年 (平成年)

四月浪花花形歌舞伎 松竹座

4月1日(日)〜4月8日(日)

配役

第一部(11:00開演)
敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがちゃやむら)11:00-12:35/12:45-14:00
安達元右衛門、片岡造酒頭:五代目 中村翫雀
人形屋幸右衛門:初代 片岡進之介
東間三郎右衛門:六代目 片岡愛之助
安達弥助:四代目 坂東薪車
早瀬源次郎:二代目 中村亀鶴
染の井:初代 片岡孝太郎
早瀬伊織:三代目 中村扇雀

第二部(14:45開演)
一、雨の五郎(あめのごろう)14:45-15:00
曽我五郎時致:初代 片岡進之介

二、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)かさね 15:20-16:10
かさね:初代 片岡孝太郎
与右衛門:六代目 片岡愛之助

三、曽根崎心中(そねざきしんじゅう)16:30-18:05
天満屋お初:三代目 中村扇雀
平野屋徳兵衛:五代目 中村翫雀
油屋九平次:二代目 中村亀鶴
平野屋久右衛門:五代目 坂東竹三郎

第三部(19:00開演)
夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)19:00-21:00
団七九郎兵衛:六代目 片岡愛之助
お辰:三代目 中村扇雀
一寸徳兵衛:二代目 中村亀鶴
玉島磯之丞:四代目 坂東薪車
義平次:六代目 嵐橘三郎
おつぎ:五代目 坂東竹三郎
お梶:初代 片岡孝太郎
釣船三婦:五代目 中村翫雀

筋書
愛之助丈関連
26ページ:インタビュー、素顔写真(カラー)、扮装写真「夏祭浪花鑑」団七九郎兵衛(カラー)
出演者一覧の素顔写真が変更になっている。
料金
一等席:8,000円
二等席:4,000円
三等席:2,000円
その頃、他の劇場では…
歌舞伎座
御園座
南座

雑誌
『演劇界』2007年4月月報
愛之助丈関連
12〜13ページ:舞台写真「敵討天下茶屋聚」東間三郎右衛門(モノクロ 2枚)
13ページ:舞台写真「色彩間苅豆」与右衛門(モノクロ 2枚)
15ページ:浪花花形歌舞伎の劇評
16ページ〜裏表紙の裏:舞台写真「夏祭浪花鑑」団七九郎兵衛(モノクロ 6枚)

感想
第二部
6日に前方花道寄りで観劇。

「雨の五郎」

以前、テレビで吉右衛門丈が踊っているのを見たけど、それとは何か違っていたような…? もう少し長かったような気がするんだけど、気のせい?
進之介丈はとっても歌舞伎チックなお顔で、すごく嬉しそうに踊っていた。(どこか妙な感じもしたけど、踊りはよくわからないのでどことは言えない。)
蝶模様の着物の下は松模様だったけど、これは役者さんによって違うんだろうか? 松嶋屋さんだから松なのかなぁ。そういえば、着物の袖を引き抜くのがあまりスムーズじゃなかったな。
あと気になったのが、手紙を広げて読むときに下半分が向こう側に折れ曲がっていた。それじゃ、読めないぞ(笑)。でも、そういう振り付けなんだろうか?

「色彩間苅豆」

与右衛門(愛之助丈)というのは、極悪非道のひどいヤツなんだと思い込んでいたけれど、実際に見たら「意外と可愛いかも」と思ってしまった。かさね(孝太郎丈)に切々と口説かれるときに、こんな顔→(ノД`)で聞いていて、「ボク、困っちゃーう」という感じだったから… 確かにひどい男ではあるのだが。
最初、かさねばかりが踊っていて、与右衛門はじっと座っている場面が多かったが、最後はすごい運動量だった。 かさねの怨念に引き戻されて、翻弄されて、舞台上でじたばたぐるぐる… 女性の怨念、おそるべし。

顔が醜く変わったかさねは怖かった。
特に、髪を振り乱してからがめちゃくちゃ怖かった。怖いから凝視したくないんだけど、ついつい、ちらっと見てしまう。(両手で顔を覆って、指の隙間からそっとのぞき見るような感じ。)
夢に出てきたらイヤだなぁ。
何も、桜が満開の季節にこんな怖い話やらなくてもいいじゃないか。まあ、おかげで愛之助丈の与右衛門を見ることができたわけだけど。(松竹さん、怪談の季節に再演してくださいな。)

「曽根崎心中」

一度見てみたかった有名な演目。
徳兵衛(翫雀丈)が九平次(亀鶴丈)に騙されて恥をかかされる場面が可哀相で可哀相で… が、物影に逃げて様子をうかがう九平次がおかしくて、少し笑ってしまった。九平次はとても嫌なヤツなのだが、演じる亀鶴丈の人徳か、どこか憎みきれない雰囲気がある。
お初(扇雀丈)が足を出して徳兵衛の意思を確認するところで笑いが起きてたけど、これって笑うとこなんだろうか? 出てきた涙が引っ込んでしまった。お初は確かに綺麗なんだけど、気が強そうで哀れっぽさが薄いかな。

私の隣にお年を召した紳士が座っていた。浄瑠璃の方が出てくると、小さく拍手をする仕草(音は出ていない)をしていたので、きっと通の方なんだろう。その紳士が一度だけ声を上げた。どうも憤慨している様子。何だろうと思ったら… あれ? 竹三郎丈がさっきと同じ台詞を繰り替えしてるよ。
その後、何事もなかったかのように舞台は進んだけど、終演後の周り客の会話からするとハプニングだった模様。そういうこともあるのね。

赤飯まんじゅう↓

「染五郎丈のおめざ」という言葉にひかれて(笑)、幕間に食べてみた。
赤飯好きだし、あっさりして美味しかった。

第三部

6日に1階中央で観劇。

「夏祭浪花鑑」
去年の7月に、藤十郎丈襲名披露で観た演目なので、そのときのことを思い出しながら見た。
団七(愛之助丈)がむさくるしい姿で登場するとわかっていても、やっぱり衝撃だった。「えー、アレが愛之助丈!?」と思ったけど、さっぱりして出てきた姿はやっぱり愛之助丈だった。(←当り前) 浴衣の襟の部分に五枚銀杏の模様がついていて、すごく洒落ている。
今回は徳兵衛(亀鶴丈)と背丈がつりあっていて、バランスがいいなぁと思った。仁左衛門丈の徳兵衛は、きっとかっこよすぎだったんだな。だって、喧嘩の時に団七がどんな動きをしていたか記憶にないもん。(←要するに、徳兵衛ばかり見ていた。)
お梶(孝太郎丈)は姉さん女房っぽいと思った。愛之助丈と孝太郎丈が夫婦役だと、どうしてもそう思えてしまう。(刷り込み?) 孝太郎丈はこういうキリリとしたお役が似合うと思う。

三婦(翫雀丈)は、優しいお顔立ちのせいか侠客っぽく見えなかったなぁ。去年の我當丈の三婦と比べると口数が少なめかも。我當丈が関西弁でブツクサ言っているのが面白かったんだけどな。(焼きもちをやくおつぎ(竹三郎丈)に「やくな、やくな。暑いがな」と云う場面が好きだった。)

磯之丞(薪車丈)は見た目はかっこいいんだけど、「つっころばし」という感じがしなかった。とんっと押してもつっころびそうに見えない。琴浦(千壽郎丈)は可愛かった。
おつぎは7月と同じ配役で、今回も「ダンナ様ラブラブ」な感じが微笑ましかった。お辰(扇雀丈)はかっこよかったけど、ブツブツ文句を言いすぎな感じがした。ぐっとこらえて顔に傷を付けた方がかっこいいと思う。 7月では三婦の家がぐるっと回って場面転換したが、今回それはなかった。時間短縮のためかな。

最後の殺し場。
すごかった。愛之助丈大熱演だった。大向こうもビシバシかかって、気持ちよかった。
義平次(橘三郎丈)にいびられまくって、やっぱり出ました、こんな顔→(ノД`)。毎回言ってるが、愛之助丈のこの顔→(ノД`)大好き。
舅を殺すと覚悟を決めてからの形相が恐ろしいんだけど、目が離せなくなってしまった。
それにしても、見得を切る時にあんなにクワッと目を見開いたらドライアイにならないのかしらん。ドライアイ、辛いんだよね。 泥まみれの義平次が団七の脚を捕まえるところがすごく怖かった。かさねとセットで夢に出てくるんじゃないかと思ったくらい。 結末はわかっているんだけど、祭囃子が聞こえてきたら、「団七、早く早く! 見つかっちゃうよ!」とひやひやしながら見てしまった。

見終わった後、ぐったりと疲れ果ててしまった。私は見ているだけなのに、ゼエゼエハアハア言いそうなくらいに疲れた。
あの残虐で壮絶な場面に引き込まれ、ひとつひとつの動きを必死になって目で追っていたら、そりゃ疲れるよなぁ。寿命縮んだと思う(笑)。寿命縮んでもいいから、もう1回観たかった。(松竹さん、夏祭りの季節に再演してくださいな。)
この物語自体は好きじゃないけど、愛之助丈の団七でなら、また観たい。
この日はホテルに泊まったんだけど、なかなか寝付けなかった。(かさねも義平次も夢に出てこなかったけどね。)

第一部

7日に1階中央で観劇。

「敵討天下茶屋聚」
筋書であらすじを読んだ時はさっぱりわからなかったが、実際に劇を見たらわかりやすかった。元右衛門(翫雀丈)のキャラクターに一貫性がないように感じたが、これはそういうものらしい。
翫雀丈はいきいきと小悪党を演じているように見えた。いろいろと小芝居をしていて、見ていて楽しかった。特に、お酒を飲みたそうにしている顔が面白かった。「まだある、まだある」とか、「まだ死なない」とか、吉本新喜劇みたいだと思った。見ていて気持ちのいい場面じゃないはずなのに、おかしくて笑ってしまった。
そうそう、翫雀丈に「オトワヤ!」とかける人が… やや間を開けて訂正するように「ナリコマヤ!」とかけた人がいて、少しおかしかった。

東間(愛之助丈)は笠をかぶって登場。
早くお顔が見たくてうずうずした。私がゴルゴだったら(←?)、速攻であの笠を打ち落とすところだ。笠を取ると、白塗りの悪そうなお顔が… あまりにかっこよくて、思わずため息が出そうだった。素顔はぽわんとして優しそうなのに、化粧ひとつであんなに悪そうな顔になるんだな。化粧って大事だ。

伊織(扇雀丈)は白塗りの二枚目。扇雀丈は立役の方が好きかも。
源次郎(亀鶴丈)は前髪の少年(だと思う)。小悪党の役もいいけど、こういう頼りない感じの役もいいなぁと思った。
弥助(薪車丈)が兄思いのいい弟で、薪車丈はつっころばしよりもこういうお役の方が似合うと思った。誠実そうだし、すらっとしててかっこいいのだ。

東間の再登場時の着物が渋かった。色の名前がわからないのだけど、薄い赤紫かえんじか、とにかく素敵だった。最後の衣装(敵を討たれる時)は黒とグレーの裃姿で、これまたすごくかっこよかった。
…が、東間、弱っ!!
伊織に斬られた手を痛そうにさすって花道を退場した時に、「ひょっとして… ヘタレ?」と思ったけど、本当にヘタレだったとは。
相手は3人がかりとはいえ、前髪の若者や女性を相手に情けない。いや、染の井が強すぎるんじゃないか? 元右衛門にも東間にも、まず一太刀浴びせたのは染の井だ。
祇園には弥助と源次郎を売って(←いや、売れないから)、伊織と染の井で敵討ちに出かけたら、こんなに苦労しなかったんじゃないの? 孝太郎丈は白装束がすごく似合ってた。元右衛門も言っていたが、「よっ! 松嶋屋!」という感じ。亀鶴丈の白装束も素敵だった。進之介丈が幸右衛門役で登場したのが、ラスト30分。二部といい、出番少ないな。(これでお給料同じだったりするんだろうか、と下世話なことを考えてしまった。)
最後、東間がダイナミックに倒れ、片岡造酒頭(翫雀丈)が天晴れと扇を広げて幕。

思っていたよりも面白いお芝居だった。
物語はとても面白かったのだけど、一つ不満がある。それは、幕間が1回、それも10分しかなかったこと。ちょうどお昼の時間なのに、ご飯を食べられないぞ。お手洗いは混むし、もっと考えてほしいなぁ。食事の必要ない二部には20分の幕間が2回もあるのに。
一部と二部を逆にしたら… と、思ったけど、「かさね」を観た後にご飯はあまり食べたくないかも。

それにしても、勿体無い。
この公演が8日間だけだなんて!!
2週間あったら2回は見に行ったし、1ヶ月あったら3回は見に行ったのになぁ。

そして、こんなときに限って、「演劇界」が休刊…
終演後、ロビーで一眼レフを手にしている女性陣を見かけたので、写真は撮っていたと思われる。
復活したら、ぜひ浪花花形歌舞伎とこんぴら歌舞伎の舞台写真を載せてほしい。