年 (平成年)

五月花形歌舞伎 御園座

5月5日(水)〜5月28日(金)

配役
昼の部(11:00開演)
一、男の花道(おとこのはなみち)
加賀屋歌右衛門:二代目 市川亀治郎
田辺嘉右衛門:六代目 片岡愛之助
山崎順之助:六代目 市川男女蔵
加賀屋歌五郎:二代目 中村亀鶴
加賀屋歌之助:四代目 坂東薪車
田辺妻富枝:六代目 上村吉弥
加賀屋東蔵:五代目 坂東竹三郎
万八の女将お時:八代目 市川門之助
土生玄碩:四代目 市川段四郎

二、太刀盗人(たちぬすびと)
すっぱの九郎兵衛:五代目 中村翫雀
目代丁字左衛門:六代目 市川男女蔵
従者藤内:四代目 中村種太郎
田舎者万兵衛:六代目 片岡愛之助

夜の部(16:00開演)
一、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
  序 幕 住吉鳥居前の場
  二幕目 難波三婦内の場
  大 詰 長町裏の場

団七九郎兵衛:六代目 片岡愛之助
徳兵衛女房お辰:二代目 市川亀治郎
一寸徳兵衛:二代目 中村亀鶴
玉島磯之丞:四代目 坂東薪車
三婦女房おつぎ:六代目 上村吉弥
団七女房お梶:八代目 市川門之助
釣舟三婦:五代目 中村翫雀

二、蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)
  市川亀治郎六変化相勤め申し候

童熨斗丸、薬売り彦作、番頭新造八重里、座頭亀市、傾城薄雲 実は女郎蜘蛛の精:二代目 市川亀治郎
平井左衛門尉保昌:六代目 片岡愛之助
坂田主馬之丞金時:二代目 中村亀鶴
卜部勘解由季武:四代目 中村種太郎
碓井靭負之丞貞光:六代目 市川男女蔵
源頼光朝臣:八代目 市川門之助


筋書
愛之助丈関連
舞台写真:「男の花道」田辺嘉右衛門:4枚
舞台写真:「太刀盗人」田舎者万兵衛:4枚
舞台写真:「夏祭浪花鑑」団七九郎兵衛:7枚
舞台写真:「蜘蛛絲梓弦」平井左衛門尉保昌:3枚
29ページ:「大阪の夏はじっとりと暑い」亀岡典子
40ページ:出演俳優紹介
料金
一等席:13,000円
二等席:7,800円
三等席:3,900円
特別席:15,000円
筋書:1,200円
その頃、他の劇場では…
新橋演舞場
松竹座

雑誌
『演劇界』2010年7月号→演劇界 2010年 07月号 [雑誌]
愛之助丈関連
30〜36ページ:「平成風姿花伝  片岡秀太郎」
  →インタビュー中に愛之助丈の名前が出てくる
50〜51ページ:歌舞伎座閉場式 手締式の写真
71 ページ:舞台写真「夏祭浪花鑑」団七九郎兵衛(カラーグラビア)
91ページ:舞台写真「男の花道」田辺嘉右衛門(モノクロ 4枚)
92ページ:舞台写真「太刀盗人」田舎者万兵衛(モノクロ 2枚)
92〜93ページ:舞台写真「夏祭浪花鑑」団七九郎兵衛(モノクロ 9枚)
92ページ:舞台写真「蜘蛛絲梓弦」平井左衛門尉保昌(モノクロ 1枚)
106〜107ページ:五月花形歌舞伎の劇評
125ページ中段:6月歌舞伎鑑賞教室の制作発表の様子(写真あり、モノクロ)
129ページ下段:「LOVE LETTERS」の紹介(写真あり、モノクロ)

感想
夜の部

15日に前方中央にて観劇。
2つとも見たことがある演目なので、さらっと感想。
残念ながら、舞台写真はまだ売っていなかった。(売ってくれるといいなぁ。)

夏祭浪花鑑
4年振りの愛之助丈の団七。
浪花花形では「8日しかないのが勿体無い!」と思っていたので、これが上演されると知った時は本当に嬉しかった。
…が、アホな私は「くろべえ」が団七であることを途中まで忘れていた。「団七九郎兵衛」なんだよね…

三婦(翫雀丈)とが団七を迎えにきた場面で、「お前が牢に入っている間にいろいろな(←大変な、だったかも)ことがあった」「歌舞伎座が閉まってしまった」というような会話があった。三婦は頼りになるオヤジっぷりがかっこよかった。
子供を背負って花道を帰る時、団七はお梶(門之助丈)に「歌舞伎座が閉まったのか?」みたいなことを言っていた。

お辰(亀治郎丈)はやっぱりかっこいい。花道で「ここでござんす!」と胸をぽんっと叩く場面では、白粉がぶわっと舞い上がってすごかった。(ライトに照らされて目立つのだ。)
磯之丞(薪車丈)は情けない感じがよく出ていた。おつぎ(吉弥丈)はいかにも世話女房という感じだった。

殺し場は壮絶。
泥まみれの舅を斬り殺すという視覚的な残虐さより、祭囃子が聞こえてきてから花道を去るまでの、団七が精神的に追い詰められていく様子の方が、見ていてゾーッとする。
大向こうさんは少なかったけど、その代わり、見得が決まるたびに大きな拍手が起こっていた。 いやー、凄かった。

蜘蛛絲梓弦
この演目を見るのは3回目だが、いつ見ても面白い。
貞光(男女蔵丈)と金時(亀鶴丈)が警護をしていると、スッポンからあやしい座敷童子童(亀治郎丈)が登場。
それから、手を変え品を変え、亀治郎丈オンステージのはじまりはじまり〜。

薬売り(亀治郎丈)は義太夫?さんの座っている台の下から現れる。以前もそうだったか、ちょっと思い出せない。
今回も座頭(亀治郎丈)の登場に引っかかった人の「えっ!?」という声が聞こえてきた。大きな蜘蛛(のぬいぐるみ?)が座頭に杖を渡してススス…と去っていった。この蜘蛛が結構グロテスク。
薄雲(亀治郎丈)のえび反りはやっぱり凄い。

渡辺綱(薪車丈←配役に載ってなかったので、いきなりの登場に驚いた)と卜部(種太郎丈)がやってきて、源頼光(門之助丈)と四天王は蜘蛛退治に向かう。
女郎蜘蛛の精(亀治郎丈)と子分蜘蛛との立ち回りがあり、残り5分… というところで、ようやく保昌(愛之助丈)が花道から登場。 隈取も衣装も派手で、やっぱり「最後に美味しいところを持ってくなぁ(笑)」という感じ。
今回の台詞は「CMでタップが上手い亀治郎にそっくりな…」だった。
最後、役者さんがずらりと並んだ後ろで、上から蜘蛛の糸が滝のように落ちてきて、とても綺麗だった。

昼の部はまた今度。
夜の部はあと1回見る予定。


昼の部

22日に中央花道寄りにて観劇。
どちらも、初めて観る演目。

男の花道
タイトルから内容が全く想像できなかったのだが、良い話だった。

加賀屋歌右衛門(亀治郎丈)は目が見えなくなり、江戸へ下る途中の宿で、井戸に身を投げようとする。
しかし、土生玄碩(段四郎丈)の手術によって目は治り、江戸で評判の役者となる。

田辺嘉右衛門(愛之助丈)が歌右衛門を座敷に呼ぼうとするが、代理でやってきた東蔵(竹三郎丈)に断られる。
この田辺が嫌なヤツなのだが、気の強そうな奥方・富枝(吉弥丈)には頭が上がらない感じ。
田辺は富枝とその妹・雪乃(宗之助丈)を芝居に送り出し、自分は「紅葉狩りに出かける」と言う。
ピンときた奥方に「そこは新吉原の近く」と指摘され、「ああ、新吉原の近く近くだな」と答える田辺の白々しく、バレバレな感じが笑える。
奥方、ヒステリックに「イヤー!」と叫びつつも、芝居を観るために退場。
「年上女房の焼きもちには閉口する」と言いつつ、田辺はまんざらでもないような…?

場面は変わって別の座敷。
玄碩は田辺の不興を買い、ひょんなことから歌右衛門にこの座敷へ来るように手紙を書く。
七つの鐘が鳴るまでに歌右衛門が来なければ、玄碩は切腹。
手紙を出した後、「歌右衛門は今舞台の上だから、来られるはずがない」と告げる田辺の憎らしいことったら!
女将(門之助丈)がにこにこしたり、ハラハラしたりする姿が良かった。

歌右衛門は中村座の舞台の上。
あまりに綺麗で驚いた!(今までとこしらえが違う?)
舞台の途中で、東蔵が歌右衛門に玄碩からの手紙を渡す。
客席の後ろから、「何やってるんだ!」「いい加減にしろ!」みたいな怒声が響く。
いきなり、後ろから大声が聞こえてきたのでびっくりした。
歌右衛門は客席に語りかけ、恩人の元へ向かいたいと許しを請う。客席を通り、髪を振り乱しながら退場。

玄碩がまさに切腹しようとする時に、「しばらく、しばらく!」という声とともに歌右衛門が駆け込んでくる。
お七の衣装から、黒地に松の模様が入った着物に着替えている。…着替えてる時間あったんか?(←無粋なツッコミ)
2人の様子に心打たれた田辺は改心し、歌右衛門が玄碩に代わって『老松』を踊り、めでたしめでたし。

いい話だった。
亀治郎丈が綺麗だった。

太刀盗人
花道から田舎者万兵衛(愛之助丈)が登場。
いかにも人がよさそうなおのぼりさんという感じで、土産物屋を見て回る。
そこへ、すっぱの九郎兵衛(翫雀丈)がやってきて、万兵衛の太刀に目をつける。
九郎兵衛はいかにもあやしげな悪〜い顔付きなのだが、仕草がいちいちコミカルで面白い。

九郎兵衛が太刀を盗もうとすると、万兵衛がそれに気付いて取り合いになる。
目代(男女蔵丈)と従者(種太郎丈)が現れ、刀の持ち主がどちらかをはっきりさせるために、質問をする。
男女蔵丈、すっかり老け役担当になってるな。

九郎兵衛が万兵衛の真似をするため、目代もどちらが正しいか困ってしまう。
2人が連舞をしている間、目代は居眠りをしていた。困った顔で揺り起こす従者が可愛い。
太刀を尺を聞かれ、万兵衛は九郎兵衛に聞かれないよう、耳打ちして答える。
九郎兵衛は困って、「中日ドラゴンズが大好きだ」と答える。(リップサービスではなく、翫雀丈は本当にドラファン。)
野球と言えば、ヤクルトが悲惨なことに… つば九郎の日記の健気さにうるっときたよ。…話がそれた。

九郎兵衛がすっぱとわかり、太刀は万兵衛に返されるのだが、九郎兵衛が太刀を奪って逃げ出す。
追いかける万兵衛、すっ転ぶ目代、目代に肩を貸す従者…
いや〜、面白かった。


夜の部 千穐楽
前方花道寄りにて観劇。

さすがは千穐楽。
「満員御礼」で大向こうや拍手が多く、客席も盛り上がっていた。
が、しかし。
盛り上がりすぎておかしくなっちゃってる人もいた。(『蜘蛛絲梓弦』で、亀治郎丈が花道付近に来るたびに手を振ってた2人連れは、コンサートと勘違いしてたのではなかろうか…?)
大向こうが全くないと寂しいが、『夏祭浪花鑑』の殺し場で「ご両人!」と掛ける人や、一階席前方でやたらめったら贔屓役者に声を掛ける女性なら、いない方がマシかもしれん…

お芝居については、とにかく良かった!!
また観たいなぁ…

『蜘蛛絲梓弦』の幕が下りても拍手が鳴り止まず、カーテンコール。
幕が開くと、ガラーンとした舞台に誰もいない。
そこへ亀治郎丈が登場。あくまで蜘蛛の精になりきっていて、客席をじーっと見回す。
それから、門之助丈、愛之助丈、男女蔵丈、亀鶴丈、種太郎丈、薪車丈の順に一人ずつ登場し、舞台中央で一礼。
亀鶴丈はお姫様が舞踏会でするようなお辞儀(足をクロスさせてちょこんと頭を下げる感じ)で受けを取っていた。種太郎丈は恥ずかしそうにお辞儀して、そそくさと列に戻ってしまった。(初々しい!)
全員で、三方礼をした後に、座ってお辞儀をして幕。

この日は、幕間に「シェ・シバタ」のわらび餅を食べた。

また、夕飯は御園座内の食堂で食べた。(メニューの名前を失念)