年 (平成年)

4月歌舞伎公演 国立劇場大劇場

4月3日(火)〜4月23日(月)

配役
12:30開演(16:45終演予定)
通し狂言 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)
序  幕  第一場    多賀家水門口の場
     第二場    多賀領鷹野の場
     第三場    多賀家陣屋の場
二幕目  第一場    四条河原の場
     第二場    今出川道具屋の場
     第三場    妙覚寺裏手の場
三幕目  第一場    和州倉狩峠の場
     第二場    倉狩峠一つ家の場
     第三場    倉狩峠古宮の場
     第四場    元の一つ家の場
大  詰  第一場    合法庵室の場
     第二場    閻魔堂の場

左枝大学之助、立場の太平次:十五代目 片岡仁左衛門
うんざりお松、弥十郎妻皐月:五代目 中村時蔵
道具屋娘お亀:初代 片岡孝太郎
道具屋与兵衛:六代目 片岡愛之助
太平次女房お道:二代目 片岡秀太郎
高橋瀬左衛門、高橋弥十郎:四代目 市川左團次


筋書
愛之助丈関連
35ページ上:出演者のことば(素顔写真あり、カラー、1/3ページ)
料金
特別席:12,000円(学生8,400円)
1等A:9,200円(学生6,400円)
1等B:6,100円(学生4,300円)
2等A:4,500円(学生3,200円)
2等B:2,500円(学生1,800円)
3等:1,500円(学生1,100円)
筋書:800円
その頃、他の劇場では…
新橋演舞場

雑誌
『演劇界』2012年6月号→演劇界 2012年 06月号 [雑誌]
愛之助丈関連
53ページ:舞台写真「絵本合法衢」田代屋与兵衛(カラーグラビア)
76〜78ページ:舞台写真「絵本合法衢」田代屋与兵衛(モノクロ 7枚)
96〜97ページ:「絵本合法衢」の劇評

感想
21日に前方花道寄りで観劇。

通し狂言 絵本合法衢
いやー、すごかった。
悪人がばったばったと善人を殺しまくるようなお話だった。
が、しかし。
現実にいたら許せない極悪人でも、「仁左衛門丈(が演じているん)だったら仕方ない。だって、かっこいいんだもん!」と思えてしまうのが、歌舞伎である(←おい)。
いやー、かっこよかったわ〜。

幕が開き、いきなり人が絞め殺されている場面から始まる。
ここで、「ああ、陰惨な物語が始まるなぁ」というのが分かる。
左枝大学之助(仁左衛門丈)の手下の中間が見張りをしている中間を殺し、関口多九郎(橘三郎丈)が御家の重宝「霊亀の香炉」を盗み出してくる。
編み笠姿の大学之助がやってきて、手下であるはずの中間を口封じに殺し、冷酷さを見せつける。
いやもう、本当に悪いヤツなのだが、花道で編み笠を取ると、あまりのかっこよさに溜め息が出た。

大学之助が鷹狩りをしているところに、道具屋の与兵衛(愛之助丈)とお亀(孝太郎丈)がやってくる。
与兵衛はつっころばし風味で、お亀の方が気が強そう。
お亀が大学之助に見初められたところを、与兵衛の兄である高橋瀬左衛門(左團次丈)に救われたり、大学之助がお気に入りの鷹を殺してしまった子供をばっさりと斬ったりといろいろあり、瀬左衛門は大学之助に殺され、御家の重宝「菅家の一軸」を奪われてしまう。
瀬左衛門の弟で与兵衛の兄である弥十郎(左團次丈)が駆けつけるのだが、早替わりに気付かずビックリした。(どこで入れ替わったかは何となくわかるけど。)

場所は変わって、四条河原。
かまぼこ小屋からうんざりお松(時蔵丈)が登場。
まさかあんなところから出てくると思わなくて驚いた。
蛇を引き裂いて毒を絞る場面はもっと驚いた。思わず目を背けたよ…
そこへ大学之助の手下で、顔がそっくりの太平次(仁左衛門丈)がやってくる。
どうやら、お松は太平次に惚れている模様… まあ、かっこいいもんね。(←何回「かっこいい」と言う気だ?)

太平次は、「霊亀の香炉」とお亀を手に入れるために、道具屋を強請ることを思いつく。
お松が強請りに行くが、佐五右衛門(市蔵丈)に見破られて失敗。このとき、お松が着ている着物が源氏香と市松模様が合わさっていて、以前、『お江戸みやげ』で愛之助丈が着ていた着物と似ていた。(同じ物?)
お亀の養母・おりよ(秀調丈)は、与兵衛をお亀をわざと勘当し、香炉を持たせ、敵討ちに行かせてやる。
しかし、太平次に毒を飲まされて死んでしまう。
道具屋からの帰り道、太平次はお松にしつこく言い寄られ、お松を井戸に殺して井戸に沈めてしまう。
そこへ弥十郎とその妻・皐月(時蔵丈)、与兵衛、お亀が現れ、だんまりとなる。

さて、太平次の家。
お亀の妹・お米(梅枝丈)が泊まっている。
そこへ、太平次の妻・お道(秀太郎丈)が与兵衛とお亀を連れてくる。
与兵衛、あんなに太平次のこと嫌ってたのに、すっかり頼りにしてるあたり、先が思いやられるというかなんというか…
てっきり、太平次の本性を見切った上で嫌ってると思ってたのになぁ。

お亀は敵・大学之助に一矢報いるために妾となることを承知して駕籠に揺られて出ていく。
大学之助一味がやってきて、ドサクサの中、太平次は与兵衛に怪我を負わせる。足を引きずって花道を逃げる与兵衛が妙にリアルだった。太平次は与兵衛を殺すつもりだったが、お道の機転で与兵衛は逃れる。
怒った太平次はお道を殺してしまう。あんなに可愛くて気立てのいい奥さんなのに…

さらに家に戻り、お米と夫の孫七も惨殺。
ここが壮絶で、太平次の台詞回しにゾーッとする。
孫七の死体を見下ろして、叩き潰した蚊を顔の上に落とすところなんて、もう「ギャーッ!」と叫びたいくらいエゲツナイ。
が、かっこいいんだよなぁ…

場面は移り、合邦庵室。
与兵衛は合邦(実は兄の弥十郎)の世話になっている。
合邦に敵討ちのことを打ち明け、力になってほしいと頼むが、合邦も敵持ちということで断られる。
このとき、「長兄の瀬左衛門にそっくりなんだから(=左團次丈の二役)、気付くやろ! つーか、気づけよ!!」というツッコミを回避するためか、「兄に似ているので」みたいなことを言っていた。

嘆く与兵衛のもとに、幽霊となったお亀が現れて大学之助に返り討ちにあったことを告げる。
ああ、やっぱり、与兵衛よりお亀の方が男前や…
しっかりした兄2人と比べても、与兵衛、頼りなさ過ぎ。
と、思っていたら、大学之助と手下がやってきて、与兵衛は無残にも斬られて踏みつけられ、香炉も奪われてしまう。
ここで、太平次は大学之助に殺されたことが明かされる。
面目なさから、与兵衛は切腹し、戻ってきた合邦と兄弟であることがわかる。
与兵衛、可哀相なんだけど、敵討ち云々の前に、まず自分の素性を語るべきだったような…

そして大詰め。
閻魔堂で弥十郎と皐月が本懐を遂げる。
大学之助が最期にもがいて倒れる様は、さすがの大悪党という感じ。
最後は「本日はこれぎり」で大きな拍手と共に、幕。

いやー、仁左衛門丈はどちらもとんでもない悪役(大悪党と小悪党)だったけど、どちらも素敵だった。
チャリティとして、仁左衛門丈のサイン入り(ただし、直筆ではなくて印刷)の舞台写真を売っていたので、大学之助と太平次を1枚ずる購入。さらに、東北物産展でずんだ饅頭も買った。


↑幕間に食べたビーフシチュー。