年 (平成年)

六月大歌舞伎 歌舞伎座

6月2日(土)〜6月26日(火)

配役

昼の部(11:00開演)
一、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)11:00-11:47/12:07-14:03
  小松原

久我之助清舟:四代目 中村梅玉
采女の局:十一代目 市川高麗蔵
宮越玄蕃:六代目 中村松江
太宰娘雛鳥:二代目 中村魁春

  花渡し・吉野川
太宰後室定高:四代目 坂田藤十郎
久我之助:四代目 中村梅玉
雛鳥:二代目 中村魁春
荒巻弥藤次:二代目 中村亀鶴
蘇我入鹿:八代目 坂東彦三郎
大判事清澄:九代目 松本幸四郎

二、閻魔と政頼(えんまとせいらい)14:33-15:08
鷹匠政頼:二代目 中村吉右衛門
赤鬼:五代目 中村歌六
青鬼:三代目 中村歌昇
閻魔大王:五代目 中村富十郎

三、侠客春雨傘(きょうかくはるさめがさ)15:23-15:48
  藤間 齋 初お目見得

大口屋暁雨:七代目 市川染五郎
逸見鉄心斎:八代目 坂東彦三郎
傾城葛城:七代目 中村芝雀
傾城薄雲:十一代目 市川高麗蔵
幇間善孝:三代目 松本錦吾
和泉屋女房お吉:二代目 中村吉之丞
番新豊花:初代 中村歌江
和泉屋新兵衛:八代目 大谷友右衛門
高麗屋齋吉:初お目見得 藤間齋(染五郎長男)
大尽高砂屋梅玉:四代目 中村梅玉
鳶頭仁左衛門:十五代目 片岡仁左衛門
播磨屋吉右衛門:二代目 中村吉右衛門
高麗屋幸四郎:九代目 松本幸四郎

夜の部(16:30開演)
一、元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)
  御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)16:30-18:01

徳川綱豊卿:十五代目 片岡仁左衛門
富森助右衛門:七代目 市川染五郎
中臈お喜世:七代目 中村芝雀
上臈浦尾:二代目 市村萬次郎
新井勘解由:五代目 中村歌六
御祐筆江島:二代目 片岡秀太郎

二、盲長屋梅加賀鳶(めくらながやうめがかがとび)18:31-20:01
竹垣道玄、天神町梅吉:九代目 松本幸四郎
女按摩お兼:二代目 片岡秀太郎
魁勇次:三代目 中村歌昇
昼ッ子尾之吉:六代目 片岡愛之助
盤石石松:六代目 中村松江
数珠玉房吉:六代目 市川男女蔵
御守殿門次:二代目 中村亀鶴
妻恋音吉:四代目 中村種太郎
小間使お朝:三代目 澤村宗之助
女房おせつ:五代目 澤村鐵之助
家主喜兵衛:三代目 松本錦吾
天狗杉松:六代目 片岡市蔵
虎屋竹五郎:十一代目 市川高麗蔵
伊勢屋与兵衛:十七代目 市村家橘
御神輿弥太郎:八代目 大谷友右衛門
雷五郎次:六代目 片岡芦燕
春木町巳之助:五代目 中村歌六
日蔭町松蔵:二代目 中村吉右衛門

三、新歌舞伎十八番の内 船弁慶(ふなべんけい)20:16-21:19
静御前、平知盛の霊:七代目 市川染五郎
源義経:七代目 中村芝雀
舟人岩作:六代目 中村松江
舟人浪蔵:六代目 市川男女蔵
舟人梶六:二代目 中村亀鶴
舟長三保太夫:六代目 中村東蔵
武蔵坊弁慶:九代目 松本幸四郎

筋書
愛之助丈関連
舞台写真:「盲長屋梅加賀鳶」昼ッ子尾之吉:2枚
60ページ:「花競木挽賑」内インタビュー
舞台写真
愛之助丈は「盲長屋梅加賀鳶」昼ッ子尾之吉が3種類
料金
1等席:15,000円
2等席:11,000円
3階A席:4,200円
3階B席:2,500円
1階桟敷席:17,000円
筋書:1,200円
その頃、他の劇場では…
国立劇場
巡業
中日劇場
博多座
シアターコクーン

雑誌
『演劇界』2007年6月月報
愛之助丈関連
4ページ:舞台写真「盲長屋梅加賀鳶」昼ッ子尾之吉(モノクロ 1枚)
裏表紙の裏:舞台写真「白雪姫」キツネ(モノクロ 2枚)

感想
昼の部。

お目当ての愛之助丈の出番は約10分らしい。(歌舞伎座だと泣けるほど出番が短い…)
せっかく歌舞伎座まで行くのだから、齋ちゃんお初お目見えを幕見しようと少し早めに家を出た。早く着きすぎたので、奥村書店さんに行く。
舞台写真の入ったアルバムを見てみたら、女形時代の愛之助丈と翫雀丈のツーショット(1999年9月の「紅かん」だった)を発見。他にも雑誌などを買って、幕見席販売開始30分前に歌舞伎座へ。

30分前にもかかわらず、すでにたくさんの人が並んでいた。立ち見だったけど、お芝居の時間が長くなかったので苦にはならなかった。歌舞伎モバイルに割引クーポンがあったので、200円引きで見ることができた。
幕見席は4階だというので、「どのくらい階段を登らないといけないんだろう?」と思っていたが、意外とすぐについてしまった。


↑立ち見席からの眺め。
舞台上の豆高麗は豆粒大にしか見えない… ので、オペラグラスは必須。

侠客春雨傘

23日に一幕見立ち見席で観劇。
幕が開くと、舞台には美しい傾城葛城(芝雀丈)が座っている。そこへ暁雨(染五郎丈)がやってくる。黒の着物姿がかっこいい。スッポン辺りで傘を開いてビシッと決める。しかし、幕見席からは顔くらいしか見えないので、「早く舞台に上がって〜!」と思いながら見ていた。
話はずれるが…
染五郎丈を見ると、『源氏物語』で光源氏について書かれていた文章を思い出す。「若い頃は細かったけど、今は肉がついてきていい感じ(かなり意訳)」という文章だ。
若い頃の細い姿より、今の少し貫禄がついた姿の方がいいと思う。(若い頃の歌舞伎を見たことのない私が言うのも何だけど。)

暁雨と葛城が話しているところへ、幸四郎丈に手を引かれて齋ちゃん登場。スッポンの辺りでちょこんとおじぎ。可愛い〜!!
その後ろからは、梅玉丈、仁左衛門丈、吉右衛門丈がついてくるという、なんとも豪華な舞台。幸四郎丈が3人を紹介する間も、齋ちゃんはちょこん、ちょこんとおじぎをしている。
これだけの2枚目が舞台にずらりと並んでいるのに、観客の視線は齋ちゃんに集中。(仕方ないよね。)
「いつ役者にしてもいいですね」「俺が贔屓にしている市川染五郎にそっくりだ!」などという台詞もあった。

齋ちゃんはご挨拶代わりに弁慶の飛六方?を披露。ツケ打ちさんがツケを打っていて、なかなか本格的。
幸四郎丈「本人、弁慶のつもりでございます(笑)」
とても微笑ましくて、観客も舞台上の役者さんもにこにこしているのだが、ただ一人、染五郎丈だけは心なしか心配そうな表情をしていた。お父さんは大変だ。

幸四郎丈は「この子が弁慶をつとめるのは、二十年、三十年先になると思いますが、皆様その時までお元気で。どうぞ、歌舞伎座までお越しください」みたいなことを言っていた。
梅玉丈の音頭で一本締めをして齋ちゃんは退場。齋ちゃんは退場時に客席に何度も手を振っていて、なかなかの役者ぶり。30年後に弁慶を観に行って、「お初お目見えの飛六方を見たんだっけ…」と感慨にふけりたいものだ。

齋ちゃん退場後、鉄心斎(彦三郎丈)がやってきて、暁雨と一触即発の危機。それを葛城がおさめて幕。


夜の部。

まずは舞台写真を買いに行く。愛之助丈は3枚。歌舞伎座の舞台写真はピントがちゃんとあっているのが嬉しい。(他の劇場の写真より一回り小さいサイズだからぼやけないのか?) 暗い中に白塗りのお顔が綺麗に浮かんで見える。
それから、カウンターで「幕乃内」を予約して、「京嵯峨野竹路庵」でわらび餅の黒と白をお土産に購入。私はこのわらび餅がとても好きで、買って帰るのを楽しみにしていたのだ。(父も「美味かった」と言っていた。) 今回は売店をじっくりと見てまわったが、結局は見てるだけで終わった。ペンギン柄の手拭とミニタオルにはかなり心引かれたんだけど。

23日に前方花道寄りの席で観劇。

御浜御殿綱豊卿

去年の11月に梅玉丈の綱豊卿、翫雀丈の助右衛門で拝見した。そのときも感動したけど、今回もよかった。どちらがどうというのではなく、どちらもよかった。

幕が開くと、腰元達が綱引きをしている。そこへやたらと恰幅のよい腰元(千蔵丈)がやってきて助太刀に加わると、あれよあれよという間に勝負がついてしまった。後に残った腰元が「くやしーっ!」とか叫んでいて、面白かったな。
名題下さんに関する本を読んだ後だったので、メインの役者さんが出ていない時は筋書でお名前を確認したりした。…が、お顔とお名前が一致するようになるまでは、まだまだ時間がかかりそう。

浦尾(萬次郎丈)がお喜世(芝雀丈)に「文を出せ」とせまり、江島(秀太郎丈)が助けに入る場面で、「意地悪ババア」という台詞がなかったのが残念。そのときの浦尾の表情が見てみたかった。
江島がお伊勢参りに報謝をあげる場面は前見た時にはなかったような…? 一度奥に引っ込んだので、「あれ? 綱豊卿(仁左衛門丈)に報謝をねだらないの?」と思ったら、再び戻ってきた。よかった〜。私はここで殿が「銭というものを見たことがない」と言って、お伊勢参りに「それでよく旅がなるものだ(←だっけ?)」と言われる場面が好き。お喜世といちゃくらこいて、江島が目のやり場に困ってる様子も好き。

殿が勘解由(歌六丈)相手に「討たせたいのぅ」としみじみ語る場面をはさんで、助右衛門(染五郎丈)登場。2人の台詞の応酬が気持ちよかった。長台詞が決まるたびに拍手が起きていたけど、ちょっと拍手しすぎなんじゃ…(拍手したい気持ちはわかる。) 助右衛門を挑発して笑ってみせる殿がとっても素敵。当たり前なのだが、齋ちゃんを目を細めて見ていた時の笑顔と違って、爽やかなんだけど少し意地悪っぽくて、かっこよかった。
助右衛門が敷居を越えて、2人が見つめあう場面は泣けたなぁ。この後、猛る兄を必死で止めるお喜世が可愛かった。お喜世は助右衛門が無礼を口にするたびに「まーあ!」という表情をするのだが、それすら上品に見えた。
「俺に憎い口を利きおったぞ」と言い捨てて、笑いながら去っていく殿はとことん素敵だった。

能の場面は衣装も舞台装置も綺麗。後シテを舞う場面も見たいなーと思う。
「一度見ているお芝居だし、台詞劇だから飽きないかしら」と思っていたが、今回も見ごたえがあって面白かった。


幕間には、地下食堂「花道」で「幕乃内」を食す。
あたたかいお吸い物がついているのが嬉しい。量もちょうどよくて、味もまあまあ美味しかった。
この幕間で売店の販売が終了だというので、「めで鯛焼き」は諦めた。一度食べてみたいのだが、次に歌舞伎座に来れるのはいつだろう?

盲長屋梅加賀鳶

筋書でこの演目だけルビを振っていないということに気付いた。舞台写真のページもそう。タイトルに放送禁止用語(←?)が入っているから? こういうのって、野暮だと思うんだけど、大人の事情とやらで仕方ないんだろうなぁ。(パソコンでも漢字変換できないようになってるしね。)

鳶達が出入りに行こうとしているところからお芝居が始まる。
愛之助丈は白塗りで前髪姿。
一人だけ白塗りなので目だってお徳かも。愛之助丈はけっして背が高くはないけれど、鳶さんの中では高い方だったので、ちょっと妙な感じがした。(一人だけ見ると、「白塗りも前髪も似合ってて素敵〜♪」と思えるんだけどね。←超絶贔屓目)
思っていたよりも台詞が長くて嬉しかった。自分で「頭数」とか「ナマな奴だと言われるが」とか言っているから、あまりケンカは強くないのかな? 自ら「昼ッ子」と名乗るところが何だか可愛い。
梅吉(幸四郎丈)と松蔵(吉右衛門丈)がその場をおさめ、鳶達は退場。もうちょっと長い間見ていたかったなぁ。
近くの席の男性が「愛之助、久しぶりに見たなぁ。関西ばっかりだなぁ」と呟いていたっけ。

場面はがらりと変わって土手。
道玄(幸四郎丈)が人を殺して金を奪い、松蔵(吉右衛門丈)に煙草入れを拾われる。
その後、盲長屋に場面が移る。もう、見るからに貧乏長屋。私はきらきらと派手な舞台が好きなので、少しガッカリした。(筋書の写真を見て、「無理してでも『吉野川』を見ておくべきだったかな」と思った。)

道玄は妻・おせつ(鐵之助丈)の姪・お朝(宗之助丈)が主人から大金をもらったというので、「主人に手をつけられただろう」とお朝をせめる。
そして、お兼(秀太郎丈)と二人で主人をゆすりに出かける。偽の書置きで主人をゆすっているところへ松蔵がやってきて、土手で拾った煙草入れと質屋の書面を出して2人を追い払う。
松蔵が粋でかっこいいのに対し、道玄は小悪党という感じでかっこ悪い。うーん、幸四郎丈にこういう役は似合わないと思うのだが… 「幸四郎丈の三枚目は見たくない」という私のイメージのせいかもしれないけど、小悪党にしては迫力があって変な感じ。 店の外に出て、「早く帰ろー」と道玄に手招きするお兼の仕草が可愛かった。

悪事がばれて、お兼はお縄にかかり、逃げ出した道玄も追っ手に囲まれる。
捕まるまでがコミカルなんだけど、コミカルな幸四郎丈を見慣れていないせいか、「これ、笑っていいのかな…?」という気分になってしまった。
梅吉はかっこよかったんだけどなぁ。で、梅吉はどこへ行っちゃったんだろう?

船弁慶

去年の醍醐寺薪歌舞伎で、富十郎丈の船弁慶を拝見した。
が、豚に真珠、猫に小判、歌舞伎初心者に人間国宝の舞… と、いうわけで、そのありがたみを理解できるレベルにはなかった。(観客がポンチョを着るガサガサという音や、一時中断で雨の中寒い思いをしたことの方が印象に残っている始末。)
今回は一時中断なしで見られるので(←当たり前)、楽しみにしていた。

まずは弁慶(幸四郎丈)が登場。道玄で最後まで出ていて、最初から弁慶で登場だなんて大変そう。「どこかで見たお顔が…」と思って筋書きを見たら、『三響會』で拝見したご兄弟が鼓を打っていた。
それから、義経(芝雀丈)がやってくる。上品で綺麗な義経だった。
静御前(染五郎丈)はすごく綺麗だったんだけど、口を開いたら玉の井みたいな声でちょっとビックリ。舞踊はよくわからないので、ぼんやりと見ていた。途中、眠気に襲われたが、なんとか堪えた。
静と別れた後、舟長(東蔵丈)が舟人(松江丈、男女蔵丈、亀鶴丈)を引き連れて舟をこぐ。

そこへ知盛の霊(染五郎丈)がやってきた。人間じゃないから、スッポンから上がってくるのかと思っていたら、音を立てずに花道を歩いてきた。(チャリーンという音もなかったように思う。)薙刀を振り回して、なかなかの迫力。悪霊にしてはハンサムだけど(笑)。
最後はぐるぐると回りながら花道を引っ込む。花道で薙刀を振り回されるとちょっと怖い。最後、薙刀が壁にぶつからないかと余計な心配をしたが、そんなことはあるはずもなく、知盛の霊は幕の向こうへと去っていった。最後までよく見える席でよかった。

すごく久しぶりに歌舞伎を観た気がする。(ちゃんとした演目を見るのは、浪花花形以来かな。)
次は7月松竹座。早く行きたい。

おまけ。

なんでもかんでも「可愛い」というのはよくないが、知盛のツノはなんか可愛いなぁと思ってしまう。