年 (平成年)

歌舞伎座
二月大歌舞伎 歌舞伎座
2月1日(木)〜2月25日(日)
通し狂言 仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)

昼の部(11:00開演)
大序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場 11:00-11:57
三段目 足利館門前進物の場、松の間刃傷の場 12:27-14:47(四段目まで)

高師直:五代目 中村富十郎
桃井若狭之助:二代目 中村吉右衛門
足利直義:初代 中村信二郎
顔世御前:二代目 中村魁春
塩冶判官:七代目 尾上菊五郎

四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場、表門城明渡しの場
塩冶判官:七代目 尾上菊五郎
石堂右馬之丞:四代目 中村梅玉
顔世御前:二代目 中村魁春
原郷右衛門:六代目 中村東蔵
大星力弥:四代目 中村梅枝
斧九太夫:六代目 片岡芦燕
薬師寺次郎左衛門:四代目 市川左團次
大星由良之助:九代目 松本幸四郎

浄瑠璃 道行旅路の花聟 15:07-15:45
早野勘平:四代目 中村梅玉
鷺坂伴内:五代目 中村翫雀
腰元お軽:五代目 中村時蔵

夜の部(16:30開演)
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場、二つ玉の場 16:30-18:22(六段目まで)
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場

早野勘平:七代目 尾上菊五郎
斧定九郎:四代目 中村梅玉
一文字屋お才:五代目 中村時蔵
千崎弥五郎:四代目 河原崎権十郎
おかや:二代目 中村吉之丞
判人源六:六代目 中村東蔵
不破数右衛門:四代目 市川左團次
女房お軽:五代目 坂東玉三郎

七段目 祗園一力茶屋の場 18:52-20:32
大星由良之助:二代目 中村吉右衛門
女房お軽:五代目 坂東玉三郎
大星力弥:六代目 中村児太郎
斧九太夫:六代目 片岡芦燕
寺岡平右衛門:十五代目 片岡仁左衛門

十一段目 高家表門討入りの場、奥庭泉水の場、炭部屋本懐の場 20:42-21:00
大星由良之助:二代目 中村吉右衛門
小林平八郎:三代目 中村歌昇
大星力弥:六代目 中村児太郎
竹森喜多八:六代目 中村松江
原郷右衛門:六代目 中村東蔵

料金
1等席:15,000円
2等席:11,000円
3階A席:4,200円
3階B席:2,500円
1階桟敷席:17,000円

博多座
二月花形歌舞伎 博多座
2月2日(金)〜2月26日(月)

昼の部(11:00開演)
一、新歌舞伎十八番の内 高時(たかとき)
北条高時:十一代目 市川海老蔵
安達三郎:初代 坂東亀寿
衣笠:二代目 尾上松也
秋田入道:四代目 片岡亀蔵
大仏陸奥守:六代目 片岡市蔵

二、新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生 後に獅子の精:五代目 尾上菊之助

三、倭仮名在原系図(やまとがなありわらけいず)
 蘭平物狂(らんぺいものぐるい)

奴蘭平実は伴義雄:四代目 尾上松緑
与茂作実は大江音人:五代目 坂東亀三郎
女房おりく実は妻明石:二代目 尾上松也
水無瀬御前:三代目 市川右之助
在原行平:五代目 尾上菊之助

夜の部(16:15開演)
一、おちくぼ物語(おちくぼものがたり)
おちくぼの君:五代目 尾上菊之助
左近少将:十一代目 市川海老蔵
兵部少輔:六代目 片岡市蔵
帯刀:初代 坂東亀寿
阿漕:二代目 尾上松也
典薬助:四代目 片岡亀蔵
北の方:三代目 市川右之助
源中納言:九代目 市川團蔵

二、新歌舞伎十八番の内 船弁慶(ふなべんけい)
静御前、平知盛の霊:十一代目 市川海老蔵
舟長三保太夫:四代目 尾上松緑
源義経:二代目 尾上松也
舟人浪蔵:初代 坂東亀寿
舟人岩作:五代目 坂東亀三郎
武蔵坊弁慶:九代目 市川團蔵

三、彦市ばなし(ひこいちばなし)
彦市:四代目 尾上松緑
天狗の子:初代 坂東橘太郎
殿様:四代目 片岡亀蔵

料金
A席:15,000円
特B席:12,000円
B席:9,000円
C席:4,000円

松竹座
2月公演 松竹座
2月3日(土)〜2月25日(土)

昼の部(12:00/12:30開演)/夜の部(17:30/18:00開演)
朧の森に棲む鬼(おぼろのもりにすむおに)
作:中島かずき
演出:いのうえひでのり

出演:
ライ:七代目 市川染五郎
キンタ:阿部サダヲ
ツナ:秋山菜津子
シュテン:真木よう子
シキブ:高田聖子
ウラベ:粟根まこと
サダミツ:小須田康人
イチノオオキミ:田山涼成
マダレ:古田新太 ほか

料金
1等席:12,600円
2等席:7,500円
3等席:5,500円
パンフレット+カレンダー:3,000円
サントラ:2,500円

観劇レポ
朧の森に棲む鬼

17日昼の部を前方花道真横で観劇。

ライ(染五郎丈)は本当に救いようのない悪役だった。外道だけど、あそこまで外道を極めてくれると、返ってすがすがしい。
ビバ、外道!(←おい)
正義の味方がかっこいいのは当り前。悪党なのに魅力的なところがスゴイ。

最初にライとキンタ(阿部サダヲさん)が登場した時は、あまりにボロボロなんで驚いた。出世してどんどん綺麗に、そして重そうな衣装になっていった。ボロボロなんだけど、出世した後よりもこの頃が楽しそうだったな。野望に向かって突き進んでいるライは、身体からいろんな何かが噴き出していて、それはそれで魅力的だったけど。

ライはどうしてキンタを捨てちゃったのかなぁ。
「血人形の契り」の真相を知った時に苦悩の表情を浮かべているように見えたけど、そこで「悪党が情けをかけたらおしまい」って吹っ切ってしまったのかな。「鬼より怖いのはライ様だ」とか言った時に、鬼になると決めたのかな。
「こんなことになるとは思わなかった。すまなかった」と言えば、愛すべきバカ(←褒めてます)のキンタは許してくれたのではないだろうか。たった一人玉座について、周りに誰もいないのは寂しいぞ。今まではずっと、キンタが隣で「兄貴、すげぇや!」って言ってくれてたわけだし。ライが無意識にキンタを助けてしまったのは、それを感じていたんじゃないのかなぁ。
キンタを捨てるのを見て、マダレ(古田新太さん)は内心でライを見限ったんだと思う。マダレ、渋くてかっこよかった。

今回の席は、スッポン辺りの花道横だったので、役者さんをすごく近くで観ることができた。染五郎丈の汗が飛んできそうだったよ。
花道で殺陣があると、剣とか槍が怖くて思わず身体をそらしてしまった。剣がぴかぴかではなくて、どす黒い血がついて錆びてる感じなのが、なんともリアルで不気味だった。
不気味と言えば、「キンタ、生きてたんだ。よかったぁ」と思っている時に、何やらスッポンからせりあがってきた。何かと思ったら、さらし首(もちろん作り物)だった。…アレだけは近くで見たくなかった。

キンタを捨ててから、ライはゲドウ・オブ・ゲドウズになっていく。しかし、一つ疑問に思う。
ツナ(秋山菜津子さん)にヤスマサ(横山一敏さん)の手紙の後半部を渡す時に、どうしてシキブ(高田聖子さん)との関係をばらさなかったんだろう?「お前の夫は国を裏切っただけではなく、お前を裏切ってシキブと通じていた」とか言うと思って見てたので、あれれ?という感じだった。(←ひょっとして、私がライより外道なのか?)
そして、ツナが夫の浮気に勘付いていたのかも気になる。勘付いていたら、あんなに愛おしそうに回想しないかな。それにしても、彼女とマダレの兄弟は似てなさ過ぎる。『シベ超5』の佐伯大尉とその妹といい勝負だ。

シキブが憎んでいたツナにすがって息絶えるところが哀れだった。
へちゃむくれ、もとい、イッチャン、もとい、イチノオオキミ(田山涼成さん)、いい人だったのになぁ。(惚れた女性に主導権を握られているあたり、『源氏物語』の朱雀帝と朧月夜を思い出した。)
他には、検非違使隊の2人がいい味出してた。キンタと3人で歌うところなんて、笑顔全開でジャニーズみたいだったぞ。
ウラベ(粟根まことさん)とサダミツ(小須田康人さん)も面白かった。シュテン(真木よう子さん)は美人だけど、どうも(私にとっては)魅力に欠けるキャラクターだったのが残念。

ラストでは、雨がザーザー降っていた。こんなに雨が降る舞台は、去年の醍醐寺薪歌舞伎以来。(←それは降らせたわけじゃないから。)
ライは最期、朧の森に棲む鬼になってしまったんだろうか?
朧の森を訪れる者をペテンにかけたりするんだろうか?
結局、オボロたちの望むまま生き血を吸われ、あのまま朽ち果てていくんじゃ切ないよなぁ。(自業自得といえば、そうだけど。)
見落としてるところや、勘違いしているところがたくさんありそうだから、DVDが出たら買おうかな。

カーテンコールは5回(だったと思うけど、たくさん出てきてくれたのでうろ覚え)。終演のアナウンスの後に2回出てきてくれた。(最後はスタオベ)
染五郎丈は役が抜け切っていないのか、少し表情が固かったような…? それでも、うっすらと笑みを浮かべて手を振ってくれた。貴公子だった(笑)。
ちなみに、私はカーテンコールで舞台が明るくなるまでガイコツに気付かなかった。ドライアイスがすごくて見えなかったのだ。顔の周りに煙がもわ〜んと漂ってくるし。

新感染のお芝居は初めてだったけど、歌あり、笑いあり、殺陣ありで、すごく面白かった。光を当てると(←?)、透き通って向こう側が見える緞帳が面白いと思った。ラブシーンは結構ロコツだった。『染模様恩愛御書』のシルエット・ロマンス(笑)は控えめにしてたんだな。いや、友右衛門と数馬でアレは見たくないけどな。(←どのみち、足を出したら数馬の方が逞しいのがバレるから、無理。)

ついつい、サントラを買ってしまった。しかし、パンフとカレンダーの抱き合わせ販売はいかがなものか。3000円は高いぞ。(買ったけど) 役者さんのファンには嬉しいんだろうけど、「ちょっと見てみようかな」という軽い気持ちで見に行った者としては、躊躇する値段だった。そして、特製手提げ袋を手に提げると、袋の底が地面についてしまうので、ちょっと困った。

外に出ると、ラストシーンのような激しい雨が降っていた。
帰りに、向かいの「アンドリューのエッグタルト」で4種詰め合わせを買った。会社の子が「向かいのエッグタルトが美味しい」と教えてくれたのだ。
買った後に箱を見て気付いたんだけど、これ、数年前にマカオGPを見に行った時に食べ損なったエッグタルトだ。まさかこんなところにあったなんて…

美味しかったので、次は浪花花形歌舞伎の時に買って帰ろうっと。(←気が早い)


観劇から2日経つけど、うだうだと考えていることがあるので、書いてみる。

まずは、ヤスマサ。
ツナへの手紙に「この国は腐ってる(←うろ覚え)」から裏切ったとあった。金塊目当てで隣国に攻め入ることに嫌悪感を持っていたのかもしれないし、宮中の勢力争い(ウラベとサダミツが「私に危害を加えなければ別に…」「さすが、この国のやり方をわかっている」みたいなことを言ってた)に嫌気が差したのかもしれない。
ツナの回想から考えても高潔な人物に思えるんだが… シキブと浮気してたんだよねぇ?

ヤスマサ将軍ともあろう方が下半身は別人格なんですか…?

ツナへの手紙には恥ずかしくなるような褒め言葉たくさん並べられていたし、見掛けによらずラテン男みたいな人だったんだろうか?(実は、ライがツナに手紙を渡した時、筆跡を真似た偽手紙だと思っていた。後半部が読まれて、本物だとわかったんだけど。) ツナには手紙があってシキブにはなかった。それを考えると、「内縁の妻なんて刺身のツマと同じよ。爪楊枝のツマと同じよ」という台詞がすごく哀れに思える。
ヤスマサ将軍、罪な男だ。

次に、ライはいつキンタを裏切ることを決めたのかということ。
血人形にキンタの血をつけた時は、「嫌な予感がした」だけでキンタを裏切るつもりはなかったはず。必死になって「俺の(実はキンタの)血人形はどこへやった!?」って言ったのは演技には思えないんだよなぁ。
キンタに「鬼より怖いのはライ様だ」と語った辺りで決心したのかなぁ。
キンタを人質にとられて身動き取れなくなるくらいなら捨ててしまおうと思ったのか。自分の腕っ節も強くなったからもうキンタに頼らなくてもいいと思ったのか。いや、オボロと契約する時に、「信用? そんな言葉は、人に頼らなきゃ生きていけねぇ能なしにくれてやれ」と言っていたから、王になるのにはキンタがいてはダメだと思ったのか。
目の見えなくなったキンタをいたぶる時のライは何かプッツンと切れたように見えた。(サダミツに「豚野郎」と言ったときよりさらにイッちゃってた。) ライは本当はキンタを殺したくなかったんだと思いたい私はロマンチなのか…?(←「ビバ、外道!」とか言ってたくせにな。)

愛も憎悪も同じということ。
子供の頃に読んだ漫画『ローラカイザー (1)』に「憎しみは愛より強い。だから憎しみ合うことを選ぶ」みたいなことが描いてあって、衝撃を受けたのを思い出した。
最期、ライはオボロへの憎しみで頭がいっぱいだったのかなぁ。
あそこで、「ああ、昔はここでキンタが助けに来てくれたっけ」と思い出していたら、ラストシーンは違っていたんじゃないかなぁと思った。(←やはりロマンチ…?)

そして最後に。どうでもいいけど。
「エイアン=平安」なら「ラジョウ=羅城門」なのかな?
ラジョウって響きがいいなぁーと思ってた。

戯曲を買おうかと思ったけど、結構高いので迷い中。


まだぐだぐだと考えているので書いてみる。(←しつこい)

ライがキンタをポイしたキッカケ。 最初は、やっぱり殺すつもりはなかったのではないか(と、思いたい)。無意識に急所外して助けちゃってるしね。
キンタがシュテンをかばって、「俺が一緒に謝ってやる」「兄貴は俺の言うことなら、きっと聞いてくれる」(と言ったと思うんだけど、思い違いかも。何か別の話がまざっているような気もする)と言ったのが癇に障ったんじゃないのかなぁ。「このライ様を騙した女をかばうのか? お前の言うことなんて、聞くもんか! ムッカー!!」という感じで。
あれはもう、キンタをいたぶるというより、シュテンをいたぶっていたのではないかと思う。(が、シュテンが当身を食らって気を失ったのはどのタイミングか忘れた。←忘れすぎ)
「お前が俺様を騙したせいで、罪もないキンタがこんなに可哀相そうな目にあうんだぞ〜♪」というつもりだったのが、エスカレートして引っ込みつかなくなったのではなかろうか。(ライって、結構行き当たりばったりだからさぁ。)
…観客に共感されないように作られた悪役に、何とか共感しようとしているというのも変な話だ。
ライは確かに外道だったけど、私は子供の頃に少年漫画を読んで育ったので、この手の悪役には割と免疫ができている。初めてダーク・シュナイダーを見たときの衝撃は忘れられない(笑)。(←あの漫画、今どうなってるんだろ?)

玉座についた後にどうするんだろう、ということ。
最初、自分のついたウソによって、思い通りにコトが運ぶのが面白かったんじゃないかな。それが、だんだん自分の思い通りに行かないと我慢できなくなっていったのかもしれない。
とにかく、王になることだけが目的で、あとのことは何も考えてないように見えた。美味しいもの食べて、いいお酒を飲んで、綺麗なおねーさんをはべらせたいだけだったのか?(それはそれで、欲望に正直でよろしいと思う。きれいごとを並べられるよりも。) 検非違使隊の一人にしつこく殴られて「ありがとうございました」と言わされた辺りで、「誰にも命令されない立場になってやる!」と思ったのかも。(←このときのライがまた何とも言えない表情だったんだよなぁ。偉くなって仕返しした時はちょっとスッとした。)
ボロをまとって落ち武者狩りをして、村の連中に追い掛け回されて逃げ惑って、キンタに助けてもらっていたのが、立派な衣装を身にまとって、高貴な女性にも惚れられて、キンタに頼らずとも十分強くなってしまったんだから、人間変わっちゃうよな。
それにしても、オボロは上手い具合にターゲットを選んでるなぁ。ヤスマサ将軍だったら誘いには乗らなさそうだもん。(シキブの誘いにはのったけどな。)

マダレがツナを助けたワケ。
ツナが妹だったからって、急にいい人の側に回るのが納得いかなかった。部下を使ってライを出世させてるわけだし、裁きの場で証言したラジョウの女性は口封じに殺されちゃってるわけだし、長年の敵を妹だからって助けるのかというのも… うーん。
ライがキンタを捨てた時点で、マダレはライを見限ってる感じがした。だから、袂を分かつキッカケがほしかったのかな。それと、「俺はあそこまで外道じゃない」と思いたかったのかな。ライの敵に回ったけど、改心したというわけじゃなさそうだ。

DVDの発売はいつかなぁ。
もう一度(といわず何度でも)、ゆっくり見たい。
今はまだぐだぐだと考えているけれど、3月になれば鬼より天狗(というより薬屋さん)で頭がいっぱいになるだろう。(←単純)