10日の第二部を前方上手側、11日の第一部を中央上手側にて観劇。
台風と地震でどうなるかと思ったが、2日間とも無事に楽しめた。
雨で気温が低かったのか、冷房を増設した効果か、客席は去年より涼しかった。
去年と変わらず、お茶子さんやスタッフの方が親切で感じよかった。
車引
上方式の演出のため、野遠見の背景。
梅王丸(愛之助丈)が花道から、桜丸(壱太郎丈)が仮花道からそれぞれ登場。
“仮花道”と言っても花道が作られているわけではなく、客席の通路をそのまま歩いて舞台に上がる。
升席なので、通路近くの席だと深編笠の中のお顔が下から見える。
がっしり逞しい梅王丸とほっそり華奢な桜丸の姿が対照的。桜丸に隈がないのも上方式なんだとか。
梅王丸は足の親指をぴんと立てているんだなぁ、と思って見ていた。
背景がするするっと引かれて、時平(男女蔵丈)の乗った牛車とお供の者達が現れる。
梅王丸、桜丸が駆けつけ、牛車を止めようとすると、杉王丸(千次郎丈)が出てきて邪魔をする。今回は上方歌舞伎塾の卒塾生さん達が結構いいお役を演じていた。
そして、松王丸(薪車丈)が登場。
松王丸の着物は赤地に松の柄で、これも上方式だそうだ。小屋にかかっている絵(筋書にも載っている)が東京式なので、比べると面白い。
3兄弟が押し合いをし、花道で見得を決める。
更に舞台で押し合い、牛車の中から時平が出てくる。やっぱり時平は不気味。
最後は時平の前に三兄弟が並んで舞台がいっぱいになる。
役者さんは汗だらだらで大変そうだけど、豪華な衣装に「いかにも歌舞伎!」な演目が見られて満足。
藤娘
客席を暗くして、パッと明るくするかと思いきや、普通に幕が開いた。舞台後方に鳴り物さん達が座っている。
狭い舞台の真ん中に木を置いたら、それだけでいっぱいになってしまうんだろうなぁ。
藤の精(壱太郎丈)は花道から登場。
あまりの暑さに、壱太郎丈は汗だくで、額や首からぽたぽたと汗が零れていた。
客席はそれほど暑く感じなかったが、舞台の上はライトが当たって大変なんだろうなぁ。
可愛らしい藤娘だった。
弁天娘女男白浪
浜松屋見世先
南郷(男女蔵丈)と弁天小僧(愛之助丈)が花道から登場。
愛之助丈は少し痩せたのか、お顔回りがすっきりしていて、綺麗なお嬢様に見えた。さっきまで梅王丸を演じえていた人とは思えない。ただ、「首は細せぇが…」と言った時は、「いや、細くない…」と思ってしまったが。(←おい)
これなら、梅川もできそう。
男女蔵丈は江戸の役者さんだけあって、すっきりかっこよかった。
番頭(松之助丈)がお嬢様の好きな役者を当てる場面で、浅草で見た時は弁天役者と南郷役者の2人の名前しか出さなかったけど、今回は五人男を演じる役者さん全部の名前を出していた。
番頭さんがいい味を出していて、表情や動きが面白かった。
以前は気付かなかったが、今回は弁天は山形屋の緋鹿の子を懐から出してるところも見えた。
鳶頭(松次郎丈)が江戸っ子っぽくてかっこよかった。男女蔵丈を相手に堂々としていて良かったなぁ。
強請が成功するかと思いきや、日本駄右衛門(翫雀丈)が登場し、正体がばれる。
そして有名な「知らざあ言って聞かせやしょう」の台詞になる。
これが聞きたくて永楽館に行ったので、嬉しかったなぁ。愛之助丈の弁天なんて、次はいつ観られるかわからないもんね。
愛之助丈の江戸弁は特に気にならなかった。(ネイティブの江戸っ子がどう思うかはわからないが。)
弁天と南郷が「何? けぇれって?」とかぼそぼそ話していたが、以前見た時は駄右衛門がキセルでコンコンと指示を出して、南郷がそれを頷きながら見て、あっさり帰っていたような気がする。(記憶違いかも。)
稲瀬川勢揃
鳥屋から傘が出てきて、五人男が花道に登場する。
役者さんが花外を向くと、二階席の目の前に役者さんの顔がくる。「いいなー。あの席で見たいなぁ」と思ってしまった。
浜松屋での3人の他に、男前の忠信利平(薪車丈)、なよっと色っぽい赤星十三郎(壱太郎丈)も揃い、舞台はいっぱいいっぱい。
捕り手さんが出てくると、更にぎゅうぎゅう。
でも、それが“芝居小屋”という感じで、逆に良かったと思う。
そうそう、駄右衛門の下駄が妙に高かったのに気付いてしまった(笑)。
カーテンコール
10日、拍手が鳴り止まず、幕が開いて五人男が三方礼。
翫雀丈が日本駄右衛門の格好のまま、にっこり笑って手を振るのが可笑しかった。笑う日本駄右衛門なんて、初めて見たぞ。
11日、千穐楽のため、お茶子さんから出演者(五人男)に花束贈呈と、出演者のご挨拶。
皆さん口々に、「客席と近い」「いい芝居小屋」とおっしゃっていた。そして、とってもいいことをたくさん仰っていたと思うのだが、ハイテンションのため記憶が飛んでいる。(←年のせい?)
だいたいこんなことをおっしゃったというのを、覚えている範囲で箇条書き。
翫雀丈
・「日本駄右衛門の格好でニヤニヤするのも変ですが…」と前置き。
・去年は出演しなかったが、息子の壱太郎が出演していた。
・でも、見に行かなかった。→曰く、「冷たい親です(笑)」
・話を聞いて、どうしても出たいと思い、今年は出演できて嬉しい。
愛之助丈
・台風、地震の中ありがとうございます。
・お茶子さん、スタッフさん、ボランティアの方、豊岡市の方への感謝。
・去年はとても暑かったが、今年は冷房をたくさんつけてもらった。
・周りの人に宣伝して、次はお友達を連れてきてください。
薪車丈
・いいお役をやらせてもらえて嬉しい。
・感激屋さんなのか今にも泣きそうで、ご挨拶は短め。
壱太郎丈
・去年は誕生日を祝ってもらった。
・あんなにたくさんの人にハッピーバースディを歌ってもらったのは初めて。
・来年の誕生日もここで迎えたい。
男女蔵丈
・関東の人間なので、出石がどういうところなのか全く知らなかった。
・「すごく暑い」と聞かされて、どんなところだろうと思っていた。
・この芝居小屋が大好きになった。
・これからも歌舞伎を続けて行くことが大事。
最後は翫雀丈の大阪締め。
最初に練習をした。
「打ーちましょ(パン、パン)。も一つせ(パン、パン)。祝うて三度、よよいのよい(で、手拍子3回)」
最後のよよいのよい、が揃わず。
翫雀丈「最後が合わないんですよ(笑)」
無事、手も締めて、出演者の三方礼で幕。
楽しかった〜。
ぜひ来年も歌舞伎をやってほしい。