年 (平成年)

五月花形歌舞伎 新橋演舞場

5月1日(火)〜5月25日(金)

配役
昼の部(11:00開演)
一、西郷と豚姫(さいごうとぶたひめ)
仲居お玉:五代目 中村翫雀
大久保市助:六代目 中村松江
芸妓岸野:二代目 尾上松也
舞妓雛勇:六代目 中村児太郎
同心兵馬:三代目 中村吉之助
同心新蔵:四代目 坂東薪車
中村半次郎:二代目 中村亀鶴
西郷吉之助:二代目 中村獅童

二、新歌舞伎十八番の内 紅葉狩(もみじがり)
更科姫 実は戸隠山の鬼女:九代目 中村福助
山神:六代目 片岡愛之助
従者右源太:初代 中村種之助
同 左源太:初代 中村隼人
侍女野菊:六代目 中村児太郎
腰元岩橋:三代目 中村吉之助
局田毎:十一代目 市川高麗蔵
余吾将軍平維茂:二代目 中村獅童

三、女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)
河内屋与兵衛:六代目 片岡愛之助
お吉:九代目 中村福助
豊嶋屋七左衛門:五代目 中村翫雀
兄太兵衛:二代目 中村亀鶴
芸妓小菊:二代目 尾上松也
妹おかち:五代目 中村米吉
小栗八弥:六代目 中村児太郎
刷毛の弥五郎:四代目 坂東薪車
皆朱の善兵衛:三代目 澤村宗之助
花車お杉:初代 中村歌江
山本森右衛門:三代目 松本錦吾
河内屋徳兵衛:五代目 中村歌六
母おさわ:二代目 片岡秀太郎

夜の部(16:30開演)
通し狂言 椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)
  上の巻 伊豆国大嶋の場
  中の巻 讃岐国白峯の場
      肥後国木原山中の場
      同じく山塞の場
      薩南海上の場
  下の巻 琉球国北谷斎場の場
      北谷夫婦宿の場
      運天海浜宵宮の場

源為朝:七代目 市川染五郎
白縫姫、寧王女(ねいわんにょ):二代目 中村七之助
高間太郎:六代目 片岡愛之助
陶松寿(とうしょうじゅ):二代目 中村獅童
鶴:六代目 中村松江
亀:二代目 尾上松也
左府頼長の霊:三代目 大谷廣太郎
舜天丸(すてまる)冠者 後に舜天王(しゅんてんおう):初代 中村鷹之資
為朝の子為頼:五代目 中村玉太郎
武藤太:四代目 坂東薪車
大臣利勇:五代目 澤村由次郎
為義の霊:八代目 大谷友右衛門
阿公(くまぎみ)、崇徳(しゅとく)上皇の霊:五代目 中村翫雀
高間妻磯萩:九代目 中村福助
為朝妻簓江(ささらえ):七代目 中村芝雀
紀平治太夫:五代目 中村歌六


筋書
愛之助丈関連
舞台写真:「紅葉狩」山神:2枚 舞台写真:「女殺油地獄」与兵衛:1枚 舞台写真:「椿説弓張月」高間太郎:6枚 53〜54ページ(1/3ページ):「花競木挽賑」インタビュー
舞台写真
愛之助丈は、
「紅葉狩」山神が2種類
「女殺油地獄」与兵衛が18種類(秀太郎丈との2ショット1種類、福助丈との2ショット2種類、松也丈との2ショット1種類、松也丈と幸太郎丈との3ショット1種類含む)
「椿説弓張月」高間太郎が6種類(福助丈との2ショット1種類含む)
料金
1等A席:13,500円
1等B席:9,500円
2等A席:7,000円
2等B席:5,000円
3階A席:5,000円
3階B席:3,000円
桟敷席:14,500円
筋書:1,200円
その頃、他の劇場では…
松竹座

雑誌
『演劇界』2012年7月号→演劇界 2012年 07月号 [雑誌]
愛之助丈関連
65ページ:舞台写真「女殺油地獄」河内屋与兵衛(カラーグラビア)
76〜77ページ:舞台写真「女殺油地獄」河内屋与兵衛(モノクロ 9枚)
78ページ:舞台写真「紅葉狩」山神(モノクロ 1枚)
79〜80ページ:舞台写真「椿説弓張月」高間太郎(モノクロ 5枚)
99ページ:舞台写真「寿式三番叟」三番叟(モノクロ 1枚)←4月チャリティー歌舞伎公演
99ページ:舞台写真「座談会」(モノクロ 1枚)←4月研修発表会
104〜105ページ:五月花形歌舞伎の劇評
116ページ:7月歌舞伎鑑賞教室のチラシ
127ページ下段:坂東玉三郎特別公演の制作発表の紹介(1/4ページ)
129ページ上段:八月花形歌舞伎の紹介

感想
昼の部

19日に前方花道寄りで観劇。

西郷と豚姫
幕が開くと、舞妓ちゃん達がきゃいきゃい騒いでおり、華やか。しかし、雛勇(児太郎丈)は嫌いな客に襟替えされるとのことで、元気がない。
誰もいなくなったところに、お玉(翫雀丈)が登場。
お湯をかき回し、湯のみに入れて、薬を飲む。この時の動作が、本当にお湯と薬を飲んでいるみたいだった。

お玉が「襟替えの件を断ってあげる」と言った途端、雛勇が元気になるところでお玉は信頼されてるんだなぁと思った。
泥酔状態の芸妓・岸野(松也丈)が色っぽかった。雛勇も何年か経ったら、すれてああなっちゃうんじゃないかなぁ。
西郷と夫婦になれるわけでもないし、いっそ死んでしまおうかと、お玉が物思いに沈んでいるところへ、何者かに追われて、西郷(獅童丈)がやってくる。

最初、「獅童丈が西郷どん?」と思っていたが、よかった。
細い体にいろいろ詰め込んで、頑張って着膨れている感はあったが、獅童丈は意外と三枚目の方が似合うのかもしれない。
お玉の昔語り、西郷が心中を申し出る場面はジーンとした。
しかし、西郷は藩に戻ることが許され、「心中は変替えじゃ」ときっぱり。
藩から下賜された百両のうち1両だけもらい(往復の交通費)、残りはお玉に預ける。
勝手と言えば勝手だが、なんとなく許せてしまう感じ。
西郷の後姿を見送るお玉も、「しょうがないわねぇ」と思っていたのではないだろうか。

紅葉狩
花道から、平維茂(獅童丈)が従者(種之助丈、隼人丈)を連れて登場。
そこへ女性達が現れ、更科姫(福助丈)と共に紅葉狩りを楽しむことにする。
姫はやんごとなきお方ということで、名前は明かされなかったが、局(高麗蔵丈)から「女御様」と呼ばれていた。
主演になり、野菊(児太郎丈)、従者2人、更科姫と局が舞う。
やがて、維茂も従者も眠ってしまう。
すると、更科姫が鬼女の本性を現す。
綺麗なお姫様の格好で、鬼の表情、仕草でどたどたと引っ込んで行くのでビックリした。

山神(愛之助丈)が花道から登場。
これ、「さんじん」って読むのね。ずっと「やまがみ」と読んでいた。(←バカ)
維茂一行を起こそうと、どんどんと音を立てながら踊る。
維茂が目覚め、烏帽子を脱ぎ捨て、鬼女を追っていく。(人前で烏帽子を脱ぐのって、パンツを脱ぐのと同じくらい恥ずかしいことだったんじゃ…?)

鬼女と維茂の立ち回り。
福助丈は女形の姿と声しか知らないので、「これ、本当に福助丈…?」とまじまじと(オペラグラスまで取り出して)見てしまった。 眉毛は隈取じゃなくて、毛が生えてた。
正統派?の『紅葉狩』を見たのは初めてで、毛振りまで見られて嬉しかった。
最後、鬼女は松に上がり、維茂は木の下で、それぞれ見得を決めて、幕。
季節が思いっきりずれているが、面白かった。

女殺油地獄
今まで、お吉はしっかり者のはきはきした奥さんのイメージがあったが、福助丈のお吉はひたすら柔らかい感じで「近所の優しいお姉さん」という感じがした。
少し口を尖らした表情とか、与兵衛(愛之助丈)の言うことを「うん、うん」と頷きながら聞いてあげるところとか、お伝の背中をぽんぽんっとしながら抱いているところとか、女らしさ抜群で、「これなら、切羽詰った与兵衛がお金を借りに行くのも無理はないなぁと思った。
愛之助丈が子役の頃、福助丈が可愛がってくださったとのことで、役者さんの関係がいい具合に舞台に滲み出ているのかな。

弥五郎(薪車丈)&善兵衛(宗之助丈)の悪友達はヤンチャな感じがよく出てた。
小菊(松也丈)は色っぽくて、与兵衛がデレデレになるのも納得。
徳兵衛(歌六丈)とおさわ(秀太郎丈)のシーンは何度見ても泣ける。
特に、おさわが店の金を持ち出したことがばれて、「許してくだされ、徳兵衛殿」と泣き崩れるところ。
その後、2人で家に帰る場面は「いい夫婦だなぁ」としみじみ思った。
おかち(米吉丈)はとても可愛かった。垂れ目の可愛い女形さんは貴重だ。

愛之助丈の与兵衛は3度目ということも合って、まあ安心して見ていられた。(ファンの贔屓目が多分に入っているけど。)
殺し場では、お吉がずっと「痛い… 痛い…」と呟いていて、それがすごくリアルに感じた。実際に刺されたら、口から「痛い」って出るよなぁ。
殺された後、お吉の顔が客席にずっと向いているので驚いた。

最後の花道から引っ込む前、犬に吠えられて、与兵衛が辺りを見回す。
この時、すごい勢いで振り返るものだから、袖がぶんっと回って周りに油が飛び散りまくり…
愛之助丈、わざとやってないか…?
このお芝居は何回か見たが、こんなことは初めてだった。
これ、花道近くの客は予想してなかったと思うぞ。(お着物のご婦人、大丈夫だったんだろうか?)
後味が悪いお芝居なんだけど、見終わった後に満足感はあった。


夜の部

19日に前方中央で観劇。

通し狂言 椿説弓張月
三島由紀夫が高尚過ぎるのか、私はさっぱりついていけなかった。
やたらと豪華なセット、やたらと多い説明台詞、物語はアレなんだけど役者さんは素敵、天狗が出てくる…ということとで、『霧太郎天狗酒もり(←「酉燕」という字)』を思い出したが、あっちはまだツッコミ甲斐があったなぁ…

冒頭、源為朝(染五郎丈)、紀平治太夫(歌六丈)、高間太郎(愛之助丈)の3人が岩場に座っており、『仮名手本忠臣蔵』のような始まり方をする。他にも、いろいろと他の作品のパロディらしいところが取り入れられている。(『大物浦』『五段目』『毛剃』『弁慶上使』はわかった。)
正直、最後まで見るだけでどっと疲れたので、事細かに物語を追ってく気力がない。
感想&ツッコミドコロのみ簡単に書く。

・イノシシ…
・白縫姫(七之助丈)は本当に琴を弾いていた。
・身投げした白縫姫が蝶になって現れるのだが、触角と脚がない。(←そこを突っ込むか)
・天狗、もうちょっと早く出てこいよ。そうしたら、家来は身投げせずに済んだのに…
・皆、死に急ぎ過ぎ。
・怪魚が海の上を泳いでくれたからいいようなものの、水中を泳がれたら溺れ死んでたぞ。
・舜天丸(鷹之資丈)の声がとても大きくて、聞き取りやすかった。
・琉球国に舞台が移ったら、ガラッと話が変わってしまってワケワカラン。
・寧王女(七之助丈)の着物は紅型?
・本物の寧王女はまだ殺されてなかったはずだけど、白縫姫の魂にはじき出されて死んじゃったのか…?
・小説で読んだら面白かったかもしれない。
・とりあえず、五月人形のような染五郎丈を堪能ための芝居と思うことにした。

誰もが、「ヒーッ!」と思ったであろう、武藤太(薪車丈)の拷問シーン。
雪の中、褌一丁にされ、侍女達に先の尖った竹を打ち付けられ、血みどろになって叫び声をあげる。
後ろでは、白縫姫がお琴を弾いている。
台詞で説明している他の部分をお芝居にすることもできたのに、何故にこのシーンに時間をかける?
しかも、何故にここまでリアルにやる?
ニッチ戦略にもほどがあるだろ、これ。

高間太郎と妻の磯萩(福助丈)が岩の上で死ぬ場面で、高間太郎が腹に刀を突き刺すと、血糊がビューッと噴出した。 拷問シーンにしろ、ここにしろ、やたらと現代劇風に血を流さなくてもいいよ。(近くの席から見ると、血糊が入ってお腹がたぷんたぷんしてるのがわかった。) そもそも、蝶々と怪魚、この2人も助けに来いよ。 2人が頬を寄せ合うところと、浪が2人の上から覆いかぶさるところはよかった。

阿公(翫雀丈)と鶴(松江丈)&亀(松也丈)が祖母と孫ということがわかる場面。
立ち回りでばーさんのしぼんだ胸を晒す必要があるんか? 受け狙いか? 客席は若干引いてたように思うのは、私だけか?
その後で『弁慶上使』のパロディをしたかったのはわかるけど、モドリで涙を誘うはずの場面が台無しでは?
それとも、これも特殊嗜好の方向けか?

そして、結局、為朝は何がしたかったのかがよくわからん。(←私がアホなだけ?)
平家討伐するんじゃなかったの?
正妻の息子を琉球国の王にして、7年経ったら平家が滅びてました。(7年経った割には、舜天丸は小さいままだったけど。)
…って、あんた、何しとったん?
崇徳院の命日に祭事を行い、「平家が滅びて院の願いも成就したから、御陵の前で切腹したい」と言ったら、神馬が現れた。崇徳院的には、それでOKなのか?
最後、為朝は馬に乗って花道を去って、幕。

染五郎丈の復活狂言はなんだかんだで楽しめるものばかりだったので、今回も期待していたんだけどなぁ… 筋書によると「初演再演の為朝を目指して」いたということらしい。まあ、三島由紀夫の脚本に手を入れるのは恐れ多いのかもしれないが。
当代と先代の幸四郎丈、猿之助丈が主演したにも関わらず、上演回数が少ない(それぞれ1回きり)ということは、やはり受けがよくなかったのか…?

おまけ

↑昼の部の幕間は、三越の地下で買ったお弁当を食べた。
夜の部は、友人と食事に行く約束があったため、劇場で食事はしなかった。


↑夜の部の幕間に食べたもなかアイス。


↑夜の部の幕間に食べた「めで鯛焼き」。これ、大好き!

お土産には、行きの新幹線を降りたときに、駅のホームで「ねんりん家」のバウムクーヘンを購入。