年 (平成年)

第22回 ふそう文化大学 扶桑文化会館

8月1日〈日〉

配役
第3回目[葉月]
14:00開演
歌舞伎役者 片岡愛之助(かたおかあいのすけ)
お話「愛之助流、歌舞伎・上方舞 見聞録」(トーク)

料金
5,000円(全自由席)
※全4公演分
その頃、他の劇場では…
新橋演舞場

感想

前の2回より、30分ほど早く会場へ行った。 その甲斐あって、前方の席に座って見ることができた。(自由席)

舞台にはスクリーンとテーブルに椅子が2つ用意されていた。
まず、司会者の稲葉さん(フリーアナウンサー)が登場し、簡単な紹介の後で、愛之助丈が登場した。
白いシャツに黒いスーツ、ノーネクタイ。

※一言一句、以下の通りに話したわけではありません。だいたいこんな感じのことを喋っていた、と思ってください。※

扶桑文化会館について。
愛之助丈「懐かしいですね」
仁左衛門丈の襲名披露の巡業で来たことがある。
駅に着いて、「ここはタクシーの来ない駅や!」と思い出した。
愛之助丈「別に馬鹿にしてるわけじゃないんですよ」
巡業は団体なので30〜40名が一度に到着するので、なかなかタクシーの順番が回ってこなかったのだそう。

7月松竹座について。
昼の部は一幕しか出番がなかったため、ビックカメラで自転車と鍵を買って大阪の街を探索した。(だから、日に焼けているらしい。)
愛之助丈「夜、電灯をつけないと警察に捕まるので、電灯も買いました。なのに、電灯が盗まれて、ショックを受けました」
その自転車、公演が終わってからどうしたかと言うと、愛一郎丈が「ほしい」と言うのであげたとか。
愛之助丈「『家まで乗って帰るならあげる』と言ったら、『乗って帰ります』と言うのであげました」
愛一郎丈のお家は結構遠いらしい。(←地名も聞いたけど、失念。)

海老蔵丈の結婚披露宴について。
あまりに会場が広すぎて、先輩役者さんに全く会わなかった。
愛之助丈「皆さん、テレビ見てくれましたか?…って、僕の結婚式じゃないですけど」(会場笑)
四方八方からテレビカメラで撮られているので、テレビのドキュメンタリーに出てる気分だったらしい。

愛之助丈のテーブルは、松緑丈ご夫妻、染五郎丈ご夫妻、松たか子さん、亀治郎丈、菊之助丈、獅童丈、錣山親方(寺尾関)。(他にもいたかもしれないけど、失念。)
テーブルは円卓ではなく、会議机のような四角で、オペラグラスが置いてあった。「何のためにあるの?」「見るためじゃない?」「何を?」「新郎新婦を」という感じだったらしい。オペラグラスでいろいろな人を見ることができて楽しかったそうだ。
愛之助丈「バードウォッチングみたい」

錣山親方とは久しぶりにお会いしたが、相撲界が大変なことになっているため、「最近どうですか?」とも聞きづらく、親方も無口な方なので会話が進まなかった。
親方が席を外した時に、
松さん「親方とお知り合いなんですか?」
愛之助丈「そう」
松さん「何で喋らないんですか?」
愛之助丈「いろいろ難しいから… 皆が来る前はもっと喋ってたんだけど…」

松さんにもっと喋ってくれるようにとお願いして、親方が戻ってくると、
松さん「はじめまして。松たか子と申します」
自己紹介から始まり、いろいろ喋ってくれたらしい。松さん、素敵だわ〜。

5月御園座について。
愛之助丈「僕、名古屋大好きなんですよ」
『夏祭浪花鑑』の殺し場は団七も大変だが、義平次はもっと大変。
特に初日は張り詰めているので、自分が殺す前に死んでしまうんじゃないかと心配になったとか。
義平次の演技が激しすぎて、扇子が折れたことがあるらしい。
『夏祭〜』は十三代目さんも演じていて、松嶋屋にとって大事な狂言。秀太郎丈は十三代目さんの相手役をしていたため、十三代目さんのやり方をよく知っている。今回は十三代目さんの型の『夏祭〜』を演じた。

亀治郎丈は大衆演劇にも詳しい。鈴蘭南座で『夏祭〜』をやることもあると聞いて、見にいきたかったけど時間が合わなかった。
上村吉弥丈が「スーパー兄弟」の南條影虎さんの大ファンということで、千穐楽に皆で「吉弥さんを驚かせる会」の計画を立てた。
愛之助丈「誰も気付いてないと思うんですけど…」
『男の花道』のお茶を運んでくる役を影虎さんにやってもらったのだとか。
吉弥丈、舞台でビックリして固まっていたそうだ。(でも、とても喜んでくれたらしい。)

愛之助丈「昔の先輩方はもっとすごいことをしてたんですよ」
昔々、雨漏りをする劇場(名前失念)で、某役者さんが黒衣を着て舞台に行き、雨漏りしている箇所に金だらいを置いたのだそう。『河内山』の真面目なお芝居の中、カーン、カーンという音が響き、場内爆笑になったという。
愛之助丈「それに比べたら可愛いもんです(笑)」

途中、スライドに写真が映し出される。(『歌舞伎修行』に載っているものが多かったが、中には初めて見る写真もあった。)
プロペラのスクリューに始まり、子役→部屋子→養子になった経緯を話す。
野村萬斎さんとご一緒した時に「すごいね。アメリカンドリームだね」と言われたとか。
この辺りから、どこかで聞いたことのある話が続く。(それは割愛)

子供の頃の台詞はよく覚えているそうだ。綱豊卿のお伊勢参りの台詞を少し喋ってくれた。
女形の説明で、膝に紙を挟んであるところを実演してくれた。女形は正面を向くと肩幅があることがわかってしまうので、少し斜めを向くらしい。
花魁は帯が重くて大変だそうだ。お腹にまな板みたいな板を入れるので非常に苦しいらしい。
名題試験の筆記試験は難しい。
愛之助丈「漢字が難しいんです」
試験は何度でも受けれるそうだ。

時代物と世話物、江戸歌舞伎と上方歌舞伎の違いなどの説明もあった。隈取の説明もあった。
歌舞伎の始まりは“傾き者”。
愛之助丈「今で言うヘビメタですね。顔も白いし」
愛之助丈「女歌舞伎は今で言う宝塚で、若衆歌舞伎は今で言うジャニーズですね」
最初は女形は女性の格好をしているだけで、動きは男みたいだった。
愛之助丈「能や狂言では『私は女でござる』(←低い声)と言われたら、女性だと思って見ないといけない。それと同じ」
それがだんだんと女形芸となっていった。

弁天小僧について。
永楽館の方から「弁天小僧のように、誰もが知っている話をやってほしい」と言われた。
昔、橋之助丈が弁天小僧の代役をした時、
十三代目さん「幸ちゃん(=橋之助丈)、ええなぁ」
橋之助丈「何がいいんですか?」
十三代目さん「うち(松嶋屋)には弁天小僧をやれる役者がいないかならぁ」
永楽館で弁天小僧をすると決まった時、橋之助丈から「(十三代目さんが)きっと喜ぶから、お墓に報告してきなさい」と言われたとか。

いがみの権太について。
江戸の権太は粋、上方の権太はガラが悪い。
七之助丈は「何てガラの悪い権太だろう」とビックリしていたとか。
江戸の役者さんが演じる時は、権太は江戸弁。
「大阪の話なのに、何で江戸弁なんですか?」と聞かれて、「すし屋だから、江戸で修行してきたんだよ」と答えた役者さんがいるとか。

平成若衆歌舞伎について。
『女殺油地獄』を『ウエスト・サイド・ストーリー』っぽくやってみようと思ったら、会場大爆笑で凹んだ。
現役の歌舞伎役者とタカラジェンヌの共演は史上初めてだったとか。(シアタードラマシティが阪急の持ち物なので、実現したそうだ。)その時共演した霧矢さんは今年トップになったそうだ。

楳茂都流について。
舞は基本的に無表情で踊るが、楳茂都流は感情を出しながら踊る。
楳茂都流は歌舞伎舞踊も手がけているので、歌舞伎の舞台でやりたい。楳茂都流の『三人連獅子』はお父さん獅子、お母さん獅子、子獅子。(雌ライオンにはタテガミないけど、毛振りするの???)

『赤い城黒い砂』について。
当て書きと言われ、腹黒い役だったので、「僕ってそんな風に見えるんですか?」と聞いたら、「お芝居だから」と言われた。
獅童丈はやたらと「バカ」と言われる役だったので、「俺ってそんなにバカに見えるのか?」と落ち込んでいた。

前田慶次について。
『花の慶次』はパチンコになっている。
2回やってみたが、難しくてフィーバーまで行かなかった。
愛之助丈「名古屋はパチンコ発祥の地ですよね」

客席からの質問。
「初日、中日、千穐楽のいつ観にいくのがよいでしょう?」

この時点で終了時間(15:30)を過ぎていたが、この質問に対して愛之助丈が熱弁を振るい、時間オーバーとなる。
愛之助丈「初日は独特の緊張感があり、ハプニングが起きることもあります。中日になると、役者の息が合ってきてまとまってきます。千穐楽は盛り上がります。わざとハプニングを起こす人も出てきます」

結論:
愛之助丈「3回観に来ていただくのが一番です」

愛之助丈「今の不景気の中、少しくらい質が悪くても安いものを買うような風潮の中で、1万いくらも出して歌舞伎を見に来てくださるのは本当にありがたいと思っています」
何も高い席で観なくてもいいので、いろいろな場所で見て欲しいのだそう。
愛之助丈「3階から見た方が綺麗に見えることもありますし、役者としては困りますが、舞台の仕掛けが見えることもあります」

とにかく、劇場に歌舞伎を見に来てほしいということを強調していた。
要約すると、
歌舞伎を見たことがあるかと聞くと、「あるような、ないような…」という答えが返ってくることがある。「テレビをつけたら歌舞伎をやっていた」というのは、見たうちに入らない。たまたまチャンネルを押したら歌舞伎がやっていて、途中から見たのでは意味がわからなくてつまらない。テレビで見て、「歌舞伎はつまらない」と思われたくない。
劇場で最初から観たら、絶対に面白い。また、観るたびに新しい発見がある。
ほとんどのお客様が「歌舞伎ってこんなにわかりやすかったのか」「歌舞伎ってこんなに面白かったのか」とおっしゃる。
一度劇場で観てもらって、それでも「つまらない」とおっしゃるなら仕方ない。

私も「歌舞伎? 伝統芸能でしょ? 着物のマダムがずら〜っと並んでお上品に見てるんでしょ? 私には敷居が高くて、無理っ!」と思っていた。(この間違ったイメージの元凶は、「着物を着て歌舞伎に行きましょう」など、女性雑誌のセレブ特集だと思う。)
一度劇場で観た結果、「歌舞伎ってこんなにわかりやすかったのか」「歌舞伎ってこんなに面白かったのか」と、今に至る。

愛之助丈「またここに呼んでください」
松竹に投書して、巡業に呼んでほしいとのこと。
見る側としても、巡業で近くに来てもらえたら、嬉しい。

もっとたくさんお話していたが、覚えきれなかった。
思い出した順番に書いているので、話した順番とは違う。