年 (平成年)

永楽館大歌舞伎 永楽館

11月5日(金)〜11月10日(水)

配役
第一部(11:30開演)/第二部(16:00開演)
一、片岡十二集の内 近頃河原の達引(ちかごろかわらのたてひき)
  堀川与次郎内の場

猿廻し与次郎:六代目 片岡愛之助
遊女お俊:六代目 上村吉弥
井筒屋伝兵衛:四代目 坂東薪車
稽古娘おつる:初代 上村吉太朗
母おぎん:五代目 坂東竹三郎

二、お目見得 口上(こうじょう)

三、義経千本桜 道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
佐藤忠信 実は源九郎狐:六代目 片岡愛之助
逸見の藤太:四代目 坂東薪車
静御前:初代 中村壱太郎

筋書
愛之助丈関連
14ページ:出演者紹介 片岡愛之助(舞台写真あり、カラー。「元禄忠臣蔵」徳川綱豊卿、「妹背山婦女庭訓」金輪五郎)
15ページ:舞台写真「義賢最期」木曽先生義賢(カラー)
料金
A席:10,000円
定員:330席予定

筋書:1,000円

その頃、他の劇場では…
新橋演舞場
平成中村座
八千代座
巡業
システィーナ

雑誌
『演劇界』2011年1月号→演劇界 2011年 01月号 [雑誌]
愛之助丈関連
88ページ:舞台写真「近頃河原の達引」猿廻し与次郎(モノクロ 3枚)
89ページ:舞台写真「口上」(モノクロ 1枚)
89ページ:舞台写真「道行初音旅」佐藤忠信実は源九郎狐(モノクロ 4枚)
94ページ:舞台写真「連獅子」狂言師右近 後に親獅子の精(モノクロ 2枚)←利根運河歌舞伎
108ページ:永楽館大歌舞伎の劇評
137ページ:新春浅草歌舞伎の紹介(1/2ページ)

感想

6日夜の部を前方中央、7日昼の部を前方花道寄りで観劇。

近頃河原の達引
舞台は貧乏長屋、竹三郎丈が母親役。
この時点で「ああ、これは泣かせるお芝居なんだな」とわかる(←おい)。案の定、涙腺が崩壊した。
セットも地味で華やかなお芝居ではないのだが、小さな小屋にぴったりなお芝居だと思った。(狭い家の感じが小さな舞台に合っているし、お猿さんの動きもよく見えるのがいい。)

幕が開くと、おぎん(竹三郎丈)がおつる(吉太朗丈)に三味線を教えている。2人とも振りではなく、本当に三味線を弾いていた。 おつるが可愛らしく退場した後、花道から与次郎(愛之助丈)が猿と一緒に登場。
身なりは粗末だが、いかにも人のよさそうな感じが伝わってくる。猿も可愛い。
母と息子の心温まるやり取りの後、奥からお俊(吉弥丈)が登場。とても綺麗。

馴染みの伝兵衛(薪車丈)が人を斬ったため、お俊は里に返されている。おぎんと与次郎は伝兵衛と別れるようにとお俊を説得し、お俊が退き状(=離縁状)を書いたと知って、安心して床に就く。
花道から伝兵衛が頬かむりをして登場。さすがの二枚目っぷり。

伝兵衛はお俊が退き状を書いたと聞き、怒りで拳を震わせる。しかし、実はそれが書置きで、お俊は伝兵衛と心中するつもりだとわかる。すると伝兵衛が「母御と兄御が嘆くから、後に残って菩提を弔ってくれ」と言うあたり、“相手に愛情があるとわかったら、あっさり別れられる”という昔ながらの真理だなぁ。

伝兵衛とお俊が心中を決意し、おぎんと与次郎が理解を示す場面では、笑いを挟みながらも、泣かせる。
母娘が嘆き合っている時、与次郎は後ろを向いて目立たなくしているのだが、背中から悲しみが伝わってくる。2人に祝言をさせようと明るく振舞いながらも、堪えきれずに母に泣きつく姿に、またも涙。
黒の揃いの着物を着た伝兵衛とお俊の美しいことったら…!(あんないい着物を買えるお金があるのかとも思ったが、そこは突っ込んではいけないところだろう。)

与次郎は猿廻しの芸を披露しながら、2人に祝言を挙げさせる。
与次郎は唄いながら猿回しをする。たぶん、愛之助丈は歌謡曲を歌っても上手だと思う。
「綺麗な花嫁だ」というような台詞を近所に聞かれても怪しまれないよう、猿廻しの節にあわせて祝言をしたのかなぁ、と思った。 御飯(たぶん白米ではない)と梅干の弁当とわずかの稼ぎを2人に渡し、与次郎は貧しいながらも精一杯のことをして2人を送り出す。 与次郎とお俊のやり取りに、さらに涙。

いやー、泣いた。
役者さんが皆上手で、どこの表情、どこの仕草を取っても、役になりきってるので、見ていて泣けて泣けて困ってしまう。
私はどちらかというと、衣装やセットが華やかなお芝居の方が好きなのだが、このお芝居は本当に良かった。
ネットであらすじを調べたら、心中せずにハッピーエンドになるらしい。最後まで見てみたいなぁ。

お目見得 口上
永楽館での口上は長いので、全部は覚え切れなかった。
「だいたいこんな感じのことを話していた」というメモ書き。当然ながら、口上では皆さん上品で丁寧な口調で話している。
聞き間違い、記憶違い等あったら、ごめんなさい。(6日と7日の口上が混ざってます。)

愛之助丈
3回目の永楽館歌舞伎。去年までは8月といえば、永楽館と壱太郎さんのバースデーだった。
最初の年は出石が日本一暑いと知らなかった。温度計が40度を超えていた。表の温度計が壊れた。
お蕎麦を20皿食べると証明書(?)がもらえる。最初の年にもらった。
去年はお蕎麦を食べにいけなかったので、今年は山下さん(永楽館近くのお蕎麦屋さん)に食べに行った。

「堀川」は片岡十二集にも入っていて、片岡家にとって大切な狂言。
今回は伯父の我當に稽古をつけていただいた。
演舞場の本番前なのに手取り足取り教えていただき、千穐楽にも稽古をつけてくださり、このような師匠に恵まれて大変ありがたく思っている。

永楽館には舞台装置がいろいろあるが、今まで使っていなかっため、今回はスッポンを使ってみることにした。
人力なので、ボランティアの方の協力を得ている。機械のようにスムーズには動かないが、それも良いと思う。
本来、義太夫に藤太は出ないが、藤間の御宗家に無理を言って振りをつけてもらった。

この先、4回、5回、10回、20回、30回、40回、50回と永楽館大歌舞伎が続いてほしい。
そのためには、お客様に足を運んでいただきたい。
片岡愛之助をお見捨てなきよう、上方歌舞伎、歌舞伎をご愛顧くださるよう、こいねがい奉ります。

竹三郎丈
永楽館に来たいと思っていて、念願かなって嬉しい。
私は愛之助さんより2つほど年上ですが…(会場笑)
愛之助さんが初役で与次郎を務めていて、この役は愛之助さんの財産になるのではないかと思う。

吉弥丈
永楽館は初めて。呼んでいただき、本当に嬉しい。
「吉村」さん(お蕎麦屋さん)に行ったら、「愛之助さんですか?」と聞かれた。
一門4人で行って、50皿いただいた。

今は上村を名乗っているが、師匠は我當で、元々は片岡家の人間だった。
十三代目仁左衛門が与次郎をなさっている時、糸で猿を操っていて、十三代目の唄を聞いて泣いていた。
十三代目のお孫さんである愛之助さんが与次郎を初役で務める舞台で、初役で妹のお俊を務めることができて嬉しい。
私も愛之助さんより少し年上ですが、妹です。
(※7日、出だしで噛んで観客が笑っている時の、ちょっと困った様子がとっても上品で素敵だった。)

薪車丈
今年もこの板の上に立つことが出来て嬉しい。
伝兵衛、藤太と大役を務める。素敵な役をいただけて、お客様から拍手をいただいて嬉しい。(ちょっとの間の後、客席笑&拍手)
(※二枚目が一生懸命に喋っている感じが微笑ましく、客席も受けていた。)

壱太郎丈
<7日>(自分の番を)待っている間にたくさん笑った。

出石に来るのは3回目。
出石のことを「いい街だよ」と言っていたが、去年までは全ての演目に出させていただいたため、街のことを知らなかった。
今年は序幕に出ていないので、街をうろちょろしている。しかし、街に誰もいない。
カフェに入って、「いらっしゃいませ」と言われる前に「やってますか?」と聞かないといけない。悪口じゃないですよ。
カフェで台本を読んでいたら、脚本家と間違えられた。

この後、「義経千本桜」で静御前という大役を務める。
お話したいことはたくさんあるけれど、大役に差し支えるといけないので、この辺で終わりにさせていただく。

−−−−−−−−−−−−−−−−

6日より7日の方が全体的に長かった。(さらに長くなっているかも…?)
7日は愛之助丈が最後(「隅から隅まで…」の前)に「長々とご清聴ありがとうございました」と言って笑いを取っていた。

道行初音旅
たぶん、ここでしか見られない「吉野山」だったと思う。

!!!ネタバレ注意!!!

幕が開くと、桜が満開。
そこへ、静御前(壱太郎丈)が花道から登場。綺麗〜。
静御前が鼓を打つと、スッポンから佐藤忠信実は源九郎狐(愛之助丈)が登場。

口上で愛之助丈が話したとおり、永楽館のスッポン(に限らず、舞台装置)は人力で動かすため、忠信は実にぎこちない感じで上がってくる。(だが、それも味があって良い。)
忠信と静御前のお雛様みたいなポーズはなし。
以前見た時は、静御前が長い間座っていたように記憶しているが、今回の静御前は忠信と一緒に踊る、踊る。動きがあって面白い。踊りのわからない素人だが、見ていて退屈しなかった。

そこへ逸見の藤太(薪車丈)と花四天が登場する。どんな二枚目でも、藤太のこしらえをすると三枚目に見えるということがよくわかった。
小さな小屋なので、6人の花四天で舞台も花道もいっぱいいっぱいになる。
藤太は「秋の永楽館」に始まり、役者さんの名前、屋号を織り込んだ台詞で客席を沸かせる。薪車丈、いい声してるよな〜。
途中の台詞は忘れてしまったが、最後が自分を指差して「しんしゃ(薪車)い、しんしゃい」だったのは覚えている。
立ち回りの後、藤太は最後までコミカルに退場。

静御前が花道を引っ込む。
花道に近かったので、静御前の右足の草履が脱げそうになっていて、歩きながら履きなおそうとしているところまでよく見えた。
そんな状況でも、涼しい顔で優雅に歩いていく壱太郎丈はすごいと思った。

舞台には忠信が残っていて、そこへ花四天が襲い掛かる。
忠信の衣装がぶっ返り、狐の姿を現す。衣装は白地に狐火(?)の模様が付いている。
花道での立ち回りはすごい迫力。
花四天2人(松次郎丈はわかったけど、もう1人は佑次郎丈かな?←自信ない。すみません)が狭い花道でトンボを返ったり、えびぞったりしていた。えびぞりの時、体が小刻みに震えているところまでよく見えた。あれは、訓練しないとできないな。すごい。
最後は狐六方(?)で引っ込み。
いやー、面白かった。

泣いて、笑って、とても楽しかった。
まだ当日券が若干あるみたいなので、迷っている方はぜひご観劇くださいませ。

おまけ

↑旅館(「西村屋」さん)で見つけて、思わず買ってしまったオンセンジャーのお菓子。
オンセンジャーには、公式サイトもあるので、戦隊物がお好きな方は要チェック。→こちら

蟹も食べたし、皿蕎麦も食べたし、温泉も入った。
「西村屋」さんでお土産に買った「くるみ餅」と「黒豆トリュフ」はどちらも美味しかった。
来年も永楽館で歌舞伎があるのなら、永楽館&城崎温泉のツアーでお願いしたいところだ。


↑愛之助丈に届いていたお花。


↑可愛いミニチュア。