6日に前方中央で観劇。
第一部80分+幕間30分+第二部80分。
開演前に、1列目と2列目にビニールを敷かれる。
秀太郎丈がロビーにいらしたそうだが、残念ながら、私はお見かけできなかった。
いやー、面白かった!
最初、「好色一代男…? 古典の授業でつまらなかった記憶があるんだよなぁ…」と思っていたが、楽しい舞台だった。
幕が上がると、そこは島原。
チラシで夕霧太夫(愛原実花さん)を見て、「太夫のこしらえがあまり似合ってない」と思ったのだが、実際に舞台を見たらめちゃくちゃ綺麗だった!
夕霧は浮世之助(愛之助丈)の恋敵・尾張の伝七(原田龍二さん)と連れ立って出て行ってしまう。
チラシを見て、世之助はスカした色男かと思っていたが、実際は“典型的な上方のアホボン”だった。ある程度お金を自由に使える紙治という感じ。
伝七は粋な男前。
世之助は伝七に向かって「はよ名古屋へ帰れ」「名古屋にも美人がいっぱいおるやろ」などと、観客サービスのような台詞を言っていた。
実は、先ほどの場面は世之助の夢。
「最近気力がわかない」という世之助は、女医さん(遼河はるひさん)から「腎虚」だと診断される。
ここで、「腎虚ってなんでっか?」とセクハラ発言しまくりの助平一代男。とってもいやらしい表情で、この舞台で初めて愛之助丈を見た人は「愛之助さんってこんな風にスケベなの?」と思ったに違いない。
切れた女医さんに「やりすぎっ!!」と一喝される。宝塚の元男役だけあって、なかなかの迫力。
そこへ幻の女(竹下景子さん)が現れる。幻の女というか、高笑いの女という感じで、「ホホホ…」と笑いながら登場&退場を繰り返す。
幻の女から「好色一代の幕切れをどうするか悩む前に、今までのことを思い出してみよ」と言われ、世之助は自分の過去を振り返る。
花道から父・夢助(吉弥丈)が赤ん坊の世之助を抱いて登場。
幻の女が“高笑いの女”なら、こちらは“高笑いの男”。世之助をあやしながら、「お前のお母はんはええ女やった」と繰り返す。
吉弥丈は綺麗な女形のイメージが強いが、立役姿もとっても素敵だった。
すっかり遊び人に育った世之助は、お店のお金をちょろまかし、手代の瀬平(桂雀々さん)と水茶屋へ通う。
この水茶屋の客引き(紅萬子さん)がキョーレツなキャラクターの持ち主で、面白かった〜。物語が進んでも、姿を変えて2度登場する。瀬平はとぼけた感じでおかしかった。世之助とはいいコンビだ。
水茶屋通いを夢助に咎められ、世之助と瀬平は江戸へ行くことになる。
所変わって、吉原。
高尾太夫(紫吹淳さん)が花道を通って花魁道中をしている。これまためちゃくちゃ綺麗だった〜。
見たことないけど、『籠釣瓶〜』の場面のパロディかな。
確かこの辺で、ちょっと間抜けなヤクザの親分(我善導さん)が子分達(田井宏明さん、安藤一人さん、千蔵丈)に「女房に内緒で身請けをした」というようなことを話してた気がする。
高尾はお歯黒してたように見えたけど、気のせいかな?
夕霧は可愛らしく、高尾はきりりと美しい。それぞれ、上方と江戸のイメージなのかな、と思った。
どちらもそれぞれ綺麗で、流石に宝塚のトップスターはオーラが違うなぁ、と思った。
世之助はお店の金千両で高尾を身請けし、自由の身にしてあげる。
当然、お店の帳簿から千両もごまかしたら、すぐにばれて、夢助からお咎めを受ける。
夢助に何がしたいか聞かれ、
世之助「お給金がぎょうさんもらえて、楽な仕事で、月に2回くらい上村吉弥の芝居を見に行きたい」
夢助「わては吉弥は好かん。片岡愛之助がいい」
みたいなやり取りがある。
結局、夢助から感動され、出家させられ、修行に出される。
世之助が修行に出された先は滝と庵のある山奥で、『鳴神』のようなセットだった。
坊主2人(愛一郎丈、純弥丈)が楽しそうに掃除をしている。ここがすごく可愛かった。寝転がって頬杖つく仕草は、歌舞伎でも見たような気がする。師匠に怒られて、オネエみたいになるのが笑えた。流石に女形だけあって上手だなぁ。
世之助は出家していてもくりくり頭ではなかった。股座に般若湯を隠しているところは、『鳴神』みたい。
世之助は、そこへ現れた尼・信妙(海老瀬はなさん)を口説き、セクハラしまくる。
世之助に本心を聞かれた信妙は「私は… 私は… 男が好きじゃーっ!!」とプッツン。清楚な尼さんかと思いきや、肉食系女子に大変身。
さらに、一文無しの世之助ではなく、お金持ちの伝七を選んで還俗した。
ま、このくらい図太くないと、世の中渡っていけんわな。
股旅姿になった世之助は、ヤクザのお妾さん・おしの(愛原実花さん)に出会い、一目惚れ。
ヤクザを蹴散らし、2人で逃げる。
ここで水に入っての立ち回り。節電のためか、場内の温度が高めなので、役者さんたちは冷たくて気持ちよかったかも。
それほど客席に水は飛んでなかったが、今後パワーアップするかもしれない…
ヤクザの親分より怖いのが、その奥さん(佳那晃子さん)。
最近、着物に興味を持ち始めたので、奥さんの帯に源氏香の模様がついているのを見つけて嬉しくなった。(←源氏狂)
どうやら、親分は婿養子らしく、奥さんにボコボコにされていた。松葉杖をついてはこけて、情けなくって、面白かった。
まるで『新口村』のように、頬かむりの世之助と手ぬぐいを被ったおしのが花道から登場する。舞台には雪が降っている。
2人ともとっても素敵で、お揃いの比翼の着物を着てほしかったなぁ。
世之助の台詞にも「新口村」という言葉が出てきた。
ここで親分の奥さんにおしのを連れ去られてしまう。
確かこの辺りで、山伏が登場して「悪霊退散」とかやっていたような気がする。
知り合いの家を訪ねた世之助は、今まで関係した女性の生霊に遭う。歌舞伎みたいな見得をして、連理引きみたいなこともやっていた。
山伏と「真実か?」「真実にござりまする」「一定か?」「一定にござりまする」「参れ、参れ」「参りましょう、参りましょう」というやり取りがあって、これを歌舞伎で見たような気がするのだが、どの演目だったか思い出せない。頭の中で「真実か?」「一定か?」がぐるぐるとリピートされて、思い出せなくて気持ち悪い。
結局、世之助は山伏ではなく、おしのに良く似た女性にふらふらと付いていってしまう。
辿り着いた先は墓場。
世之助は墓荒しの女(田根楽子さん)と出会う。
墓を掘り起こし、女性の髪を切り取って売るのだという。
その髪は遊女達が買って、間夫以外の男に愛の証と騙して渡すのだそうだ。
そういえば、お芝居が始まってすぐの頃、世之助が遊女から髪をもらって喜んでいたなぁ。
世之助は手に持っている髪をなぜか懐かしく感じる。
そして、その髪が実はおしののものだと知って、慟哭する。
世之助はおしのの亡霊に導かれて墓場に来たということか。
明るく呑気なお芝居だが、ここだけはシリアス。
「金ではない真実の恋だったのに…」と悲観にくれる世之助に、どこからともなく夢助が現れ、「それは真実の恋ではない」と言う。
世之助は「真実の恋だ」と川に身を投げる。
夢助と幻の女は至る所に登場するが、登場場面が多くて全部は憶えていない。
世之助は旅芸人・おすて(守田菜生さん)に拾われる。
おすては小柄で、軽やかに踊る姿が可愛いのだが、嫉妬して「あんたぁっ!!」と怒鳴る声の怖いこと。
瀬平が世之助を迎えに来て、夢助が亡くなったこと、感動が解かれたことを告げる。
おすてに手切れ金を渡す場面で、懐に隠していた分を後から上乗せするのだが、あわよくば1つは自分がもらってしまおうと思っていたのだろうか? やるなぁ、瀬平。
世之助の昔語りを聞いた帰り道、伝七は何者かに襲われる。
これを蹴散らす伝七がかっこいいのなんのって。
世之助の立ち回りは附け打ちが入る歌舞伎式だったが、伝七は実際に刀がぶつかっていた。
花道を去っていく伝七を見送り、「かっこええなぁ…」と呟く瀬平。
自分もかっこよく見得をして花道を行こうとする。拍手を送られ「ありがとうございます」と客席にお辞儀し、「気持ちええなぁ」と引っ込んでいった。
伝七は国を追われることとなり、夕霧を巡る恋の鞘当は世之助に軍配が上がったことになる。
しかし、世之助は「自分のものになると思ったら興味がなくなった」などと言う。うーん、こういう男、いるわぁ。
ここで、世之助は幻の女の正体に気付く。(流石にこれはネタバレせずに伏せておく。ただし、筋書の岡本さとるさんの文章を読むと、最初から正体に気付いてしまうので、最後まで知りたくない方は要注意。)
ラストは原作沿った形となっている。
最後はずらりと女性陣が舞台に並び、世之助は両手に太夫という羨ましい状態。
あらためて、どちらの太夫もすごーく綺麗だなぁとしみじみ。
カーテンコールもあった。
いやー、面白かった。
難しいことを考えず、“娯楽”として楽しんだし、久しぶりに愛之助丈の“アホボン”っぷりを堪能した。
こんなご時世だからこそ、どかどかお金を使って放蕩するアホボンの物語を楽しむのもいいんじゃないかなぁ。
「えー? 好色一代男ォ? 古典の授業で習った時、たるかったんだよね〜」と思ってる方、食わず嫌いは止めてご覧になってはいかがでしょう?
おまけ
愛之助丈に届いていたお花。