年 (平成年)

片岡仁左衛門 昼夜の仇討
二月大歌舞伎 松竹座

2月1日(火)〜2月25日(金)

配役
昼の部(11:00開演)
通し狂言 彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
  序 幕 第一場 長門国住吉鳥居前の場
      第二場 同 社前の場
      第三場 同 郡城下馬場先の場
  二幕目     長門国吉岡一味斎屋敷の場
  三幕目 第一場 山城国眞葛ヶ原浪宅の場
      第二場 同 釜ヶ淵の場
  四幕目 第一場 豊前国彦山杉坂墓所の場
      第二場 同 毛谷村六助住家の場
  大 詰     豊前国小倉立浪主膳正本陣の場

毛谷村六助:十五代目 片岡仁左衛門
一味斎姉娘お園:初代 片岡孝太郎
京極内匠:六代目 片岡愛之助
一味斎妻お幸:五代目 坂東竹三郎
一味斎妹娘お菊:二代目 尾上松也
衣川弥三郎:四代目 坂東薪車
若党佐五平:二代目 市川猿弥
吉岡一味斎、杣斧右衛門:初代 坂東彌十郎
衣川弥三左衛門:四代目 市川段四郎

夜の部(17:00開演)
通し狂言 盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)
  序 幕 第一場 佃沖新地鼻の場
      第二場 深川大和町の場
  二幕目 第一場 二軒茶屋の場
      第二場 五人切の場
  大 詰 第一場 四谷鬼横町の場
      第二場 愛染院門前の場

薩摩源五兵衛:十五代目 片岡仁左衛門
芸者小万:七代目 中村芝雀
笹野屋三五郎:六代目 片岡愛之助
芸者菊野:二代目 尾上松也
若党六七八右衛門:四代目 坂東薪車
船頭お先の伊之助:二代目 市川猿弥
家主くり廻しの弥助:初代 坂東彌十郎
富森助右衛門:四代目 市川段四郎


筋書
愛之助丈関連
舞台写真:「彦山権現誓助剱」京極内匠:15枚
舞台写真:「盟三五大切」笹野屋三五郎:11枚
28〜29ページ:インタビュー(舞台写真あり、カラー:「元禄忠臣蔵」徳川綱豊卿、「妹背山婦女庭訓」漁師鱶七実は金輪五郎今国、「双蝶々曲輪日記」山崎屋与五郎、「近頃河原の達引」猿廻し与次郎)
舞台写真、グッズなど
愛之助丈は、
「彦山権現誓助剱」京極内匠が13種類(松也丈との2ショット1種類含む)
「盟三五大切」笹野屋三五郎が9種類(芝雀丈との2ショット2種類、彌十郎丈と芝雀丈との3ショット1種類含む)

グッズ
マグネット(5種類)
※過去の舞台写真(縦65mm×横45mm)がプラスチックのケースに入っいて、裏にマグネットがついている。
・「与話情浮名横櫛」与三郎(2008年1月)
・「団子売」杵造(2008年7月)
・「正札附根元草」曽我五郎時致(2008年12月)
・「女殺油地獄」河内屋与兵衛(2009年2月)
・「外郎売」曽我五郎(2010年12月)

料金
1等席:13,650円
2等席:7,350円
3等席:4,200円
筋書:1,500円
その頃、他の劇場では…
ル テアトル銀座
御園座
博多座

雑誌
『演劇界』2011年4月号→演劇界 2011年 04月号 [雑誌]
愛之助丈関連
48ページ:舞台写真「彦山権現誓助剱」京極内匠(カラーグラビア)
60〜62ページ:舞台写真「彦山権現誓助剱」京極内匠(モノクロ 8枚)
63〜65ページ:舞台写真「盟三五大切」笹野屋三五郎(モノクロ 11枚)
84〜85ページ:二月大歌舞伎(松竹座)の劇評
122ページ上段左:3月歌舞伎公演(国立劇場)の紹介(製作発表の写真あり、モノクロ)
十三代目さんについての記事も載っている。

感想
夜の部
通し狂言 盟三五大切

19日に前方中央にて観劇。

以前、染五郎丈の源五、菊之助丈の三五、亀治郎丈の小万、愛之助丈の八右衛門で見た。
その時とは物語の印象が違う。(配役が違うので、当たり前と言えば、当たり前。)

花道から小舟で三五(愛之助丈)と小万(芝雀丈)が登場。
のっけから濃厚な濡れ場で、愛之助丈のたくましい太腿が露わに…
ファンとしては、愛之助丈の三五が見れて嬉しいが、正直、あまり似合ってないかな。仁左衛門丈の源五がかっこよすぎるので、それだけでもう不利なんだけどね。
「子供が出来た」「男の子だ」というタイムリーな?台詞があり、ブーッと噴出しそうになった。(←本当にファンか?)
芝雀丈は“妲妃”と呼ばれている割には、どこか上品でお嬢さんっぽい。

前半の源五(仁左衛門丈)は侍にしては呑気というか無邪気で、八右衛門(薪車丈)が苦労する様子が微笑ましい。(八右衛門はたまったものではないだろうが。)
小万を身請けする時は、弱弱しく抵抗してはみたものの、三五とその仲間に押し切られてしまった感が強い。怒りよりも後悔の方が強かったように見えたが、時が経つにつれて怒りが膨らんでいって、五人斬りにつながったんだろうなぁ。
布団をかぶって花道を逃げる三五と小万は可愛かった。(愛之助丈も芝雀丈も、スレてる夫婦にしては可愛すぎるのかもしれない…)

源五と八右衛門の別れの場面は、やっぱり泣けた。
以前観た時は、源五がわざと八右衛門を「ていっ」という感じで押しやってたが、今回の源五は八右衛門をぎゅっと抱きしめていた。
毒酒を持って花道を歩いてくる源五は凄みを帯びていて、辺りに妖気が漂っている感じ。前半とは全くの別人になっていて、背筋がゾォ〜ッしそうなほど不気味だ。三五の家に上がってからも、目がイッちゃってて、怖いの何のって!

戻ってきて小万を殺す場面では、小万が「三五さん」と言うたびに、源五がぐんぐんと鬼の形相になっていくのがわかる。「あ、今鬼度がUPした。あ、またUPした」と見ててわかるんだから、役者さんってスゴイ。
小万と赤子、里親を惨殺した後、源五は小万の首を懐に抱え、愛おしそうに撫でながら、苦渋の表情で花道を引っ込む。何か口ずさもうとしている表情が本当に切ない。
ああ、本当に惚れてたんだなぁ… だからこそ、騙された怒りだけでなく、可愛さ余って憎さ百倍で許せなかったんだなぁ…
怖かったけど、やっぱり仁左衛門丈は素敵だ。(でも、夢に出てきたら、泣く。)

以前観た源五は最後まで鬼のままだったが、今回の源五は三五が腹を切ったのを見て、人間に戻った感じがする。
小万の首を源五が三五に手渡してやっているし(前は父親が三五に渡していたように記憶している)、「こうのうてはかなうまい」の台詞もない。
どちらがいいかは好みが別れるところだと思う。

前観た時は「『こうのうてはかなうまい』って… おいおい、色香に迷ったお前も悪いんじゃ!」と思ったが、この台詞がないならないですっきりしなかった。今回の源五の狂気を見たら、「こうのうてはかなうまい」の台詞も納得できそうだ。
源五は鬼のまま「こうのうてはかなうまい」と冷たく言い放ち、三五は父親から手渡された小万の首を愛おしそうに抱いて死んでいく方が、物語の雰囲気に合っているような気もする。

最後は、「本日はこれぎり」の切り口上で幕。(前に観た時は切り口上はなかった。)
瀕死の三五が起き上がっていそいそと身支度する図がシュールだった。
夜の部が終わってから、おどろおどろしい気分で家路につかなくても良いようにという配慮だろうか?

昼の部
通し狂言 彦山権現誓助剱

19日に前方花道寄りにて観劇。

面白かった〜。 京極内匠(愛之助丈)の極悪非道の卑怯っぷりがすごかった!
あまりに卑怯すぎて、憤りを通り越して、もう笑うしかないくらいだった。このくらい卑怯を極めていると、むしろ清清しいよ(笑)。

弥三郎(薪車丈)とお菊(松也丈)の美男美女カップルは見るからに目の保養。お菊に横恋慕する内匠は、お菊の父・一味斎(彌十郎丈)に結婚を申し込むも、「麒麟の子を鼠にやれるか」と一蹴され、御前試合でも負かされしまう。
逆恨みした内匠は一味斎とその家来を鉄砲で闇討ち。(鉄砲を用意した自分の家来もバッサリ斬った。)
この時点でとんでもなく卑怯者だが、これはまだ序の口。

一味斎の妻・お幸(竹三郎丈)、娘のお園(孝太郎丈)とお菊は敵討ちの旅に出る。
弥三郎がお菊を訪ねてきて、2人が喜んでいると、そこへ重病で足腰が立たなくなった内匠がやってくる。「改心して、敵として討たれる」と言いつつ、まんまと2人を釜ヶ淵へ連れ出す。、足腰が立たなくなったというのは真っ赤な嘘で、すっくと立ち上がり、不意打ちして弥三郎を惨殺。うーん、卑怯だ。
ボロを着てたのにちゃっかりお色直しして、黒地に花?の模様の入った綺麗な着物で、お菊に「妻になれ」とせまる。

当然ながら、「汚らわしい!」と拒絶され、お菊もなぶり殺しにする。いやもう、素敵に卑怯だわ。
松也丈は愛之助丈よりかなり背が高いはずだが、立ち回りの時は膝を曲げていて、小さく見えた。殺される時の海老反りがとても美しかった。女形さんって大変だ。
お菊を見て、「死んでも顔の可愛いこと」と言う内匠。さらに「笑え」「笑え」「笑わないなら、もう行くぞ」と死体に向かって語りかける。お菊のこと、本気で好きだったのね。自分に笑いかけてほしかったのね。ちょっと切ないなぁ… 卑怯者だけど。
さらに引き返し、もう一度「死んでも顔の可愛いこと」といい、お菊の死に顔にキス(だよね?)をする。
ああ、あんた、超絶卑怯者だけど、正真正銘恋する男だったんだねぇ… 卑怯者だけど(←しつこい)。

所変わって、毛谷村。
ようやく六助(仁左衛門丈)登場。場内大拍手&「待ってましたぁ!」の大向こう。
内匠が偽の母親を連れて、「六助に勝ては仕官できる。母に孝行がしたいから、試合にわざと負けてほしい」と言う。
人のよい六助は承知し、わざと負けてやる。額を割られても、「親孝行ができてよかったなぁ」と我がことのように喜び、にこにこしている。六助を見ていると、こちらもにこにこ笑顔になる。いい人過ぎて眩しいぞ。

内匠の手下の山賊に襲われ、佐五平(猿弥丈)は弥三松(弥三郎とお菊の息子)を六助に託して息絶える。この子役さんがとても可愛いのだ。
梅の木にかけられた弥三松の着物を見て、お園が六助の家にやってくる。佐五平を殺した敵と思っていた六助が許婚と分かると、急にしおらしくなり、「何の家来の一人や二人」って… コラコラコラー! いくらなんでもそれは酷いぞ。
それじゃ佐五平は浮かばれまい。
お園がいそいそと“押しかけ女房”をしている間、「この人、何なの?」という顔で見ている六助が可愛い。
内匠が母親と偽った老婆が殺され、その息子(彌十郎丈)が仲間とともに、六助に敵討ちを頼みに来る。彌十郎丈は全く違う2役を演じているのだが、どちらも似合ってるように見えるからすごい。

いよいよ、敵討ち。
弥三左衛門(段四郎丈)が渋くてかっこいい。
敵である内匠が鎖帷子を着込んでいるのはお約束か。
悪いヤツだけど、舞台中央でカーッと見得をしたりして、なかなか美味しい役どころ。
倒れる時も、派手に倒れる。

最後は、「昼の部はこれぎり」の切り口上で幕。
トドメを刺されたの内匠が起き上がっていそいそと身支度する図が、これまたシュール。
昼も夜も、切り口上にしなくてもいい気がするけどなぁ…(特に昼は文句なしの大団円だし。)

なんだかんだと世間様が騒いでいるが、私はやっぱり、愛之助丈のファンだと再確認した舞台だった。

おまけ

↑夜の部の幕間は「たちばな」のきつねうどんとかやく御飯のセット。


↑昼の部の幕間は「かまかま」の山菜蟹丼。(これにわかめスープがつく。)


↑ホテルで食べた「アルション」のケーキ。