこよかったが、10分くらいで終わってしまった。オバサマ方が「短いわねぇ」「だって63だもの」などと話していた。そっか、63歳なんだ… 見えない…(素顔なのに!) 光源氏と頭中将が踊ったのって、コレなのかな。

最後にご挨拶があった。
あくまで、こんなことを話していたというニュアンスです。一言一句この通りに話されたわけではありません。(拍手にかき消されたりして聞こえにくかったので、間違っているかも…)

秀太郎丈「花柳寿々の弟・片岡秀太郎です。姉と弟、妹の静香、倅の愛之助と一緒に参加できて嬉しい。女の兄弟と同じ舞台に立てる機会は踊りの会くらい。父と母もきっと喜んでいて、あの辺(と客席を指す)で見ていることでしょう」
仁左衛門丈「え゛ー………(と、いきなり詰まる。客席笑) 花柳寿々の弟・片岡仁左衛門です。言いたいことは全て兄が言ってしまいました。姉は幸せ者です。姉が幸せということは私達も幸せです」
花柳寿々さん「父や母も喜んでいてくれるでしょう。10回目まではなんとしてもがんばりたい」

すらすらご挨拶する秀太郎丈に比べて、仁左衛門丈はいっぱいいっぱいな感じだった。男前なのに可愛いなぁと思ってしまった。そういえば、仁左衛門丈は七ッ割丸に二引、秀太郎丈は追いかけ五枚銀杏だった。
最後に「それでは、十五代目より三本締めの音頭をとっていただきましょう(BY:秀太郎丈)」ということで、三本締め。
いやはや、見ごたえがあって楽しかった。
次回もぜひ見に行きたいな。できれば、指定席にしてほしい。私の後ろに並んでいた老婦人が「自由席だからこんな目に合うのよ」と話していたっけ。室内でクーラー効いてたけど、お年寄りは長時間並ぶのはきついかも。