年 (平成年)

第四回 システィーナ歌舞伎 大塚国際美術館

11月13日(火)〜11月15日(木)

配役
11月13日(火)昼の部 13:30開演/夜の部 18:30開演
11月14日(水)昼の部 13:30開演/夜の部 18:30開演
11月15日(木)午前の部 10:30開演/午後の部 14:30開演
(各公演2時間半予定 / 開場は30分前)

「主天童子(しゅてんどうじ) Shiro Amakusa」
作・演出:水口一夫
振付:藤間勘十郎

七草四郎時貞 後に主天童子:六代目 片岡愛之助
千々石ミゲル(少年使節)、横笛、鳥飼少将:初代 中村壱太郎
原マルチノ(少年使節)、又市:初代 中村種之助
中浦ジュリアン(少年使節)、与市:初代 上村吉太朗
月本武者之助:四代目 坂東薪車
茨、傾城茨木:六代目 上村吉弥
千々石ミゲル:津嘉山正種


料金
S席:12,000円
A席:10,000円
(美術館入館料・観劇料込み。当日は500円増し)

筋書:入場時に1枚の紙を3つに折ったものが配られた。

その頃、他の劇場では…
新橋演舞場

雑誌
『演劇界』2013年2月号→演劇界 2013年 02月号 [雑誌]
愛之助丈関連
15〜18ページ:「関西の一年 印象に残る中堅、花形の働き 西村彰郎」の項で愛之助丈について触れられている。
 (舞台写真あり、カラー:「すし屋」いがみの権太)
25ページ:舞台写真「源平双乱」(伝統芸能の今2012)源義平(モノクロ)
37〜43ページ:「守破離 芸をつなぐ 五代目坂東竹三郎」で愛之助丈の名前がちらっと出てくる
54ページ:舞台写真「仮名手本忠臣蔵」千崎弥五郎(カラーグラビア、1/2ページ)
67ページ:舞台写真「佐々木高綱」馬飼子之介(モノクロ 3枚)
70〜71ページ:舞台写真「寿曽我対面」八幡三郎(モノクロ 3枚)
74〜75ページ:舞台写真「仮名手本忠臣蔵」千崎弥五郎(モノクロ 3枚)
76ページ:舞台写真「口上」(モノクロ 1枚)
90ページ:舞台写真「主天童子」七草四郎(モノクロ 5枚) ←システィーナ歌舞伎
91ページ:舞台写真「清衡」藤原清衡(モノクロ 2枚) ←『舞踊詩 黄金の夢』
94〜96ページ:「吉例顔見世興行」の劇評
133ページ上段:「新春浅草歌舞伎」の紹介(1/2ページ)
135ページ上段:「二月花形歌舞伎」の紹介(1/2ページ)

感想

14日昼の部を前方上手側で観劇。
去年は舞台の周りをぐるりと客席が取り囲んでいたが、今年は前方に舞台、真ん中に花道、両脇に客席という構成だった。

舞台はローマから始まる。
千々石ミゲル(壱太郎)丈、原マルチノ(種之助丈)、中浦ジュリアン(吉太朗丈)、伊東マンショ(千壽郎丈)の4人の少年使節がローマ教皇(佑次郎丈)に拝謁する。4人はシスティーナ大聖堂にいたく感激した模様。
歓迎の舞踏会で、4人は西洋風のダンスを踊る。伊東マンショはダンスが苦手そうだった。

その後、花道でメスキータ(純弥丈)が、少年使節が帰国した時は秀吉の切支丹弾圧が始まっていたこと、50年の時が流れ、“美少年”の七草四郎(愛之助丈)を総大将に島原で戦が起こっていることなどを説明する。
あまりに美少年を強調するものだから、「ハードル上げないで〜!」と思った。(←本当にファンか?)
散々ハードルを上げられた後に登場した七草四郎がちゃんと美少年で安心した。四郎は薄い水色の着物で、具足を履いていた。
少年使節・中浦ジュリアンの娘である茨(吉弥丈)も、薙刀を持って戦っている。

次々砦が破られ、討伐隊の月本武者之助(薪車丈)に踏み込まれ、四郎は海へと逃げる。
この時、黒衣さん達が舞台上や客席で青い布をばたばたと揺らして波を表現し、四郎は花道を泳ぎながら行き来する。この演出は上手いなぁと思ったけど、ちょっと泳いでる時間が長く感じた。
浜辺?で倒れていた四郎は、千々石ミゲル(津嘉山正種さん)の娘・横笛(壱太郎丈)に助けられる。
互いに切支丹とわかり、横笛は父のいる洞窟へと四郎を案内する。
その洞窟には、システィーナ大聖堂の壁画の模写が…!!(って、絵の具は何使ったんだ?)

ミゲルは、かつてローマ教皇からもらった聖母像をマンショに渡すようにと四郎に託す。
マンショがもう1つの像を持っているので、2つ合わせて切支丹の支えにしろとのこと。
ここで、四郎は「主天童子」と名乗り、同志を助けることを決意する。
「ひとさし舞え」と言われ、四郎が舞を披露する。
これが和洋折衷で、お囃子とオーケストラと合わさっていた。でも、不思議と合っているように思えた。

ミゲルは横笛を四郎に預けようとするが、横笛は「父を残していけない」という。ミゲルは四郎にナイフを握らせ、それを己の腹につきたてる。
「切支丹は自害してはいけないから四郎殿の手を借りた」と言うが、それは立派な自害だと思うぞ。
さらに、ミゲルは自爆装置に引火し、洞窟は火の海となる。おいおい、壁画まで壊れるやん。

舞台は京都に移る。
主天童子(愛之助丈)と茨木童子(吉弥丈)が人攫いをしていると噂になる。
実は、同志の女性を廓に匿うのが目的とのことだが、主の教えに「姦淫すべからず」ってのがあるはずなんだが、そんな店もっていいんかい。
「どうして切支丹は迫害されるのでしょう?」という横笛に、四郎は「得体の知れないものが怖いからだ」とか何とか答えていたが、全員平等という思想が封建社会にそぐわないから、というのが一番の理由だと思う。

傾城茨木(吉弥丈)は花魁道中で月本武者之助とすれ違い、正体がばれそうになる。
花魁の衣装は豪華絢爛で、見ていて楽しい。
茨木と又市(種之助丈)は夜道で武者之助を斬ろうとするが、逆に茨木の腕を斬られてしまう。
武者之助は大江屋の座敷にやってきて、茨木を指名する。
烏帽子を被ったお公家さん・鳥飼少将(壱太郎丈)も茨木を気に入っており、間に割って入ろうとするが、追い返される。
ここで、役者の名前を盛り込んだ台詞があり、『雁のたより』で流れたようなお囃子が入る。
コミカルな場面だが、後で悲惨な場面があるので、息抜きという感じ。
武者之助は茨木に「もう寝るぞ」と言うが、葛城太夫(千壽郎丈)の取り成しで、茨木は難を逃れる。
千壽郎丈の出番が多くて嬉しい。

一方、横笛は又市に連れられて、マンショの隠れ家にやってくる。
現れたのは武者之助=実はマンショの息子。さらに、又市はマルチノの息子で、2人とも転び切支丹だと判明する。
いやー、やられた。流石に又市が裏切るとは思わなかった。
2人から信仰を捨てろと迫られ、水攻めや張り付けの拷問に合い、哀れ横笛は息絶える。
武者之助と又市が高笑いするのだが、種之助丈は悪役をするにはちょっと可愛すぎるかな。今後の成長に期待。
薪車丈は上背もあって、声も低くて、悪い役がはまっていた。
そこに現れた四郎が無残に殺された横笛をかき抱いて泣き叫ぶ。

「なぜ横笛を殺した!?」という四郎に、武者之助は切支丹の子として迫害されたことや、妻の葛城太夫を大江屋に入れて、内情を探らせていたことなどを語る。
四郎は深緑の着流しに、金の十字架の紋。武者之助は黒の着流しに三日月の紋、白地に黒の博多帯。
四郎は武者之助を倒したが、又市に不意をつかれて斬られてしまう。又市を斬った後、横笛に寄り添い、息絶える。

場面は変わり、白百合を持った茨木と、連行される切支丹達がすれ違う。
その中に大江屋の遊女がいて、互いに気付くが、無言のまま。
茨木が去った後、天国の四郎と横笛が仲睦まじく寄り添い、去っていく。
2人とも白地にかきつばた(あやめ? 菖蒲?)の着物を着ていて、すごく綺麗!

カーテンないけど、カーテンコール。
全員でお辞儀をして、愛之助丈が「来年もお待ちしています」と挨拶をして、皆さん退場。

物語としては去年の「GOEMON 石川五右衛門」の方が荒唐無稽で面白かったし、宙乗りなどもあって楽しかった。
今年はどちらかというと、物語は無難にまとまっていて、“キャラ萌え”感が強いように思える。
舞台装置も凝った物はなかったな。もっとも、去年、愛之助丈がセットから落ちて大変なことになったらしいので、今年はおとなしめの演出にしたのかもしれない。(去年、愛之助丈のみカーテンコールに出ない日があったのは、そのためです。念のため。)
歌舞伎の中にキリスト教について入れるとなると、どうしても似たような時代ばかりになってしまうのは、仕方ないか。

今年は永楽館もシスティーナも平日で、会社員には辛い日程だった。
上演時間が思っていたより長く、さらに押したため、帰りのバスに間に合うかハラハラした。