年 (平成年)

新春浅草歌舞伎 浅草公会堂

1月2日(月)〜1月26日(木)

配役
第1部(11:00開演)
お年玉〈年始ご挨拶〉

一、南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)
  富山山中庵室の場
  大塚村蟇六内の場
  同  表座敷の場
  円塚山の場

大塚蟇六、犬山道節:二代目 市川亀治郎
金碗大輔、簸上宮六:六代目 市川男女蔵
網干左母二郎:二代目 中村亀鶴
犬塚信乃:四代目 中村歌昇
犬村角太郎:二代目 坂東巳之助
蟇六娘浜路:初代 中村壱太郎
犬田小文吾:初代 中村種之助
犬坂毛野:五代目 中村米吉
犬江親兵衛:初代 中村隼人
下男額蔵 実は犬川荘助:四代目 坂東薪車
伏姫:二代目 市川春猿
蟇六女房亀篠:五代目 坂東竹三郎
犬飼現八:六代目 片岡愛之助

二、夕霧 伊左衛門 廓文章(くるわぶんしょう)
  吉田屋

藤屋伊左衛門:六代目 片岡愛之助
扇屋夕霧:初代 中村壱太郎
吉田屋女房おきさ:二代目 市川春猿
吉田屋喜左衛門:五代目 坂東竹三郎

第2部(15:00開演)
お年玉〈年始ご挨拶〉

猿之助四十八撰の内
通し狂言 敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがぢゃやむら)
  序幕 四天王寺の場より
  大詰 天下茶屋村敵討本懐の場まで

安達元右衛門、片岡造酒頭:二代目 市川亀治郎
安達弥助:六代目 市川男女蔵
早瀬源次郎:二代目 坂東巳之助
源次郎許嫁葉末:初代 中村壱太郎
人形屋幸右衛門:四代目 坂東薪車
伊織妻染の井:二代目 市川春猿
早瀬伊織:二代目 中村亀鶴
東間三郎右衛門:六代目 片岡愛之助

「お年玉ご挨拶」日程
2日(月):亀治郎/愛之助
3日(火):亀鶴/薪車
4日(水):歌昇/薪車
5日(木):巳之助/薪車
6日(金):種之助/薪車
7日(土):米吉/薪車
8日(日):隼人/亀治郎
9日(月・祝):−/薪車
10日(火):愛之助/薪車
11日(水):亀鶴/薪車
12日(木):歌昇/春猿
13日(金):巳之助/壱太郎
14日(土):亀治郎/薪車
15日(日):亀鶴/薪車
16日(月):愛之助/−
17日(火):−/薪車
18日(水):亀鶴/薪車
19日(木):亀治郎/愛之助
20日(金):隼人/壱太郎
21日(土):米吉/春猿
22日(日):種之助/薪車
23日(月): 巳之助/薪車
24日(火):歌昇/薪車
25日(水):亀鶴/薪車
26日(木):愛之助/亀治郎

筋書
愛之助丈関連
表紙:チラシ写真(カラー)
裏表紙:スカイツリーを背景にした集合写真(袴姿、カラー)
1ページ:スカイツリーを背景にした集合写真(白シャツ姿、カラー)
6〜7ページ:「謹賀新年」袴姿の出演者が正座して並んだ写真(カラー)
28ページ:素顔写真(カラー)
29ページ:インタビュー(素顔写真、舞台写真あり。「義賢最期」木曽義賢、「壺坂霊験記」座頭沢市、カラー)
45ページ:愛之助丈へ質問(カラー、1/2ページ)
舞台写真、グッズなど
愛之助丈は、
「南総里見八犬伝」犬飼現八が2種類
「吉田屋」藤屋伊左衛門が1種類
「敵討天下茶屋聚」東間三郎右衛門が3種類

グッズ
ブロマイド2種(袴姿、スカイツリーを背景にシャツ姿)←筋書の写真と同じ
ポストカード(2枚組300円):スカイツリーを背景にした集合写真、チラシと同じもの
「豆半纏」、ガーゼ手ぬぐい、ガーゼはんかちもあった。

料金
1等席:9,000円
2等席:5,500円
3等席:2,000円
※1月8日(日)の第2部は、「着物で歌舞伎」の日

筋書:1,500円

その頃、他の劇場では…
新橋演舞場
松竹座
ル テアトル銀座
平成中村座

雑誌
『花道』第32号
愛之助丈関連
表紙:素顔写真
表紙裏:チラシ
4〜5ページ:「出演者アンケート 片岡愛之助」
「壺坂霊験記」座頭沢市の舞台写真あり(モノクロ)
23ページ:「昨年の舞台より 第一部」
 2011年浅草歌舞伎の舞台写真(モノクロ):「三人吉三巴白浪」和尚吉三 1枚
24ページ:「昨年の舞台より 第二部」
 2011年浅草歌舞伎の舞台写真(モノクロ):「壺坂霊験記」座頭沢市 1枚

『演劇界』2012年3月号→演劇界 2012年 03月号 [雑誌]
愛之助丈関連
36〜37ページ(上段):舞台写真「南総里見八犬伝」集合写真(カラーグラビア)
36〜37ページ(下段):「吉田屋」集合写真(カラーグラビア)
38ページ:「吉田屋」藤屋伊左衛門(カラーグラビア)
72ページ:舞台写真「お年玉ご挨拶」(モノクロ 1枚)
72ページ:舞台写真「南総里見八犬伝」犬飼現八(モノクロ 2枚)
74〜75ページ:舞台写真「敵討天下茶屋聚」東間三郎右衛門(モノクロ 4枚)
76ページ:「吉田屋」藤屋伊左衛門(モノクロ 7枚)
92〜93ページ:新春浅草歌舞伎の劇評
115ページ:二月花形歌舞伎(松竹座)のちらし
135ページ下段:二月花形歌舞伎の紹介(1/3ページ)
139ページ:鏡開きの様子

感想
第一部
14日に前方上手側で観劇。

お年玉〈年始ご挨拶〉
今回の担当は亀治郎丈。
舞台の中央に座ったままのご挨拶。顔もこしらえをしていた。
内容は至って真面目だが、時折、「平均年齢がぐっと下がったと思ったら、竹三郎さんの参加で逆に上がった」とか「八犬士が8人揃ったら、終わりです」などと笑いをとっていた。

南総里見八犬伝
伏姫(春猿丈)は八房(犬の着ぐるみ)の執念により身ごもったことを恥じ、八房を殺して自害しようとする。
金碗大輔(男女蔵丈)が撃った鉄砲の玉が、八房だけでなく伏姫にも当たってしまう。
大輔は「これで御家再興ができなくなった」と嘆くが、伏姫が祈念し、体内から8つの玉が飛び出す。

大塚蟇六(亀治郎丈)の屋敷で、犬塚信乃(歌昇丈)と犬川荘助(薪車丈)が里見家再興について話をしている。信乃は白塗り、荘助は下男に身をやつしているので、肌色。
歌昇丈は見た目もいいし、声もいいし、これから人気が出るんじゃないかな。(ただ1つ、小顔なのが残念。今時の若者はスタイルがいいんだろうけど、歌舞伎役者は顔が大きい方が舞台で映える。)
蟇六の養女・浜路(壱太郎丈)と信乃は恋仲だが、信乃は出立しなくてはならない。壱太郎丈は可愛らしいお役が本当によく似合うなぁ。薪車丈は相変わらずハンサムさんだった。
浜路に横恋慕する網干左母二郎(亀鶴丈)が様子を窺っており、信乃の村雨丸を贋物とすり替える。

そこへ、蟇六と亀篠(竹三郎丈)が花道から登場。この2人のいじわるじいさん&いじわるばあさんっっぷりが最高!
亀治郎丈はまさかの老け役で、「こんな格好ですが…」と花道で客席にご挨拶。
2人は浜路を代官と結婚させようとしているのだ。
蟇六は「近頃襲名した中村歌昇そっくりのイケメン」などという台詞を混ぜつつ、信乃とにらみ合う。(歌昇丈、よく笑わずに我慢できるな。) しかし、信乃は御家再興のため、出立するしかない。
しっちゃかめっちゃかな雰囲気の中、一人ニヒルな左母二郎。村雨丸をエサに浜路を攫うことを決める。亀鶴丈はどこか影のあるお役がいいと思う。
そこへバカ殿みたいなお代官・簸上宮六(男女蔵丈)が登場。とぼけた感じで面白い。

さらに収集がつかなくなったところで、場面は移る。
左母二郎は山中で浜路に言い寄るが、なびかない。
「可愛さ余って憎さ100倍」と左母二郎に斬られてしまう。
そこへ犬山道節(亀治郎丈)が現れ、左母二郎は火遁の術で穴の中へまっさかさま。
ここで、道節と浜路が兄妹であることがわかる。

いつのまにやら、犬飼現八(愛之助丈)、犬村角太郎(巳之助丈)、犬田小文吾(種之助丈)、犬坂毛野(米吉丈)、犬江親兵衛(隼人丈)、信乃、荘助が光る玉を手に集まり、それぞれ名乗る。
平成生まれの若手がずらりと勢揃い。フレッシュな顔ぶれで見ていて楽しかったが、同時に「経験値の差というのは、素人が見てもわかるものだなぁ」とも思った。
幕が閉まった後、犬山道節が花道で悪そうな顔を見せて、村雨丸を持って六方(←?)で退場。
続きが気になるような終わり方で、私は恥ずかしながら『八犬伝』を読んだことがないので、読んでみようかという気になった。

吉田屋
阿波のお大尽(寿治郎丈)が餅つきをして、担ぎ上げられて引っ込んだ後に、編笠を被った伊左衛門(愛之助丈)が登場。
店の若い者に追い払われそうになるが、喜左衛門(竹三郎丈)が現れ、中に通される。
おきさ(春猿丈)が現れ、「若旦那かと思って声をかけたら、松嶋屋の愛之助さんだった」とお約束のやりとりがある。
筋書によると、春猿丈は秀太郎丈におきさを習ったそうで、手を揉む仕草などが秀太郎丈に似ていると思った。(でも、ちょっと雰囲気が硬い。)
また、秀太郎丈の『上方のをんな』を読んでいたので、「喜左衛門とおきさのひそひそ話が花道なのは、舞台が狭いからかな」などと思いながら観ていた。

正直、「愛之助丈、苦戦してるなぁ」という感じだった。
愛之助丈初役の伊左衛門を見ることができてとても嬉しいが、仁左衛門丈の伊左衛門を見ているので、どうしても物足りなさを感じてしまう。やはり、経験値の差というのはわかるもの。
義賢や団七みたいに、役者の気迫で客席を惹き込むようなお芝居でもないし、和事というのは難しいんだな。それでも、伊左衛門のアホボンぷりを楽しく見ることができた。

ようやく夕霧(壱太郎丈)が座敷に現れる。太夫の貫禄みたいなのはないけれど、色っぽくて可愛い夕霧だった。喋り方が藤十郎丈にすごく似ていて、誰が誰に習ったのか、すぐわかる舞台だと思った。
太鼓持ち(吉太朗丈)が現れ、2人の中を取り持とうとする。小さくて可愛らしい太鼓持ちだった。
最後、伊左衛門の勘当がとけ、夕霧を身請けする金が届き、めでたしめでたし。
愛之助丈の伊左衛門を次に見られるのはいつだろう…?

今年の浅草は出演者が多いからか、舞台写真の種類が少なかった。(まあ、そのおかげであまりお金使わなくてすんだけど…)
伊左衛門の写真は1種類しかなかったためか、午後には売り切れになっていた。欲しい人は朝のうちに買っておくことをオススメします。

第二部
14日に前方中央で観劇。

お年玉〈年始ご挨拶〉
今回の担当は薪車丈。マイクを持って、舞台の上を行ったり来たりしながらご挨拶。
千葉県出身だそうで、お正月に地元近くでお芝居ができて嬉しいとのこと。
地元話の最中に、なぜか、「横浜でたそがれたり…」などと言い出すので、何かと思ったら、どうやら五木ひろしさんが客席にきていたらしい。
そのほか、筋書とイヤホンガイドの宣伝もしていた。永楽館の口上でも思ったが、一生懸命さ全開の微笑ましいご挨拶だった。

通し狂言 敵討天下茶屋聚
序盤、編み笠を被った東間三郎右衛門(愛之助丈)と片岡造酒頭(亀治郎丈)が何度か登場する。東間は愛之助丈だが、片岡造酒頭は別人。
早替わりは何度か見ていると、どこで吹き替えが出てくるかがわかるようになる。(前の席だと入れ替わるところや顔が見えるということもあるが…) 一度建物などに入り、出てきた後に客席に顔を見せないようにしていたら、たいていは別人と入れ替わっている。

染の井(春猿丈)と葉末(壱太郎丈)が花道から登場。
2人が去ってから、伊織(亀鶴丈)、源次郎(巳之助丈)、弥助(男女蔵丈)がやってきて、少し遅れて元右衛門(亀治郎丈)が登場。 伊織、源次郎、弥助が参拝している間、元右衛門は一人茶屋で待っている。
東間と腕助(段一郎丈)の策略で禁酒の誓いを破ってしまった元右衛門は、酒の入った瓶を抱え、「カメとももうすぐお別れか」と呟きながら、酒を飲む。

元右衛門は泥酔して伊織から勘当され、腕助に駕籠に放り込まれて花道を退場。一度茶店に入った時に入れ替わり、駕籠に乗っているのは吹き替えだろう。
その後、造酒頭と東間が編み笠を取り、顔を見せる。東間、悪いヤツだけど、やっぱりかっこいいんだよなぁ…

場面は変わり、按摩となった元右衛門が早瀬兄弟と弥助が住んでいる屋敷にやってくる。
弥助の人のよさや源次郎の頼りない感じがよくわかる。
元右衛門が本性を現し、花道で目をカッと見開くところまでは面白いが、屋根をつたって屋敷に忍び込む辺りは、見ていてちょっとダレた。(展開知ってるから…) それにしても、元右衛門、あんなに優しい兄さんをあっさり殺すなんて、極悪非道だ。

すっかり落ちぶれた早瀬兄弟はかまぼこ小屋で生活している。
弥助が生きていれば、何かと世話をしてくれてもう少しましな暮らしができただろうが、どっちも世間知らずっぽいからなぁ。
ここに元右衛門と腕助がやってくる。
元右衛門はこの場面だけ白塗りだったと思うが、筋書に載っているこんぴらの舞台写真では白塗りじゃないから、私の記憶違いかもしれない。夜の暗い場面だし、白塗りに見えたのかなぁ?

そこに東間が現れ、哀れ伊織は惨殺される。
残忍な場面だが、元右衛門がオーバーな表現で笑いを誘う。ここでは、東間の紫の着流しが素敵なのだ。
失意の源次郎は人形屋幸右衛門(薪車丈)に助けられ、許婚の葉末と再会。幸右衛門は、東間とはベクトルの違うかっこよさ。

改心して早瀬兄弟側についた腕助と伝吉(三津之助丈)が元右衛門を捜している。
浅草でも元右衛門は大暴れ。でも、ここはこんぴらみたいな小さな芝居小屋の方が面白かったな。2階に上がったり飛び降りたりもしてたし。
今回も屋台のお婆さん(段之丈)がいい味出していた。こんぴらではカトキチのうどんを売っていたが、今回は雷おこしを売っていた。元右衛門に羽織を取られたときの「立派な亭主のある体」って、お富さんのパロディか?(←今更気付いた。)

源次郎、染の井、葉末に追い詰められた元右衛門、「何か袖の下になるものは…」と懐を探る。
源次郎に向かって、「あなたの楽屋に飾ってあった…(フィギュアを取り出して)仮面ライダー! …仮面ライダー」
この「仮面ライダー」の言い方が絶妙で、巳之助丈は客席に背を向けていたが、肩が震えている。
元右衛門に「りりしい! 笑っているお姿もりりしい!」なんてばらされていた。(見ていてわかったけどね。)
元右衛門、仮面ライダーのフィギュアを源次郎の袖の下に入れる。

さらに、「染の井様、こっちを見てください」と元右衛門。春猿丈、後ろ向きで笑いを堪えているようだが、これまた肩が震えている。元右衛門は懐からガムを取り出し、「噛むんとふにゃんにゃん、にゃんにゃにゃんにゃにゃん♪」と踊り出す。(それも2回も)
なぜか、屋台の婆さんと犬の着ぐるみ(八房か!?)も一緒に踊る。後から聞いた話では、そのCMに出ている俳優さん?が見に来ていたとか。
踊り終わってから、ガムを懐にしまってそそくさと退場するおばあさんがよかったなぁ。
元右衛門、染の井と葉末の袖の下にガムを入れる。
結局、元右衛門は討たれ、染の井と葉末にトドメを刺されると、染の井の袖をしっかりと握り締めて死んでいた。しかも、なかなか袖を離さない。春猿丈、必死に笑いを堪えている様子が可愛かった。

源次郎、染の井、葉末、幸右衛門が東間が乗っている駕籠を止める。幸右衛門、一人で侍を蹴散らす。
前は「淀の方様が云々」という台詞があったが、今回はなかったな。
片岡造酒頭が見守る中、4人は見事本懐を遂げる。
東間が刀を突き刺された後、「本日はこれぎり」で幕。
このお芝居、やっぱり面白いわ。

おまけ

↑仲見世通りのまねき。


↑第一部の幕間に食べたエビカツサンド。
普通のカツサンドより好きだったりする。


↑チャリティ羽子板の見本写真。

 
↑愛之助丈に来ていたお花。
私は見ていないけど、2階には破局した人からのお花が飾ってあったらしい。


↑浅草寺。今年もおみくじは「吉」だった。


↑友達と東京駅の地下街で食べた親子丼。


↑資生堂パーラーの抹茶パフェ。

雷おこしと「舟和」の芋羊羹+あんこ玉の詰め合わせをお土産にした。
「絲衣司」さんの展示会にもお邪魔して、素敵な帯を見せていただいた。