12日のStage2を壁画を前方とした右側、真ん中のステージの手前(入り口寄り)の席で観劇。
↑この中に四角い舞台と複数の花道がある。(上に見えるロープは宙乗りの時に使用)
席は四方に設けられているため、幕は引けない。
「普通なら、ここで幕を下ろすだろうなぁ」という場面でも、うまく役者さんが退出するような脚本になっている。
また、舞台上にセットはない。
ツッコミドコロ満載の物語だったが、その荒唐無稽っぷりがまた楽しかった。
黒くて浅い笠、黒いTシャツとジーパンを身につけた人々が次々と舞台へ上がる。
そこは京都大聖堂。
カルデロン神父(伊礼彼方さん)が神の教えを説いている。
この神父さん、小顔でスタイルがよく、びっくりするくらいイケメン。(←“二枚目”でも“色男”でもなく、“イケメン”という表現がピッタリ!)
そこへ石田局(吉弥丈)がやってくる。(髪は結っておらず、平安の女官みたいな感じ。)
「もうここには来ないでください」と言う神父、「私のお腹にはあなたの子供が…」という石田局。
和の美形と洋の美形のコラボレーションなのだが、どうも違和感が…
カルデロンは神父を辞めて通訳となり、親子3人で仲良く暮らして7年が経った…と、口上で裃姿の純弥丈が述べる。
そこへ秀吉(石田太郎さん)の上使(當十郎丈、蝶一郎丈)がやってきて、「切支丹は国外追放。石田局は聚楽第へ来い」と命令する。
「辛いだろうが、これも神の思し召しなのです」というカルデロン、「秀吉は父の仇、刺し違えてでも一矢報いる」という石田局。武家の女性は強い。(カルデロン、つっころばし風味?)
石田局は息子・友市(吉太朗丈)に家宝の刀(鞘から抜くと雷鳴が轟く)を渡し、「仇を討っておくれ」と言う。そして、夫と息子の静止を振り切って出て行く。カルデロンの教えにより秀吉への恨みを忘れたはずだが、怒りのメーターが振り切れたもよう。
カルデロンは友市に「一人でも生きていけるように、空中浮遊(と言ったと思うが、聞き違いだったかもしれない)の術を授ける」と、何やら妖しげな呪文を教える。…悪魔教? そんな法力が使えるなら、妻を助けに行け。
カルデロンは役人に引っ立てられ、残された友市は健気に「父上のお国はどこにあるのでございましょう?」と天に向かって語りかけている。
友市が去った後、小島さんが登場してフラメンコを踊る。
白い衣装で、ズボンの上にスカートのように布を巻きつけていて、手や腿を叩きながら、リズムに合わせて踊る。
スペインを連想させたかったのかもしれないが、なぜここでフラメンコ!?
私だけでなく、周りも度肝を抜かれてポカーンとしていた。
ところ変わって聚楽第。
秀吉は公家悪?の隈取で、藤原時平や蘇我入鹿のようだった。
石田局は能を舞うということで、般若の面に鱗柄の衣装をつけている。
陰腹を切って、秀吉に襲い掛かるが、家来に返り討ちにされる。…切支丹って自殺禁止じゃなかったか?
石田局は人魂となって、ふらりふらりと退場。
出雲の阿国(壱太郎丈)と一座(美女揃い)が「そーれ、シャンシャンシャン♪」華やかに踊っていると、秀吉が通りかかる。
阿国の顔をじーっと見る。そして、家来が「秀吉様のお召しだ」と阿国を連れて行く。
ここでのツッコミドコロは、女好きがどうこういうのではなく、「太閤なんだから駕籠に乗れ」の一言に尽きる。
阿国は可愛い。綺麗な女性達に囲まれても、抜群に可愛く見えるのがすごい。
そこへ現れた石川五右衛門(愛之助丈)。鬘が茶色っぽいのを覗けば、“五右衛門”と聞いて連想できるような衣装ばかりだった。
「秀吉は大泥棒だ。俺から父と母を奪い、女を奪い、国を奪い・・・」と憤慨する。
ああ、可愛かった友市はすっかりぐれてしまった。(ちなみに、赤毛と言う設定のため、鬘は茶色っぽい色をしている。)
五右衛門は秀吉の寝所から、阿国を救い出す。
つづらがふわふわと宙をただよい、中から五右衛門が登場。
これが見たかったのだ。愛之助丈のつづら抜け&宙乗りなんて、滅多にお目にかかれない。
愛之助丈は嬉しそうに客席を見ながらゆらゆらと揺られて去っていた。
10分間の休憩。
10分では短いので、もう少し長くしてほしかった。(美術館のため、トイレの数もそんなに多くないし…)
普段公演をしないので慣れてないのか、それとも初日のためか、入場は15分押しで、終了時間もその分延びた。
休憩の後はフラメンコで第二部開始。
小島さんが黒い衣装でフラメンコを踊る。
フラメンコはよくわからないが、すごいなぁと思って見ていた。
舞台はスペイン、カルデロンの家。カルデロンは黒の衣装(マタドールを連想させる)。
友市が大人になるくらいの年月が経っているはずなのに、相変わらずイケメン。
カルデロンは昔を思い出し、「天使ような寝顔」の友市のことを考え、友市の幻とフラメンコ?を踊り、悲観にくれている。
そうとは知らず、すっかりぐれた友市こと五右衛門は、名古屋山三(吉弥丈)と阿国を巡って恋の鞘当。
山三は前髪姿で綺麗。
しかし、刀の鞘を取り違えてもしっくりくるところから、同じ豊臣を敵とする者同士だとわかって意気投合。
阿国が「奥の楽屋でお茶でも…」と言い、客席が受ける。
阿国は自分達の踊りが飽きられて、「引っ込め」「見飽きた」など厳しい言葉を投げられることもあると嘆く。
五右衛門は踊りと聞いて、父に習ったフラメンコを思い出す。
教えてほしいと頼む阿国に、「笑うなよ」と言う五右衛門。(観客が笑うので、客席を見て、さらに受けていた。)
指をパチンパチンとならし、ステップを踏む五右衛門。それにあわせて踊る阿国。
どちらも上手だし、フラメンコの音楽がかかっていうのだが、この2人が踊ると、どうしたって“歌舞伎踊り”になる。(そこがいいんだけど。)
阿国一座が宝塚みたいな衣装(私は宝塚を見たことがないので、あくまでイメージ)で、華やかに踊る。
さて、五右衛門が劇場2階の窓に立ち、「絶景かな、絶景かな」という有名な台詞を披露する。
実は、これ、裏から見えるのだ。(と、言っても、衝立があるので、赤っぽい鬘の後ろ側が少し見えるだけ。)
最初のステージ中、美術館内を歩いていたら、たまたまその場面に遭遇した。
白い鳩が飛んできて、「これは伝書鳩」というわけで、なんとその鳩、カルデロンの手紙を運んできた。(スペインから飛んできたんかい!)
父からの手紙は「堺の港から南蛮船に乗って、イスパニヤへ来い」というもの。
カルデロン、今の息子の姿を見たら、さぞ驚くのではなかろうか?(それも神の思し召し。)
五右衛門を狙って捕り手(千蔵丈、蝶一郎丈、翫祐丈)がやってくるが、名古屋山三と女五右衛門の格好をした阿国が現れ、五右衛門を逃がす。
阿国の周りを銀の襖を持った捕り手が囲んだので、「まさか戸板倒し!?」と思ったが、さすがにそれはなかった。(捕り手が襖をぶちやぶった。)
最後、船に乗って五右衛門が登場。
この船、布?で周りを覆っていて、ちょっと頼りないセットだった。
父の国イスパニヤを目指し、五右衛門は出港する。船が後ろに下がり、幕の代わりにセットで隠して暗転。
カーテンコールへと移る。(カーテンないけどね。)
出演者が次々に登場し、客席に手を振ったりしながらステージをぐるっと一周する。
當十郎丈は悪役メイクのまま客席に手を振り、吉弥丈は石田局のの格好で吉太朗丈の手を引いて歩き、伊礼さんは神父の白い衣装、石田さんは青い隈取の秀吉の姿。
しかし、愛之助丈が出てこない。
最後はメインキャストが登場し、全員で手をつないで礼をするのだが、そこに愛之助丈の姿がない。
メインキャストが全て退場しても、拍手は続いている。
愛之助丈は出てこない。
座頭なしのカーテンコール? 最後に一人で着替えでもして派手に登場するのか? そんな俺様な演出をするタイプじゃないはずだが…?
不審に思っていたら、なんと、そのまま場内が明るくなり、終演のアナウンスが流れた。
ありえない。
座頭抜きのカーテンコールもありえなければ、愛之助丈が出てこないなんてありえない。(周りの愛之助ファンは「何が起こったの?」「船から落ちたの?」などと心配していた。)
後から聞いた話。
救急車が目撃されている(が、愛之助丈が乗り込んだかは不明)。
「囲む夕べ」で、愛之助丈、演出の水口先生、振り付けの藤間先生が急遽欠席し、出演者は早めに退出した。
愛之助丈は足を痛めたらしい。
何らかのアクシデントがあったことは間違いないが、とにかく、公演が無事続いているようで安心した。
しかし、愛之助丈にはお払いに行っていただきたい。
今年は浅草のインフルに始まり、なんかもー、いろいろとありすぎ…
何はともあれ、はちゃめちゃで面白い舞台だった。
愛之助丈が楽しそうに演じていたので、またこんな舞台をやってほしい。
内容について散々突っ込みを入れているが、どれもこれもご愛嬌と言う感じで楽しめた。
大塚美術館も「あ、これ見たことある」「これも見たことある」「見たことあるけど、どこでだっけ…?」という感じで楽しかった。もっと時間のある時にゆっくり見たいなぁ。
↑バスの窓から海を眺める。
↑高速鳴門のバス停を降りたところ。
↑大塚美術館内にある睡蓮の池。